『ザ・ロック 』(原題:The Rock )は、1996年 のアメリカ映画 。ドン・シンプソン /ジェリー・ブラッカイマー 製作、マイケル・ベイ 監督によるアクション映画 。
“ザ・ロック”ことアルカトラズ島 を占拠してVXガス をサンフランシスコ に撃ち込むとアメリカ政府を脅迫するアメリカ海兵隊 の英雄の将軍が率いるテロリスト と、それを阻止しようとする元SAS 隊員にして元MI6 部員の英国人、FBI の化学兵器スペシャリスト、特殊部隊 Navy SEALs との攻防を描いた作品。主演はショーン・コネリー 、ニコラス・ケイジ 、エド・ハリス 。
あらすじ
劇中で舞台になったアルカトラズ島
アメリカ海兵隊 の特殊部隊 を指揮するハメル准将 は、過去の作戦中に部隊を見捨てられ、部下を失ったことから政府への憤りを感じていた。何の補償もされずに戦死した部下たちに報いるため、ハメルは反乱を画策する。同志の海兵隊員の部下たちを率い化学兵器VXガス を奪取、ザ・ロックと呼ばれるかつての刑務所 、アルカトラズ島 に観光客を人質に立てこもり、遺族へ渡す補償金として1億ドルを要求した。要求が吞まれない場合はVXガスを搭載したミサイル をサンフランシスコ に撃ち込むとアメリカ政府 を脅迫する。
事件を受けてFBI 長官ウォマックは、アメリカ海軍 特殊部隊 Navy SEALs の派遣を要請、化学兵器のスペシャリストであるFBI特別捜査官のグッドスピードと、当局に幽閉中の元SAS 隊員でMI6 の伝説的スパイ 、メイソンの2名にも同行を命じた。脱獄不可能と言わたアルカトラズ刑務所から唯一脱獄に成功した凄腕のメイソンだが、仮釈放と同時に逃走してしまう。しかしサンフランシスコに住む娘のジェイドに会ったメイソンは、娘を守るためアルカトラズへの同行を承諾する。
作戦が決行され、Navy SEALsは水中からの潜入に成功する。しかし待ち伏せしていた海兵隊員たちに包囲され降伏 を迫られるが、SEALs隊長のアンダーソン中佐 はこれを拒否、銃撃戦の末SEALs隊員は全滅する。生き残ったグットスピードとメイソンは、たった2人で海兵隊員と戦いながらVXガスの無効化に挑む。
潜入部隊が全滅したと判断したウォマックは、アルカトラズ島への空爆を大統領 に要請する。多くの人質を殺すことになるが、サンフランシスコを守るため、大統領は苦渋の選択の末、空爆を許可する。一方、空爆を悟った海兵隊員たちはVXガスミサイルを発射しようとするが、本気でテロを行うつもりがなかったハメルはこれを許可せず、海兵隊員と同士討ちの銃撃戦となり部下に撃ち殺されてしまう。
メイソンとグッドスピードは死闘の末、残った海兵隊員全員を倒しミサイルの無効化も達成するが、自らVXガスを浴び拮抗剤のアトロピン を注射したグッドスピードが薄れ行く意識の中で点火した中止要請の発煙筒は観測が遅れ、空母 から発艦したF/A-18 戦闘機の焼夷弾投下に指令が間に合わず、一発が爆発。グッドスピードは爆風で吹き飛ばされた。
救助部隊が人質を解放し、メイソンがグッドスピードを救助、メイソンは感謝と信頼の証として、かつて自身が盗み出し逮捕・収監の原因となったJFK暗殺 の証拠など国家機密 を収めたマイクロフィルムの隠し場所をグッドスピードに教え、姿を消す。後日新婚旅行に出たグッドスピードは、カンザス州フォート・ウォルトンの聖ミカエル教会で回収したマイクロフィルムを狂喜とともに凝視するのだった。
主な登場人物
本項では主要な登場人物について記述する。
ジョン・パトリック・メイソン[注 1]
演 - ショーン・コネリー
本作の主人公の一人。元イギリス情報局秘密情報部 部員・兼SAS の大尉 で、アルカトラズ刑務所からの脱獄に成功した唯一の人物。1960年代にアメリカの機密情報の収められたマイクロフィルムを奪取しイギリスに逃亡する直前にFBIに捕まり、イギリス政府も事実を隠蔽した為身分も国籍もない消された存在 となっている。裁判も無しに刑務所に幽閉されてしまったため、その経緯に関わったウォマックとはその頃から互いに憎み合っている。ジェイド・アンジェルはメイソンの実の娘にあたる。アルカトラズの人質救出作戦の際にはどさくさに紛れて逃走を図るなど初めは非協力的だったが、グッドスピードに事実を伝えられ協力的になる。
BD版の特典映像のジェリー・ブラッカイマー のインタビューによると、メイソンの元イギリス情報局秘密情報部員という設定や、ラストのケネディ暗殺 の真相を記したマイクロフィルムの件は、ショーン・コネリーのアイデアによる。なお、コネリーは映画界を代表するイギリスの諜報員、すなわちジェームズ・ボンド を演じた俳優の一人として知られている。
“スタン”スタンリー・グッドスピード
演 - ニコラス・ケイジ
