糸魚川市(いといがわし)は、新潟県最西端、上越地方に位置する市。日本海に面する。糸魚川静岡構造線(フォッサマグナ西端)が通り[1]、日本の東西の境界線上に位置する。
世界有数かつ世界最古のヒスイの産地で[2]、景勝地の親不知でも知られる。全域がユネスコ世界ジオパーク(糸魚川ジオパーク)に指定されている[3]。
概要
糸魚川市は新潟県の最西端に位ちする市町村であり、上越地方(新潟県の南西部の地域)の3市のうちの1つである[4]。
糸魚川の歴史は縄文時代までさかのぼり、日本列島から朝鮮半島まで及ぶヒスイの交易の発祥地点であった[5][6]。
のちには東日本と西日本との文化の交流の拠点および北前船往来による海上交通の拠点として、また越中国、信濃国と越後国との物流の拠点として栄えた[7](詳細は歴史節に後述する)。
2005年(平成17年)3月19日 糸魚川市、西頸城郡能生町及び青海町が合併して、糸魚川市が発足する[8]。
地勢
西を飛騨山脈、東を頸城山塊、北を日本海に挟まれた沿岸の平野部に位置する[9]。市街地の西側を流れる姫川がもたらす姫川谷は糸魚川静岡構造線とほぼ一致し、その西側が地質的な西南日本、東側が東北日本に分類される[9]。
市域内には国立公園が2箇所(中部山岳国立公園と妙高戸隠連山国立公園 )存在し、これは全国的にも珍しい[9]。
市内の西部(旧青海町)には断崖絶壁の海岸である親不知・子不知があり、明治以前までは新潟県と富山県を結ぶ北陸道の交通の難所として知られた[10]。
県庁所在地の新潟市までは約168kmも離れており、一方で隣の富山県富山市までは約86kmと半分程度の距離しかない。また長野県長野市までも約105kmほどの距離である[注釈 1]。
世界最古のヒスイ文化
ヒスイの産出地としては国内随一であり、世界最古のヒスイ文化発祥の地でもある[2]。
約5,000年前より、糸魚川市内のヒスイ海岸で産出したヒスイ原石が日本列島から北海道や沖縄、朝鮮半島へ至る範囲へ広く運ばれ、装飾品として利用された[11][5][6]。
その後は奈良時代ごろからヒスイの利用が歴史から途絶え、糸魚川を含む日本国内でヒスイが産出していたことも忘れられていた[11]。
しかし、1,000年以上の時を経た昭和期になって市内の旧小滝村においてヒスイの原石が再び発見された[11]ことにより、日本周辺各地の遺跡から出土するヒスイ加工品が海外由来ではなく糸魚川原産であった[5][6]ことが証明された。
現在では市内の産地2箇所が国の史跡名勝天然記念物に指定されており[12][13]、ヒスイは2016年(平成28年)9月に日本の「国石」に認定された[14]。
詳細は糸魚川のヒスイ記事を参照。
地理
自然
気候
概要
四季を通じて降水量が多い。暖候期は比較的日照が長く、寒候期に降水が増える典型的な日本海側気候である。ケッペンの気候区分では温暖湿潤気候 (Cfa)に属する。北陸地方の他都市と同様、同程度の緯度にある太平洋側の地域に比較すると年間の気温は高めに推移する。
冬季
市街地におかれたアメダスでは、最寒月(2月)における最低気温の平年値は0.7℃であり、通年で平均最低気温が0℃を下回ることがない。このため海岸に近い地域では、1 mを超える積雪が見られる年は多くはない。一方で山間部での降雪量は多く、雪国と呼ぶにふさわしい積雪を見ることが出来る[16][17]また山間部は海沿いの市街地に比べても冷え込みが強くなる。
春季から夏季
4月から5月にかけては、好天の日が多い。夏は沿岸部では湿度の高さもあって蒸し暑い。8月上旬における最低気温の平年値は24.4℃であり、同じく沿岸部に観測所があり緯度で2度ほど南に位置する横浜の24.6℃に近い数値である。
フェーン現象の影響
フェーン現象の影響で、夏から秋にかけて異常な高温を記録することがある。2023年8月10日には、日本国内における一日の最低気温の最高記録となる31.4℃を観測した。同年12月15日には日没後に気温が急上昇、26.0℃に達し12月としては異例となる夏日を記録している。
2013年7月6日には、朝5時台に35度を超える気温を観測した。同年10月9日には最高気温が35.1℃に達し、日本での観測史上初となる10月の猛暑日を記録した[18]。2018年10月6日、新潟県内4地点において猛暑日が観測された際に同月の国内最高気温記録は更新されたものの、10月9日は日本国内における最も遅い猛暑日の観測記録となっている。
頻発するフェーン現象は、地域にもさまざまな影響をもたらす。2016年12月22日の糸魚川大火当日もフェーン現象が発生しており、その影響を受け火災が大規模化したと見られている[19]。
