1 kg の種をある一定面積の土地に作付けすることで、1 t の作物が収穫できるとする。同じ面積にもう 1 kg の種を植えれば、収穫も 2 t になると期待されるかもしれない。
しかし、ここに収穫逓減が発生するとしたら、種を 1 kg 増やしても、収穫できる量の増加は 1 t よりも少なくなる(同じ土地で、同じ季節で、単に植える種を増やしただけの場合)。例えば、種を 1 kg 増やしても、収穫量は 0.5 t しか増えないというようなことが生じる。収穫逓減の法則によれば、さらに種を 1 kg 増やして合計 3 kg を植えた場合、それによって増える収穫量は 0.5 t よりも少なく、例えば、0.25 t になる。
経済学における「限界主義」とは、生産システムの生産性の限界を追究することを意味する。上述の三つのシナリオで、収穫量は種 1 kg の場合は 1 t、さらに種を 1 kg 追加したときの収穫量の増分は 0.5 t、さらに種を 1 kg 追加したときの収穫量の増分は 0.25 t となる。したがって、種の限界生産物(marginal product, MP)は、植えられた種の総量が増大するにつれて低下する。この例では、限界生産物は追加された種の量で増えた収穫量を割ったものに等しい。
収穫逓減の結果として、総投資量を増やしたとき、総投資に対する総投資回収率(製品または収穫の平均)が減少していく。最初の 1 kg の投資に対して投資回収率は 1 t/kg となる。2 kg の投資に対しては 1.5 t/2 kg = 0.75 t/kg、3 kg の投資に対しては 1.75 t/3 kg = 0.58 t/kg となる。
費用対効果
入力単位当たりの収穫と生産費用には逆の関係がある。1 kg の種の費用が $1 とし、この価格は変化しないとする。ただし、生産費用は種の購入費用だけではないが、それら費用は収穫量に伴って変化しない固定費用とする。1 kg の種を植えると 1 t の収穫があるので、この最初の 1 t の生産費用には $1 余計にかかる。すなわち、最初の 1 t の収穫について、限界費用(marginal cost, MC)は 1 t 当たり $1 である。他に何も変化しない場合、種を 1 kg 増やしたときの収穫量の増加は最初のときの半分である。すなわちその MC は 0.5 t 当たり $1、つまり 1 t 当たり $2 となる。同様にさらに種を 1 kg 増やしたとき、MC は 0.25 t 当たり $1、つまり 1 t 当たり $4 となる。したがって、収穫逓減は限界費用の増大を伴い、平均費用の増大も伴う。上述の例では、平均費用は 1 t については $1、1.5 t については $2、1.75 t については $3 と増大していく。あるいは $1 当たりの費用で表すとおおよそ、$1、$1.3、$1.7 と増大する。