本作の主人公の一人。FBI 特別捜査官 だが、専門は化学兵器のスペシャリストで射撃は訓練校 時代に経験した程度のため実戦には不向き。子を身篭ったカーラを恋人に持っている。コロンビア大学 卒、ジョンズ・ホプキンス大学 で修士号・博士号を取得。FBIでも折り紙付きの化学研究員で、その才能を見込まれてアルカトラズに持ち込まれたVXガス 弾無力化の為にメイソンとSEALs部隊 と同行してアルカトラズに向かうことになった。
ビートルマニア であり、作中でもレアなビートルズ のLP (『ミート・ザ・ビートルズ 』)を購入している他、エルトン・ジョン の曲に言及するシーンもある。ベージュ のボルボ に乗っている。
“フランク”フランシス・X・ハメル准将
演 - エド・ハリス
現在の階級は海兵隊 准将。ベトナム戦争 で最高の指揮官と称えられ、名誉勲章 を生きて受章した数少ない人物。劇中では人格者とも言われている。ベトナム戦争 後、カンボジア内戦 や湾岸戦争 の他、公にされていない非合法の軍事作戦の指揮に当たるも、戦場で幾度となく部下を見殺しにする国家の姿勢に反発し、臨時査察と称して海軍兵器庫から15基のVXガスミサイルを奪取し、部下を率いてアルカトラズ島を占拠する。観光客とガイド計81名を人質にアメリカ政府に対し戦死した部下の遺族への賠償金として1億ドルを要求。受け入れられない場合はサンフランシスコにVXガスを撃ち込むと脅迫し、譲歩を引き出そうとしたが受け入れられず、強硬派のフライとダロウに押し切られミサイルを発射する。しかし最初から民間人を殺す意図はなかったためミサイルを海に着弾させた。これが原因でフライとダロウに反乱を起こされ、フライに至近距離から銃撃されてしまう。最期は自身の行いを悔やみ、グッドスピードに残りのミサイルの場所を伝えて息を引き取った。
ジェームズ・ウォマックFBI長官
演 - ジョン・スペンサー
FBI 長官でメイソンとは彼がアルカトラズに収監される頃からの関係があり、メイソンの存在を知っている数少ない人物。メイソンが署名した特赦状をあっさりと破り捨て、否が応でも彼を自由の身にさせないようにするほどであり、メイソンも釈放する気はないことを見抜いていた。内心ではメイソンの実力を認めており、突入部隊がグッドスピードとメイソンだけとなってしまっても「メイソンならやってくれる」と少なからず信頼している面がある。しかし、メイソン本人からは憎悪の対象でしかないため、ビルの高層階から投げ落とされそうになった。
トム・バクスター少佐
演 - デヴィッド・モース
ハメルの右腕的存在で部隊のナンバー2。階級は海兵隊少佐 。1968年のテト攻勢 の頃からハメルの部下として動いている。発射されたミサイルの軌道をハメルが意図的に逸らした際は彼に対し一度は激昂したものの、先述のテト攻勢からの長い付き合いであるためか、フライ達が反乱を起こした時もハメルへの忠誠心を崩さず、ハメルに銃口を向ける振りをしてダロウに発砲したが弾丸はダロウの左腕に当り、逆にダロウに撃たれて死亡する。
チャールズ・アンダーソン中佐
演 - マイケル・ビーン
SEALs の指揮官で階級は海軍 中佐 。国家への忠誠心が厚く、ハメル達の決起には猛反発している。ハメルの降伏命令を頑なに拒否したが、頭上から狙われているという極度の緊張状態の中、落下してきたブロックに反応してしまい、シャワールームで海兵隊員たちとの銃撃戦の末、チーム全員と共に壮絶な最期を遂げた。
演じたマイケル・ビーンは、『ネイビー・シールズ 』他、複数作品でSEALsの隊員役として出演している。
キャスト
吹き替えに関して
長年ショーン・コネリー を持ち役にしていた若山弦蔵 は最も好きなコネリーの吹替に本作のソフト版を挙げており、また演出した中野洋志 について「(皆反論しない中で)僕が直したのをさらに元に戻せなんて言う奴も。中野洋志なんてそうですよ(中略)でもそういう風に遠慮なく言ってくれなきゃダメなんですよ」とクオリティ追求のためベテランの自分相手にも遠慮なくダメ出しする中野の姿勢を高く評価していた[3] [4] 。また中野も今まで演出した中で思い出深い作品に本作を挙げている[5] 。
複数の作品でニコラス・ケイジを担当している小山力也 は吹き替えを担当した中でも思い入れ深い現場に本作の日本テレビ 版を挙げている。小山にとって本作は初めてのゴールデンタイムの洋画番組の主役であり、本作のソフト版をはじめ多数の作品でニコラスを専属(フィックス )で担当している大塚明夫 は脇役のマイケル・ビーン に回ったものの、その大塚からは「リキ(力也)!頼むぜ!!」と激励を受けたことに感激したといい、「自分がいざ、逆の立場に立った時、明夫さんのように声を掛ける事が出来るかどうか、笑顔で、その人を励ませるかどうか、正直、自信がありません。大塚明夫という役者は、それほどの器です」と大塚に敬意を表しているという[6] 。