糸魚川(標高8 m、糸魚川市東寺町)の気候
|
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
|
17.5 (63.5)
|
23.6 (74.5)
|
26.0 (78.8)
|
30.7 (87.3)
|
31.8 (89.2)
|
36.8 (98.2)
|
37.2 (99)
|
39.3 (102.7)
|
37.6 (99.7)
|
35.1 (95.2)
|
28.1 (82.6)
|
26.0 (78.8)
|
39.3 (102.7)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
7.0 (44.6)
|
7.4 (45.3)
|
10.9 (51.6)
|
16.3 (61.3)
|
21.2 (70.2)
|
24.3 (75.7)
|
28.5 (83.3)
|
30.3 (86.5)
|
26.6 (79.9)
|
21.3 (70.3)
|
15.7 (60.3)
|
10.2 (50.4)
|
18.3 (64.9)
|
日平均気温 °C (°F)
|
3.6 (38.5)
|
3.8 (38.8)
|
6.7 (44.1)
|
11.8 (53.2)
|
16.8 (62.2)
|
20.7 (69.3)
|
25.0 (77)
|
26.6 (79.9)
|
22.8 (73)
|
17.3 (63.1)
|
11.6 (52.9)
|
6.5 (43.7)
|
14.4 (57.9)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
0.9 (33.6)
|
0.7 (33.3)
|
2.9 (37.2)
|
7.6 (45.7)
|
12.9 (55.2)
|
17.7 (63.9)
|
22.3 (72.1)
|
23.6 (74.5)
|
19.7 (67.5)
|
14.0 (57.2)
|
8.2 (46.8)
|
3.4 (38.1)
|
11.2 (52.2)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−5.3 (22.5)
|
−5.2 (22.6)
|
−3.1 (26.4)
|
−1.3 (29.7)
|
5.1 (41.2)
|
10.7 (51.3)
|
15.4 (59.7)
|
17.2 (63)
|
11.4 (52.5)
|
4.8 (40.6)
|
0.8 (33.4)
|
−4.2 (24.4)
|
−5.3 (22.5)
|
降水量 mm (inch)
|
354.8 (13.969)
|
225.5 (8.878)
|
204.5 (8.051)
|
135.1 (5.319)
|
120.5 (4.744)
|
168.0 (6.614)
|
237.8 (9.362)
|
223.3 (8.791)
|
251.4 (9.898)
|
232.4 (9.15)
|
341.0 (13.425)
|
407.4 (16.039)
|
2,901.5 (114.232)
|
平均降水日数 (≥1.0 mm)
|
24.8
|
19.8
|
18.9
|
13.2
|
11.4
|
11.8
|
14.2
|
11.7
|
14.0
|
15.2
|
19.1
|
23.4
|
197.3
|
平均月間日照時間
|
52.9
|
85.2
|
135.4
|
178.8
|
205.3
|
160.4
|
159.2
|
195.2
|
138.9
|
133.9
|
99.7
|
66.6
|
1,611.5
|
出典1:理科年表
|
出典2:気象庁 (平均値:1991年-2020年、極値:1978年-現在)[20][21]
|
能生(1991年 - 2020年)の気候
|
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
|
17.5 (63.5)
|
22.5 (72.5)
|
24.9 (76.8)
|
29.6 (85.3)
|
30.2 (86.4)
|
32.8 (91)
|
36.5 (97.7)
|
36.9 (98.4)
|
36.6 (97.9)
|
33.5 (92.3)
|
26.9 (80.4)
|
22.9 (73.2)
|
36.9 (98.4)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
