旧天上寺焼失による客足不足により、ケーブル - 史跡公園間にあった遊園地や土産物屋等は廃業に追い込まれた。一部は現在もそのまま残る。
忉利天上寺(とうりてんじょうじ)は、兵庫県神戸市灘区摩耶山町にある摩耶山真言宗[1]の大本山の寺院。山号は佛母摩耶山。本尊は十一面観音菩薩と仏母摩耶夫人尊。釈迦の生母である摩耶夫人を本尊とする日本唯一の寺である。通称は天上寺という。新西国三十三箇所第22番札所。
歴史
忉利天上寺は大化2年(646年)に孝徳天皇の勅願により、インドの伝説的な高僧法道仙人が開創したと伝わる。後に空海(弘法大師)が渡唐した際、梁の武帝自作の摩耶夫人尊像を持ち帰り、同寺に奉安したことから、この山を「摩耶山」と呼ぶようになったとされる。寺号は摩耶夫人が転生した忉利天に因むものである。鎌倉時代末期の摩耶山合戦(幕府軍対赤松氏)で知られる摩耶山城をこの寺とする説がある。
最盛期には多くの塔頭、僧坊を抱えており、最も栄えた頃は3,000人の僧を擁する摂津地方第一の大寺だったと伝わる。宗派を越え、皇族・武将なども含め、広く信仰され、花山・正親町両天皇の御願所でもあった。
江戸時代には将軍徳川家光により摂津国の鎮護寺(護国寺)に選定され、紀州徳川家が将軍家の代参の役をつとめた。このため天上寺の紋は、天皇家より賜った五七の桐紋と徳川家より賜った三つ葉葵紋を合わせた二種紋となっている。
1976年(昭和51年)1月30日未明、賽銭泥棒による放火のため[2]、仁王門や一部の塔頭・庫裏を除いて全焼した。現在は北方約1 kmにある摩耶別山(天上寺創生の地とされる)に場所を移して再建された。旧境内は摩耶山歴史公園として整備されており、旧伽藍の解説板などが整備されているほか、焼け残った仁王門も残されており、石垣や石段なども往時を偲ばせる(北緯34度43分50.9秒 東経135度12分20.8秒 / 北緯34.730806度 東経135.205778度 / 34.730806; 135.205778 (忉利天上寺・旧境内))。ただ、仁王門以外の建物(庫裏など)は整備されておらず、朽ちかけている。
2020年(令和2年)4月3日高野山真言宗から独立し、新しい包括宗教法人として摩耶山真言宗を設立し[1]、その総本山となる。
本尊
本尊は「十一面観音菩薩像」と「仏母摩耶夫人尊像」。
- 「十一面観音菩薩像」は一寸八分(約6 cm)の黄金の秘仏で、通常は拝観できない。開帳は三十三年毎に行われるという。法道仙人が持参してきたものといわれ、大阪湾一円および摩耶山の四周に開けた諸国(摂津・播磨・河内・和泉・淡路等)の守護仏とされた。
- 「仏母摩耶夫人尊像」は極彩色等身大の仏像。1976年(昭和51年)の火災により焼失したため、新しく作られた。完成後は金堂に収められていた。摩耶夫人堂は、2002年(平成14年)10月に再建されて、落慶法要が営まれた。仏母摩耶夫人尊像が金堂から遷座された。
境内
- 金堂(本堂)
- 権現社 - 伽藍神である釈帝権現を祀る。
- 摩耶夫人堂 - 全国唯一の摩耶夫人を祀る堂。
- 密教学講伝所
- 一願地蔵堂
- 法道仙人石像
- 天空の大舞台
- 鐘楼
- 書院
- 金輪堂 - 一字金輪を祀る。
- 本坊
- 天竺堂
- 西山門
- 旧境内地 - 現在は摩耶山歴史公園となっている。
- 仁王門 - 摩耶山歴史公園にある。
文化財
兵庫県指定有形文化財
神戸市指定有形文化財
前後の札所
- 新西国三十三箇所
- 21 神呪寺 - 22 天上寺 - 23 能福寺
- 関西花の寺二十五霊場
- 9 鶴林寺 - 10 天上寺 - 11 永澤寺
- 西国愛染十七霊場
- 3 鏑射寺 - 4 天上寺 - 5 大龍寺
- 摂津国八十八箇所
- 79 円満寺 - 80 天上寺 - 81 聖徳院
- 摂津国三十三箇所
- 3 神呪寺 - 4 天上寺 - 5 瀧勝寺
- 神戸十三仏霊場
- 1 転法輪寺 - 2 天上寺 - 3 如意寺
- 神戸七福神布袋尊
- 福原西国三十三観音霊場
- 客番打納 阿弥陀寺 - 客番奥之院 天上寺
- 神仏霊場巡拝の道
- 68 廣田神社 - 69 天上寺 - 70 湊川神社
拝観
- 拝観料:無料
- 拝観時間:8時 - 17時
- 駐車場:山門近くに有料市営駐車場50台
アクセス
- 三宮駅・JR新神戸駅・JR六甲道駅・阪急六甲駅から神戸市バス・18系統に乗車し、「摩耶ケーブル下」で下車。摩耶ケーブル・摩耶ロープウェー(まやビューライン夢散歩)を乗り継ぎ山上へ。山上にある星の駅から徒歩約10分。
- 18系統バスの運行頻度は1時間に1 - 2本程度。「摩耶ケーブル下」停留所の南へ約500メートルの地点に2系統バスの「観音寺」停留所があり、こちらは運行本数が多い。
- 摩耶ケーブルの始発は10時で、通常20分毎の運転、摩耶ロープウェーの始発は10時10分で、通常20分毎の運転。ただし、ケーブル、ロープウェー共に夏季を除き毎週火曜日は運休(2007年12月現在)。
- 2022年11月まで阪急六甲駅からは寺の前まで本数は少ないが直通バスがあった。夏休み以外の平日は運休していた。六甲登山バスの廃止により、山門前までバスを利用したい場合は、六甲ケーブル山上駅と摩耶ロープウェー山上駅の間を運行している六甲摩耶スカイシャトルバスで摩耶山天上寺前バス停で下車する方法が毎日利用できる。なお、冬季や平日は本数が少なくなる。
脚注
- ^ a b c 国税庁法人番号公表サイト
- ^ 「<神戸・摩耶山天上寺>苦しみから女性解放」『読売新聞』2014年9月22日。
外部リンク
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