『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(The Book of Boba Fett)は、配信サービスのDisney+向けに製作されたアメリカ合衆国の連続テレビドラマである。『スター・ウォーズ』フランチャイズの一編であり、『マンダロリアン』のスピンオフでもあるこの番組は、それまでの『スター・ウォーズ』関連作に登場したバウンティハンターのボバ・フェットを主役とする。
概要
『マンダロリアン』や過去の『スター・ウォーズ』関連作と同様にボバ・フェットはテムエラ・モリソン、フェネック・シャンド(英語版)はミンナ・ウェンにより演じられる。ルーカスフィルムは以前からボバ・フェットの単独映画に幾度か取り組んでいたが、その後『マンダロリアン』を優先させた。モリソンは『マンダロリアン』の第2シーズン(英語版)でウェンと共にフェット役で出演し、2020年11月にスピンオフシリーズの可能性が初めて報じられた。『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』は2020年12月にモリソンとウェンの出演と共に正式に発表された。撮影はその時点で既に始まっており、2021年6月まで続いた。
シリーズ初回は2021年12月29日に配信され、2022年2月9日まで計7話が順次配信された。
あらすじ
ストーリーは惑星タトゥイーンを主な舞台とし、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』でボバ・フェットがサルラックに呑み込まれた直後からの出来事と、それから5年後にボバ・フェットがジャバ・ザ・ハットの縄張りを手に入れ守ろうとする出来事を行き来する。サイドストーリーとして『マンダロリアン』の主人公の"マンダロリアン"(ディン・ジャリン)および彼が引き取った孤児グローグーとのかかわりが描かれる。
5年前、ボバ・フェットは何とかサルラックから脱出するも、タスケン・レイダーに捕まり奴隷とされる。やがてタスケン・レイダーの信頼を得て部族の一員となるが、他種族との抗争により部族を皆殺しにされてしまう。重傷を負ったところを救ったフェネック・シャンド(英語版)と組んで復讐を遂げるが、失った自分のアーマーは見つからない。かつてジャバ・ザ・ハットの支配していた縄張りを手に入れようとする[1]。
それから5年後、『マンダロリアン』で描かれているとおり、ボバ・フェットはアーマーを取り戻し、フェネック・シャンドとともに、ジャバ・ザ・ハットの右腕だったビブ・フォーチュナを殺している。乗っ取りに成功したジャバ・ザ・ハットの縄張りを守るため、"スパイス"取引を行うパイク・シンジケートとの抗争となる。グローグーと離れ、ヘルメットを脱いだために「背教者」となった"マンダロリアン"はフェネック・シャンドに誘われてボバ・フェットの軍に加わる。モス・エスパの町で戦いが始まり、ボバ・フェットの軍は劣勢となるが、ジェダイの修行を諦めてやってきたグローグーの助けもあって逆襲し勝利する。"マンダロリアン"とグローグーはタトゥイーンを去り、ボバ・フェットとフェネック・シャンドがジャバ・ザ・ハットの元の縄張りを引き続き支配する。
キャストとキャラクター
※ 演、声の括弧内は日本語吹き替え。
メイン
- ボバ・フェット
- 演 - テムエラ・モリソン(金田明夫[2])
- ジャンゴ・フェットの息子のバウンティハンター[3]。モリソンはこのシリーズがキャラクターの過去を探り、『帝国の逆襲』(1980年)から『マンダロリアン』第2シーズンの間に彼が何が起こったのかを示す機会だと述べている[4]。
- フェネック・シャンド(英語版)
- 演 - ミンナ・ウェン(花藤蓮[2])
- フェットの相棒の傭兵、暗殺者[3]。
- マンダロリアン / ディン・ジャリン
- 演 - ペドロ・パスカル(阪口周平[5])
- マンダロリアンのバウンティハンターにしてボバの戦友。人前でヘルメットを取らないカルトに属する。
リカーリング
- 8D8
- 声 - マット・ベリー(山橋正臣)
- ボバの身の回りの世話をするドロイド。
- 執事長
- 演 - デヴィッド・パスクエジ(荻野晴朗)
- 市長の執事長を勤めるトワイレックの男。
- ガーザ・フウィップ(英語版)
- 演 - ジェニファー・ビールス(八十川真由野)
- タトゥイーンのモス・エスパで酒場サンクチュアリを経営するトワイレックの女性。
- ブラック・クルルサンタン(英語版)
- 演 - キャリー・ジョーンズ
- ジャバのいとこの双子に仕えるバウンティ・ハンターのウーキー。
- キャド・ベイン(英語版)
- 声 - コーリー・バートン(多田野曜平[6])
- 保安官コブ・ヴァンスを決闘で倒すデュロスの賞金稼ぎ。
その他
- ドク・ストラッシ
- 演 - ステファン・オヨン、声 - ロバート・ロドリゲス(菊池通武)
- タトゥウィーンの闇医者。
- ガモリアン ガード
- 演 - フランク・トリッグ、コリン・ハイムズ
- ジャバとビフに仕えていた衛兵。
- モク・シェイーズ
- 声 - ロバート・ロドリゲス(武藤正史)
