ヴィクトリアマイルは、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬の春の4歳以上の牝馬マイル重賞競走(GI)である。
競走名の「ヴィクトリア(Victoria)」は、ローマ神話に登場する勝利の女神[5]。
正賞は日本馬主協会連合会会長賞、ブリーダーズカップ・チャレンジ賞[3][4]。
概要
競走馬生産の原点である牝馬は従来、早期に引退させて生産界へ戻すべきと考えられており、古馬牝馬にとって目標となる競走も長らく設けられていなかった[5][6]。その後1996年にエリザベス女王杯が条件変更され、4歳(現3歳)以上牝馬のGI競走として行われるようになってからは、牝馬重賞競走の増設やローテーションの整備など競馬番組の充実が図られるようになり、競走馬として長く活躍する牝馬が多くなった[5]。一方、こうして長く現役として活躍した牝馬からも優秀な産駒が誕生するようになったことにより生産界の考え方にも変化が生じてきた[5]ほか、ヨーロッパでも競走馬としての牝馬の価値を重視する傾向が強まってきた[5]。こうした流れの中、2006年に4歳以上牝馬による春季のチャンピオン決定戦として本競走が新設された[5][6]。なお、本競走の創設に関してJRA内では「内国産競走馬のレベル向上のため、強豪牝馬は早く引退して繁殖牝馬になるべき。レースに出ては故障してしまう」という反対意見もあった[7]。
創設時より国際競走として外国馬が出走可能で、ステップ競走で所定の成績を収めた地方競馬所属馬も出走が可能となっている[2]。
2017年より、本競走の1 - 3着馬には当該年に行われるジャック・ル・マロワ賞(G1)への優先出走権が付与されることになった[8]。2018年より安田記念とともにデスティナシオンフランスの名称でジャック・ル・マロワ賞と提携[9]。2021年よりムーラン・ド・ロンシャン賞(G1)も対象競走に追加され、上位3頭に優先出走権が付与される[10]。
2020年からブリーダーズカップ・チャレンジの対象競走に指定され、優勝馬には当該年のブリーダーズカップ・フィリー&メアターフへの優先出走権と出走登録料・輸送費用の一部負担の特権が付与される。
競走条件
以下の内容は、2024年現在[3][4]のもの。
出走資格:サラ系4歳以上牝馬
- JRA所属馬
- 地方競馬所属馬(後述)
- 外国調教馬(優先出走)
負担重量:定量(56kg)
出馬投票を行った馬のうち、優先出走権(次節参照)をもつ馬から優先して割り当て、その他の馬は「通算収得賞金」+「過去1年間の収得賞金」+「過去2年間のGI・JpnI競走の収得賞金」の総計が多い順に出走できる。
優先出走権
外国調教馬[11]、およびレーティング順位の上位5頭(2012年より。106ポンド以上であることが条件)は優先出走できる。
JRA所属馬は同年に行われる下表の競走のいずれかで1着の成績を収めた馬に優先出走権が与えられる。
地方競馬所属馬は同年に行われる下表の競走のいずれかで2着以内の成績を収めた馬に、優先出走権が与えられる[12][11]。
上記のほか、高松宮記念及び大阪杯で2着以内の成績を収めた地方競馬所属馬は本競走か安田記念のいずれか1競走に優先出走できる[12][11]。また、指定された外国の国際G1競走(2歳G1競走は除く)、および地方競馬で行われるダート交流GI・JpnI競走(2歳GI・JpnI競走は除く)を優勝した地方競馬所属馬には本競走の出走資格が与えられる[6]。
賞金
2024年の1着賞金は1億3000万円で、以下2着5200万円、3着3300万円、4着2000万円、5着1300万円[3][4]。
歴史
年表
- 2006年 - 4歳以上牝馬によるGI[注 1]競走として創設[6]。
- 2007年 - 日本のパートI国昇格に伴い、格付表記をJpnIに変更[注 2]。
- 2009年
- 外国調教馬の出走枠が9頭に拡大[14]。
- 格付表記をGI(国際格付)に変更[14]。
- 2012年 - 出走馬選定方法が変わり、レーティング上位5頭に優先出走を認める[15]。
- 2014年 - トライアル制を確立し、指定された競走の1着馬に優先出走を認める。
- 2015年 - 3着に18頭立て中最下位人気のミナレットが入り、3連単の払戻金が当時歴代2位(現在歴代5位)、重賞レース歴代1位の2070万5810円の超高額配当となる。
- 2020年
歴代優勝馬
ヴィクトリアマイルの記録
レース記録
- レースレコード - 1分30秒5(2019年優勝馬ノームコア)[17]なお、このタイムは東京競馬場芝1600m(3歳以上)のコースレコードでもある[18]。
- 優勝タイム最遅記録 - 1:34.0(第1回優勝馬ダンスインザムード)
- 勝利馬の最高馬体重 - 498kg
- 最年長優勝馬 - 7歳
- 最多優勝馬 - 2勝
- ヴィルシーナ(2013・2014年)、ストレイトガール(2015・2016年)
- 最多優勝騎手 - 3勝
- クリストフ・ルメール(2017年・2020年・2021年)、戸崎圭太(2015年・2016年・2023年)[注 3]
- 最多優勝調教師 - 3勝
- 藤原英昭 3勝(2008年・2015年・2016年)[注 4]
- 最多優勝馬主 - 3勝
- (有)サンデーレーシング(第5回・第16回・第18回)
- 最多勝利種牡馬 - 4勝
払戻金
- 2015年のレースでは1着ストレイトガール(5番人気、鞍上・戸崎圭太)、2着ケイアイエレガント(12番人気、鞍上・吉田豊)、3着ミナレット(18番人気、鞍上・江田照男)となり、2017年12月時点で3連複で史上5位となる286万馬券、3連単で史上4位となる2070万馬券が発生した。
- 単勝の最低払戻金額は2021年グランアレグリアの130円[19]。
脚注
注釈
出典
各回競走結果の出典
- 馬主名義を含む競走結果
- JRA年度別全成績
- (2024年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2024年5月13日閲覧。(索引番号:12095)
- (2023年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2023年5月16日閲覧。(索引番号:11095)
- (2022年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2022年5月16日閲覧。(索引番号:11095)
- (2021年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2021年5月17日閲覧。(索引番号:11095)
- (2020年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2020年6月10日閲覧。(索引番号:11095)
- (2019年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2019年6月10日閲覧。(索引番号:12092)
- (2018年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2018年6月10日閲覧。(索引番号:12095)
- (2017年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2017年5月15日閲覧。(索引番号:12095)
- (2016年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月16日閲覧。(索引番号:12095)
- (2015年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:12095)
- (2014年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:12095)
- (2013年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:12095)
- (2012年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- (2011年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- (2010年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 10. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- (2009年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 10. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:12095)
- (2008年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- (2007年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- (2006年)“第2回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年5月12日閲覧。(索引番号:11095)
- netkeiba.comより(最終閲覧日:2024年5月13日)
- JRAデータファイル ヴィクトリアマイル(最終閲覧日:2017年5月14日)
- 国際格付に関する出典
- 国際競馬統括機関連盟,IFHA,International Cataloguing Standards Book(通称Blue Book)
- 2006 (PDF) ,2007 (PDF) ,2008 (PDF) ,2009 (PDF) ,2010 (PDF)
- 2011 (PDF) ,2012 (PDF) ,2013 (PDF) ,2014 (PDF) ,2015 (PDF) ,2016 (PDF) ,2017 (PDF) ,2018 (PDF)
外部リンク