プロボウル (英語 : Pro Bowl )は、アメリカ合衆国 で毎年開催されているNFL のオールスターゲーム である。2022年シーズン (2023年 開催)からは、ザ・プロボウル・ゲームズ(The Pro Bowl Games )と改称され、後述のように大幅に改革された。なお、2017年から2022年までの正式名称はAFC-NFCプロボウル(AFC–NFC Pro Bowl )であった。
概要
プロボウルは、MLB 、NBA のオールスターゲームと異なり、シーズン最終盤に開催される。
圧倒的な人気を誇るプロリーグのオールスターゲームの割には注目度が低く、多くのレギュラーシーズンのゲームよりも全米視聴率が低い。2014年の試合では1140万人がテレビで視聴したが、その後は年々人気が落ち、2022年シーズン(2023年開催)のゲームでは628万人、2023年シーズンでは579万人の視聴者数まで下落した[1] [2] 。
後述のように、近年は怪我を避けるために接触を避ける緩慢で退屈な試合運営となり批判を集めていた。そこで、2022年シーズンのプロボウルからは、接触がなく安全なフラッグフットボール に焦点を当てたイベントとなった[3] 。名称も「ザ・プロボウル・ゲームズ」(The Pro Bowl Games )となった。
歴史
2006年のプロボウル
第1回プロボウルは、1938年 シーズン終了後、その年のチャンピオンチームとNFL選抜チームが対戦するオールスターゲームとしてロサンゼルス のリグレー・フィールド で開催された。
1943年 から1950年 は戦争 のため開催されなかったが、1951年 にアメリカン・カンファレンスとナショナル・カンファレンスの対抗戦として再開された。1973年 から1979年 まで持ち回り開催だったが、1980年 からハワイ州 ホノルル のアロハ・スタジアム で行われるようになり、30年にわたり同スタジアムで開催された。
2009年 まで、毎年スーパーボウル の直後(通常翌週)の日曜(稀に土曜)に開催され、シーズンを締めくくる試合となっていた。かつてはスーパーボウルが1月最終週に行われる事が多かったため、2月第1週の開催が多かったが、21世紀に入りスーパーボウルが2月第1日曜に開催される機会が増えたため、2002年 、および2004年 以降は2月第2週の開催となっていた。
2010年 からはスーパーボウルの前週に開催されている。これは、スーパーボウルの翌週に開催されるNBAオールスターゲーム およびバンクーバーオリンピック に配慮したことと、「もっとも盛り上がり、優勝チームを決定するスーパーボウルがシーズン最後にあるべき」というロジャー・グッデル コミッショナーの意志にもとづく。なお、2010年は開催スタジアムもスーパーボウルと同じ場所となった(2010年はマイアミのサンライフ・スタジアム )。スーパーボウルと同一スタジアムでの開催は1967年以来43年ぶり、また1月に開催されるのも1989年以来21年ぶりである。
2011年 から、開催地は再びハワイのアロハ・スタジアムに戻ったが、2010年に倣いスーパーボウルの前週に行われている。
2014年 から3シーズンは、それまでのカンファレンスごとのチーム編成から、過去の名選手2人がドラフトするチーム編成に切り替えた。これは、怠慢な試合が目立った批判を受けての改善策の一環である(#プレーの質の低下と改善策 で後述)。
2015年 はスーパーボウルと同じアリゾナ州・グレンデール、ユニバーシティ・オブ・フェニックス・スタジアム での開催、2016年 は再びハワイ、アロハ・スタジアムで開催された。[4] 。
2017年 からは、チーム編成がカンファレンスごとに戻され、4年間オーランドの開催が続いた[5] [6] 。
2021年 は新型コロナウイルス感染症流行のために中止され、選考された選手のリストだけが発表された[7] 。
2022年 からはレギュラーシーズンの試合数が増えたため、スーパーボウルの前週ながら2月第1週に開催されている。このシーズンから、「ザ・プロボウル・ゲームズ」(The Pro Bowl Games )と改称され、フラッグフットボール に焦点を当てたイベントとなった。
出場選手の決定
プロボウル出場選手は各チームのコーチ、選手(ただしコーチ及び選手は自チームの選手には投票できない)、ファンの投票によって88名が選出されるが、それぞれから寄せられた投票結果が全体に占める割合はそれぞれ3分の1ずつとなっている。
両チームのコーチ陣は、ディビジョナル・プレーオフで敗戦した4チームのうち、レギュラーシーズンの成績の良い2チームが担当する。
両チームのヘッドコーチは投票で選ばれた42名のほかに「ニード・プレイヤー」として選手1名を選出する(投票枠のないロングスナッパーが選出されることが多い)。
怪我などの理由により選出選手が出場を辞退した場合、同じポジションで投票結果で次点の選手が代理出場する。
