この項目では、フレーベルの恩物について説明しています。モンテッソーリの恩物については「モンテッソーリ教育 」をご覧ください。
フレーベル式の恩物
フレーベル式の恩物
恩物 (おんぶつ、英語 : Froebel Gifts 、ドイツ語 : Fröbelgaben )はフリードリヒ・フレーベル が考案した一連の教材 である。これはドイツ のバート・ブランケンブルク(Bad Blankenburg )にフレーベルが1837年に設立した幼稚園 (Kindergarten 、当初の名称は、「幼少年期の作業衝動を育成するための施設」)で初めて恩物の制作、および販売に着手した。
概要
フレーベルはヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチ が唱えた直観教育 に傾倒し、教育 の理想の根源を「生命 の統一」であるとした。[1] そのため、幼年期に自由に遊ぶこと を通して人間 の本質のみならず、事物の本質を体得すること[1] の大切さを主張した。このため、個々の贈り物 (ドイツ語 : Gabe )[2] は、子ども 自身が率先して活動できるような材料 を子どもたちに提供するようデザインされている。この恩物は、1838年 に創案された
[1] 。
フレーベルが考案した恩物は第1恩物から第20恩物まで20種類あるが、日本 では一般的に、第1恩物から第10恩物までを「恩物」、第11恩物から第20恩物までを「手技工作」と呼んで区別している。[3] [4] 具体的には以下のようなもので構成される[3] [4] 。
名称
相当する教材(恩物)
名称
相当する教材(手技工作)
第1恩物
六球
第11恩物
穴 あけ
第2恩物
三体
第12恩物
縫う
第3恩物
立方体 の積み木
第13恩物
描く
第4恩物
直方体 の積み木
第14恩物
組む・編む・織る
第5恩物
立方体と三角柱の積み木
第15恩物
紙 を折る
第6恩物
立方体と直方体の積み木
第16恩物
紙を切る
第7恩物
正方形 と三角形 の色板
第17恩物
豆 細工
第8恩物
5種類の木の棒
第18恩物
厚紙 細工
第9恩物
金属 製の鐶
第19恩物
砂 遊び
第10恩物
豆または小石の粒
第20恩物
粘土 遊び
これら20種類の恩物には、それぞれ意義や目的が示されている。
恩物としての球
フレーベルは球を「自然界における完全なる理想形」と考え、第1恩物に選んだ。このように考えた理由として、
球は世界中の国で遊具として広く用いられていること
球は丸いのでよく転がることから、乳幼児の運動に適していること
自然界において、地球 ・太陽 などの象徴 となること
円満な人格など、人間精神 の理想となること
滑らかで均整の取れた形であり、古来からその美 を見い出されてきたこと
などを挙げている。[5]
第1恩物としての球は、幼稚園に入園する前の乳幼児の使用を想定し、赤 ・青 ・黄 ・緑 ・橙 ・紫 の6色 の柔らかな鞠 である。現代の日本においては、この鞠は毛糸 製で、紐 付きのものと紐なしのものがある。[6]
本来の第1恩物は、ゆりかご に吊るして使用し、その色や形に惹かれた乳児が触ったり握ったりすることを想定したものであった。しかし、現代は一般家庭で用いられることは稀であることから、幼稚園で導入される。[7]
評価
Ottilie de Liagreは1844年 のフレーベルへの手紙 の中で、「恩物のおかげで子どもたちは生き生きと自由 に遊ぶ力を得ているようだが、人々は恩物を機械的で決まりきったものにしてしまうこともできる」と述べている。
ヨアヒム・リープシュナー(Joachim Liebschner)は著書 『子どもの仕事:フレーベル式教育理論と実践における自由と指導(A Child's Work: Freedom and Guidance in Froebel's Educational Theory andPractice )』の中で、
「フレーベルに付き従った幼稚園
教諭 がいかにして恩物を結果的に誤用してきたかを理解することは、フレーベルが恩物によって何を達成すべきと期待していたのかを考える上で重要である。彼は(第一に)子どもたちの遊び場で教育的な補助具として恩物が力を発揮すると考察したのだ。次に、
ヒト の
生命 の連続性について子どもたちが自然に学ぶだろうと考え、最後には
大人 と子どもの関係を恩物で遊ぶことで築いていくだろう、と考えたのである。
— Joachim Liebschner, A Child's Work: Freedom and Guidance in Froebel's Educational Theory and Practice , p.82
と語っている。
「数年間、私は小さな幼稚園の机 の前に座っていた・・・ 、そして遊んだ・・・、立方体 で、球 で、そして三角形 で。これらは滑らかなカエデ の木でできたブロックだった・・・。すべて今日でも私の指先に残っている。」[9]
現代の教育における利用
恩物は今でも韓国 と日本 の早期教育 において人気が根強い。
日本では、1876年 (明治 9年)に初めて幼稚園が開設[10] されて以来、長きに渡って教育現場 で用いられている。
関連項目
脚注
^ a b c 玉成保育専門学校幼児保育研究会、1964、9-10ページ
^ この贈り物とは「神 から人間・子どもたちへの贈り物」という意味である。
^ a b フレーベルの恩物 (2009年12月7日閲覧。)
^ a b 玉成保育専門学校幼児保育研究会、1964、10-11ページ
^ 玉成保育専門学校幼児保育研究会、1964、13-16ページ
^ 玉成保育専門学校幼児保育研究会、1964、10,13ページ
^ 玉成保育専門学校幼児保育研究会、1964、14-15ページ
^ Alofsin, Anthony (1993). Frank Lloyd Wright--the Lost Years, 1910-1922: A Study of Influence . シカゴ大学 出版. p. 359. ISBN 0-226-01366-9
^ Hersey, George (2000). Architecture and Geometry in the Age of the Baroque . シカゴ大学出版. p. 205. ISBN 0-226-32783-3
^ 東京女子師範学校が設立。「幼稚園」と名乗ったものでは初めての開設であるが、幼稚園に相当する施設はそれ以前にもあった。詳しくは幼稚園#日本 を参照。
参考文献
玉成保育専門学校幼児保育研究会『フレーベルの恩物の理論とその実際』(フレーベル館 、昭和39年9月29日、333ページ)
外部リンク