- 惑星タトゥイーンのモス・エスパの街を治める市長。犯罪組織のボス「大名」になったボバを良く思っていない。
- ローサ・ピール
- 演 - スティーヴン・ルート(田中英樹)
- ボバ・フェットに陳情するモス・エスパの水売りの男性。
- ランコアの飼育人
- 演 - ダニー・トレホ(廣田行生)
- ジャバのいとこから贈られてきたランコアの子供を世話するために雇われた男。
- ドラッシュ
- 演 - ソフィー・サッチャー(内藤有海)
- 惑星タトゥイーンにあるモス・エスパの街のサイボーグのギャングの女性。
- スカッド
- 演 - ジョーダン・ボルジャー(朝比奈拓見)
- 惑星タトゥイーンにあるモス・エスパの街のサイボーグのギャングの男性。
- アーマラー(英語版)
- 演 - エミリー・スワロー(藤貴子)
- マンダロリアンのアーマー職人。
- パズ・ヴィズラ(英語版)
- 演 - タイット・フレッチャー[注 1]、声 - ジョン・ファヴロー[注 1](宮本崇弘)
- ディン・ジャリンと決闘するマンダロリアンの男性。
- ペリ・モットー
- 演 - エイミー・セダリス(定岡小百合)
- 惑星タトゥイーンのモス・アイズリー宇宙港にあるハンガー3-5を経営するエンジニアにして商人。
- カーソン・テヴァ
- 演 - ポール・サン=ヒョンジュ・リー(丸山壮史)
- ディン・ジャリンを何度か尋問した新共和国のT-65B Xウイング・スターファイターのパイロット。
- ルーク・スカイウォーカー
- 演 - マーク・ハミル、グラハム・ハミルトン[注 2](須田祐介[6])
- ジェダイマスター。帝国との戦争に終止符を打った後にグローグーを弟子にする。
- アソーカ・タノ
- 演 - ロザリオ・ドーソン(伊藤静[6])
- ルークの父アナキンのかつての弟子。ルークとも交流がある。
- コブ・ヴァンス(英語版)
- 演 - ティモシー・オリファント(さかき孝輔)
- 惑星タトゥイーンにあるモス・ペルゴの街の保安官。
- グローグー
- ヨーダと同じ種族の50歳の赤子。強いフォースをふるう。
エピソード
製作
背景
ディズニーCEOのボブ・アイガーは2013年2月に『スター・ウォーズ』の単発のスピンオフ映画の企画を発表した。そのうちの1本はバウンティハンターのキャラクターであるボバ・フェットが中心となり、『新たなる希望』(1977年)と『帝国の逆襲』(1980年)、もしくは『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』(1983年)の間が舞台になると報じられた[7]。また『帝国の逆襲』に登場する他のバウンティハンターについても探求されると報じられた[8]。2014年初頭、サイモン・キンバーグがジョシュ・トランクに『スター・ウォーズ』の映画の製作を打診し、トランクは『スター・ウォーズ』の製作であるルーカスフィルムにボバ・フェットの映画を提示し[9]、同年6月に監督に就任した[10]。トランクは2015年4月のスター・ウォーズ セレブレーション・アナハイムで映画を告知し、プロジェクトのティーザーも公開する予定であったが[11]、ルーカスフィルム側がトランクの映画『ファンタスティック・フォー』(2015年)の製作中の問題を把握したために直前で中止された[9]。2015年5月時点でトランクはもう企画に取り組んでいなかった[12]。2017年8月時点でルーカスフィルムがボバ・フェットの映画を未だ検討中であることが報じられた[13]。その後『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)が興行的に失敗したことを受けてディズニーは『スター・ウォーズ』の映画の公開計画を再検討した。2018年10月時点でボバ・フェットの映画は進展しておらず、ルーカスフィルムはDisney+の配信シリーズ『マンダロリアン』を優先していた[8][14]。
2020年2月、アイガーは『マンダロリアン』のスピンオフが検討中であり、同番組により多くのキャラクターを登場させた上でそれらの独自のシリーズが与えられる可能性があると述べた[15]。同年5月、『マンダロリアン』の第2シーズン(英語版)にテムエラ・モリソンがボバ・フェット役で出演することが決定した[16][17]。モリソンは『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002年)でボバの父のジャンゴ・フェットを演じ、それ以後も様々な『スター・ウォーズ』関連メディアでボバの声を務めていた[16]。モリソンの『マンダロリアン』への出演が確定する以前にフェットは第1シーズン(英語版)の「チャプター5: ガンファイター(英語版)」でミンナ・ウェン演じるフェネック・シャンド(英語版)の前の小登場していた[17][18]。モリソンは第2シーズンの初回「チャプター9: 保安官(英語版)」に小出演した後、ロバート・ロドリゲスが監督した「チャプター14: 悲劇(英語版)」で本格な出演を果たした[19]。
企画