プロボウルがスーパーボウルの前週に開催となった2010年より、スーパーボウル出場するチームの選手も出場せず、同様に次点の選手が代理出場するようになった[注釈 1] 。
なお、代理出場であっても、出場辞退しても、「プロボウル選出」という個々の選手キャリアとして数えられる。
プレーの質および人気の低下と改善策
問題と対策の歴史
プロボウル出場には報酬があるものの、スター選手の高騰した年俸に比べると平均で1%以下である。フットボールの試合では怪我の可能性が高いため、次第に出場を辞退するスター選手が増加した。出場する選手もまた、怪我を恐れて手を抜いたプレーが目立つようになった。タックルやブロックなど、真剣で怪我の可能性のある激しい接触は次第に減っていった。また2010年からはスーパーボウル出場選手が選考されなくなった。
2012年1月のプロボウルでは、アーロン・ロジャース が苦言を呈した他、59-41と大味な試合に対してファンからも不満の声が聞かれた。日本でテレビ解説を務めた河口正史 も試合序盤のゆるさ加減が過去に記憶にないほどであったと感想を述べている[8] 。こうしたことについて、ロジャー・グッデル コミッショナーは廃止も選択肢に入れた改善を検討すると述べた[9] 。
2014年から、改善策としていくつかのルール改正が行われた。
その一環として、NHLオールスターゲーム を参考にしたチーム編成が行われた。それまでのカンファレンス別の選出から、カンファレンスに関係なく得票上位の選手をプールし、往年の名選手2人が名誉キャプテンとなってプールされた選手をドラフトする形に変更した。ドラフト自体をイベントとして盛り上げた上で、憧れていた名選手の名を汚さないプレーをするなど意識づけさせること目的とした。 2014年は、ジェリー・ライス とディオン・サンダース が出場選手を指名し、チーム・ライス、チーム・サンダースとして対戦した。
だが2017年からは従来のカンファレンスごとの編成に戻された[6] 。
試合自体も、怪我の可能性を減らすルール改正が行われた。審判はボールを所持する選手がディフェンス選手に触られただけでボールデッドを宣言し、タックルのないタッチ・フットボール のような緊迫感に欠けた試合運営となっていた。
2022年シーズンより、選手に怪我の恐れの少ないフラッグフットボール の試合となった。
プロボウル スキルズショーダウン
テレビ視聴人数によればプロボウルの人気は年々低下してきた[1] 。2017年シーズンより人気振興のため、試合の数日前に「スキルズショーダウン」が開催されている[10] 。AFCとNFCがリーグ対抗で選手能力にまつわるさまざまなミニゲームで対戦し、最後はドッジボール対決となる。
2022年シーズンの改革以降もスキルズショーダウンは行われており、フラッグフットボールの試合の数日前だけでなく試合の合間にもスタジアム内外でミニゲームが行われる。各ミニゲームの結果がカンファレンスの総得点に加算される。
ザ・プロボウル・ゲームズ
2022年シーズンより改称されるとともに、上記のプロボウル スキルズショーダウンのミニゲームの得点とフラッグフットボールの試合結果および得点が加算されて最終スコアとなっている。
2022年シーズン
木曜日にスキルズショーダウンの4種のミニゲームが行われ、各ミニゲームの勝者には3点が与えられる。
日曜日には3つのフラッグフットボール試合が行われるとともに、その合間にはスキルズショーダウンの4種のミニゲームが行われる。各ミニゲームの勝者には3点が与えらる。フラッグフットボールの最初の2試合の勝者にはそれぞれ6点が与えられる。最後の試合はスコアがそのまま総得点に加えられる。
2023年シーズン
木曜日にスキルズショーダウンの5種のミニゲームが行われ、各ミニゲームの勝者には3点が与えられる
日曜日にはフラッグフットボールの1試合が4クォーターに別れて行われるとともに、その合間にはスキルズショーダウンの7種のミニゲームが行われる。各ミニゲームの勝者には3点が与えらる。フラッグフットボールの試合のスコアはそのまま総得点に加えられる。
歴代試合結果
プロボウルの特別ルール
2022年シーズンにフラッグフットボールの試合で置き換えられるまでは、以下のような特別ルールの下でアメリカンフットボールの試合が行われた。
プロボウルは、練習期間が短いことから複雑さを排除し、シーズンを終えた選手の安全性に配慮した通常の試合とは異なるルールを導入している。その一方、間延びした内容にならないようなルールも導入している。
これらの特別ルールに反した場合、15ヤード罰則のパーソナル・ファールとして扱われる。
オフェンス
モーション、シフトは禁止
RB 、TE は常に配置
WR は、片側に3人まで
インテンショナル・グラウンディングは反則としない
複数回のフォワード・パスが許される
ディフェンス
ボールキャリアが囲まれた場合、タッチ・フットボール のように接触しただけで、タックルして倒さずともレフェリーはボール・デッドと認めてプレーを止める
常に4-3 体形