地上波放送履歴
スタッフ
ジョナサン・ヘンズリー が脚本の執筆に参加した。
評価
レビュー・アグリゲーター のRotten Tomatoes では69件のレビューで支持率は68%、平均点は6.70/10となった[11] 。Metacritic では24件のレビューを基に加重平均値が58/100となった[12] 。
その他
実在のアルカトラズ刑務所での撮影は、アメリカ政府が許可しなかったため、外観や独房部屋など一部のシーンを除いて、大半がセットか他の場所での撮影である。そのため、シャワー室の様相などは現実とはかなり違う。
劇中でテロリストが奪ったVXガス についてのペンタゴン 高官の説明の内容に関しては一部が誇張されている。また、日本版では字幕・吹替共に「神経ガス弾」と訳されている。
ドン・シンプソン は公開前の1996年1月、ドラッグ の過剰摂取 によるとみられる心臓麻痺 で死亡し、本作がジェリー・ブラッカイマー と共同で製作した最後の作品となった。映画のラストには、「この映画をドン・シンプソンの思い出に捧ぐ」という賛辞がクレジットされている。
脚本の書き直しをクエンティン・タランティーノ が務めたが、クレジットはされていない。
本作でアメリカ大統領役を演じたスタンリー・アンダーソンは、1998年 公開の『アルマゲドン 』でも大統領役を演じている(監督も同じマイケル・ベイ )。
アーノルド・シュワルツェネッガー は、オファーを断ったことを後悔している映画として、本作を挙げている[13] 。また、オファーされた役がハメル准将役であったとされる情報が多いが、実際にはグッドスピード役のオファーであった。[14]
ミリタリーゲーム業界における本作の影響は非常に大きく『メタルギアソリッド 』では本作の孤島を占拠したテロリスト、海中からの潜入といったシチュエーションがオマージュされ、『BLACK 』『Rainbow Six 3 』『Battlefield:Hardline 』では一部のステージで本作のシャワー室のオマージュがなされている。また、『Call of Duty: Modern Warfare 2 』ではシャワー室の他にグッドスピードが二本のフレアで戦闘機の爆撃の中止を行おうとするシーンやNavy SEALsの隊員の装備、強制収容所に収監されていたプライスの格好等、豊富なオマージュがなされており、音楽も本作と同じハンス・ジマーが担当している。また、その関係か次回作の『Call of Duty:Black Ops 』では主人公の名前にメイソンの名が使われたり、冒頭のVXガスでハメルの部下が死亡するシーンがNova6でディミトリ・ペトリェンコ が死亡するシーンにオマージュされている他、本作でハメル准将を演じたエド・ハリスが異名が「ロック」であるジェイソン・ハドソン役で出演している。
また、日本では2021年に公開された韓国映画 である『白頭山大噴火 』では本作のグッドスピードとメイソンの設定がオマージュされている。
関連商品
ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント よりBlu-ray Disc /DVD /UMD の3フォーマットでリリース(各1枚組)。
DVD版は当初パイオニアLDC より発売されていたため、ディズニー版は『ザ・ロック 特別版』として発売。
関連項目
脚注
注釈
^ テレビ朝日での翻訳ではメイスン。
^ メイソンを「Mr.メイソン」、グッドスピードを「Dr.グッドスピード」と呼んでいるが、吹き替えではメイソンをソフト版では出撃の際にのみ「メイソン氏」、日本テレビ版では一貫して「Mr.メイソン」、テレビ朝日版では全てのシーンで呼び捨て、グッドスピードのことは全吹き替えで呼び捨てとなっている。
^ 吹き替えではソフト版では「シェプ」と呼ばれず、一貫して「シェパード」と呼ばれている。
^ 『日曜洋画劇場 』2009年2月22日放送分においてはグッドスピードの夜の営みとカーラの登場シーンはカットされている。渡辺美佐は『ビバリーヒルズ青春白書 』でもヴァネッサ・マーシルを吹替えた。
^ ソフト版の日本語字幕では口調は普通の男性だが全吹き替えではオカマキャラになっている。
^ プリズムを解除するシーンでシェパードと間違われて平田広明に吹き替えられている。
出典
外部リンク
1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
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