2020年11月初旬時点では『マンダロリアン』の第3シーズンかボバ・フェットに焦点を当てたとみられるスピンオフシリーズのどちらかの製作が同月下旬から12月初旬に開始予定であると報じられていた[20]。12月10日に開催されたディズニーの投資家向けイベントでルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディは『マンダロリアン』と同一の時代を描くスピンオフシリーズ『Rangers of the New Republic』と『Ahsoka』を告知したが、ボバ・フェットのスピンオフシリーズについては発表しなかった[21]。ケネディは『マンダロリアン』の「次章」が2021年12月に初演されることも発表した[22]。
『マンダロリアン』の第2シーズンの最終回「チャプター16: 救出(英語版)」は2020年12月末に配信され、その回には『The Book of Boba Fett』が2021年12月に配信されることが明らかとなる「サプライズ・エンドクレジット・シークエンス」が含まれた[23]。これを受けてコメンテーターの間ではこれが『マンダロリアン』の第3シーズンのサブタイトルであり、『マンダロリアン』は第3シーズンより主人公がディン・ジャリンからボバ・フェットに変更されるという混乱と憶測が発生した[3]。『マンダロリアン』の発案者兼ショーランナーのジョン・ファヴローはその後まもなく『The Book of Boba Fett』が『マンダロリアン』の第3シーズンとは別の独立したシリーズであることを明かした。彼はこのスピンオフが投資家向けイベントでケネディによって発表されなかったのは「チャプター16: 救出」の最後に明かされる「サプライズを台無しにしたくなかったから」であると説明した。彼はさらにスピンオフの製作は既に始まっていることも付け加えた。シリーズはファヴロー、デイブ・フィローニ、ロドリゲスが製作総指揮を務め[3]、さらにロドリゲスは数話を監督もする[4]。他のスピンオフ企画と同様に『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』も『マンダロリアン』の時代を舞台としており[3]、「『マンダロリアン』のシーズン2.5」と表現されている[24][25]。製作側は『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』の各話を『マンダロリアン』の第3シーズンのように呼称しており、例えば第1話は連続テレビドラマの初回としてよくある「101」ではなく「301」と呼ばれた[25]。シリーズは全7話構成である[26]。
キャスティング
2020年12月のシリーズの公式発表でテムエラ・モリソンとミンナ・ウェンが『マンダロリアン』や他の過去の『スター・ウォーズ』メディアと同じくボバ・フェットとフェネック・シャンドを再演することが明らかとなった[3]。発表前の時点でウェンは『マンダロリアン』の第3シーズンのレギュラーとして雇われたものであると思われていた[25]。フェネックの他にもさらに『マンダロリアン』のキャラクターが登場すると報じられている[24]。2021年11月、ジェニファー・ビールスの出演が明らかとなった[1]。
撮影
シリーズの撮影は2020年11月下旬時点で始まっており[3][20]、以前に『マンダロリアン』の2シーズンでも使用されたロサンゼルスのステージクラフト(英語版)のビデオ・ウォール(英語版)で行われた[24]。撮影所ではCOVID-19の安全ガイドラインに従ってスタッフは俳優にマスクとフェイスシールドを装着し、3日おきにCOVID-19の迅速検査、1週ごとに通常検査が行われた[27]。2週間の撮影の後、キャストとスタッフたちは自分たちが『マンダロリアン』の第3シーズンではなく『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』を作っていたことを知った[25]。ロドリゲスはシリーズのうち計3話を監督し[28]、他にファヴロー、ブライス・ダラス・ハワード、フィローニ[29]、ステフ・グリーン、ケヴィン・タンチャローエンも監督したと報じられた[30]。ディーン・カンディはシリーズの撮影監督を務めた[31]。撮影は2021年6月8日に完了し[32]、『Obi-Wan Kenobi』と共にロサンゼルスのサウンドステージを占拠した[24]。
視覚効果
インダストリアル・ライト&マジックがシリーズの視覚効果を担当する[33]。
音楽
2021年9月下旬までに『マンダロリアン』の作曲家であるルドウィグ・ゴランソンが『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』へ続投し、スコアリング・セッションが開始されていた[34]。
公開
2021年12月29日、Disney+で配信開始[35]。全7話構成であり[26]、2022年2月9日までに週に1話ずつ配信される[36]。
参考文献
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脚注
注釈
- ^ a b クレジットなし
- ^ パフォーマンスアクター
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