カバー2ディフェンスは反則ではない
スクリメージ・ラインから5ヤード以内のプレスは禁止
ブリッツは禁止
スペシャルチーム
パント、フィールドゴール、ポイント・アフター・タッチダウンでのラッシュを禁止
パントはすべてフェアキャッチとなり、パントリターンが禁止
チーム
ディビジョナル・プレーオフで敗退したチームのうち、レギュラーシーズンの成績の良かった2チームのコーチ陣が指揮する
1チーム43人
スーパーボウル 出場選手は出場免除し、代替選手が出場
チーム・チャレンジはできない
クォーターの開始と終了
クォーターごとに攻撃シリーズを打ち切る
第1Qと第3Qの最初の攻撃権は、コイントスの結果で決める
第2Q最初の攻撃権は、第1Q最初のシリーズで守備だったチームにある
第4Q最初の攻撃権は、第3Q最初のシリーズで守備だったチームにある
すべてのクォーターでツー・ミニッツ・ウォーニングを導入
ゲーム運営
もっとも怪我の多い危険なプレーとされるキックオフの廃止、毎クォーターの開始の攻撃、失点後の攻撃は、自陣25ヤードから開始
プレークロック、通常40秒で行うところを35秒
第4Qの残り2分以内を除いて、サックされたときゲームクロックを止めない
全クォーターの残り2分以内では、攻撃が前進できなかったとき、ゲームクロックを止める
「第2Qの残り2分以内、または第4Qの残り5分以内」以外では、パス失敗後のゲームクロックをレフリーのシグナルで開始
延長
第4Q終了時点で同点の場合、決着がつくまでオーバータイムを繰り返す
オーバータイム2クォーターごとにチーム・タイムアウトを3つにするなど、ポストシーズンと同様のルールで運営
オーバータイム中は、プロボウルの特別ルールも同様に適用
レギュレーションに各クォーターに存在した特別ルールは、オーバータイムの対応するクォーターにも適用。例えば第2Qに存在するルールは、2回目のオーバータイムのクォーターにも適用
新ルール試行
2019-2020シーズン
2019シーズン および2020シーズン のプロボウルでは、危険なキックオフを排除しながらも、負けているチームが連続して攻撃権を得るためのオンサイドキックのメリットを保持するために、将来公式戦にも適用する可能性のある以下のルール変更を試行した[11] [12] 。
得点したチームには次の2つの選択肢が与えられる。
相手チームに敵陣25ヤードから攻撃を開始させる。
自陣25ヤード地点から、4thダウン15ヤードで攻撃を再開する。15ヤード以上進めば1stダウン更新となり、そうでなければ相手チームに攻撃権が渡る。
2021シーズン
2021シーズン のプロボウルでは、危険なキックオフが完全に廃止された。前半のプレー開始時には、コイントスで勝ったチームが任意の位置にボールを置いて攻撃の向きを決め、相手チームが攻撃か防御を選ぶことができる。後半のプレー開始時にはコイントスで負けたチームがボールを任意の位置に置いて攻撃の向きを決め、相手チームが攻撃か防御を選ぶ[13] 。
さらに、2019シーズン、2020シーズンと同様にタッチダウンかフィールドゴールで得点したチームがボール位置と攻撃権の二つの選択肢を与えられる[13] 。
ユニフォーム
NFCチームは青、AFCチームは赤をカンファレンス色とする。いずれかのカンファレンスがホームチームとなる。ホームチームはカンファレンス色のユニフォームを着用し、ビジターチームは白を基調とし、カンファレンス色のアクセントを入れたユニフォームとなる。ヘルメットは各選手がそれぞれの所属チームのものをかぶる。
エピソード
特定の選手への敬意
2008年 (2007-2008シーズン )
ワシントン・レッドスキンズ から選出されたクリス・サミュエルズ 、クリス・クーリー 、イーサン・オルブライト の3人が、前年に殺害されたショーン・テイラー の21番を着けて出場した[14] 。
2013年 (2012-2013シーズン )
そのシーズン限りでの現役引退を表明していたオールNFCのジェフ・サタデー (当時、グリーンベイ・パッカーズ )が、1プレーだけオールAFCのセンターとして参加し、インディアナポリス・コルツ で長年チームメートだったペイトン・マニング (当時、デンバー・ブロンコス )にボールをスナップする特別な役目を果たした[15] 。
親子での出場
2011年 までに5組の親子がプロボウルに選ばれている[16] 。
脚注
注釈
^ スーパーボウルと同じ会場で開催となった2010年は、スーパーボウル出場チームの選手は、スーパーボウルのチーム練習を離れて、プロボウルの試合中はチームエリアにいるなど、プロボウル・イベントへの参加を義務付けられた。
^ フラッグフットボールに種々のミニゲームを加えた総得点を競う
出典
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
プロボウル に関連する
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