5.6 (42.1)
|
6.0 (42.8)
|
9.6 (49.3)
|
15.7 (60.3)
|
20.8 (69.4)
|
23.9 (75)
|
27.8 (82)
|
29.4 (84.9)
|
25.6 (78.1)
|
20.2 (68.4)
|
14.5 (58.1)
|
8.8 (47.8)
|
17.3 (63.1)
|
日平均気温 °C (°F)
|
2.2 (36)
|
2.1 (35.8)
|
4.9 (40.8)
|
10.4 (50.7)
|
15.8 (60.4)
|
19.8 (67.6)
|
23.9 (75)
|
25.1 (77.2)
|
21.1 (70)
|
15.5 (59.9)
|
9.9 (49.8)
|
4.8 (40.6)
|
13.0 (55.4)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
−0.6 (30.9)
|
−1.1 (30)
|
1.0 (33.8)
|
5.6 (42.1)
|
11.1 (52)
|
16.1 (61)
|
20.6 (69.1)
|
21.6 (70.9)
|
17.6 (63.7)
|
11.8 (53.2)
|
6.0 (42.8)
|
1.6 (34.9)
|
9.3 (48.7)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−7.3 (18.9)
|
−8.1 (17.4)
|
−5.8 (21.6)
|
−2.2 (28)
|
2.7 (36.9)
|
7.6 (45.7)
|
13.4 (56.1)
|
14.3 (57.7)
|
7.8 (46)
|
2.6 (36.7)
|
−0.5 (31.1)
|
−6.1 (21)
|
−8.1 (17.4)
|
降水量 mm (inch)
|
387.3 (15.248)
|
233.3 (9.185)
|
208.1 (8.193)
|
136.8 (5.386)
|
124.6 (4.906)
|
174.3 (6.862)
|
243.4 (9.583)
|
237.9 (9.366)
|
281.9 (11.098)
|
293.6 (11.559)
|
404.4 (15.921)
|
474.4 (18.677)
|
3,223.5 (126.909)
|
降雪量 cm (inch)
|
204 (80.3)
|
181 (71.3)
|
62 (24.4)
|
2 (0.8)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
72 (28.3)
|
505 (198.8)
|
平均降水日数 (≥1.0 mm)
|
25.2
|
20.1
|
18.9
|
13.1
|
11.5
|
12.1
|
14.5
|
11.5
|
14.8
|
15.8
|
19.2
|
23.9
|
201.2
|
平均月間日照時間
|
41.3
|
70.3
|
118.9
|
175.2
|
198.5
|
142.7
|
140.0
|
185.8
|
129.2
|
126.9
|
96.7
|
57.2
|
1,478.3
|
出典1:Japan Meteorological Agency
|
出典2:気象庁[22]
|
糸魚川市
|
雨温図(説明) |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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気温(°C) |
総降水量(mm) | 出典:[1] |
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インペリアル換算 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|
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気温(°F) |
総降水量(in) |
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人口
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糸魚川市と全国の年齢別人口分布(2005年)
|
糸魚川市の年齢・男女別人口分布(2005年)
|
■紫色 ― 糸魚川市 ■緑色 ― 日本全国
|
■青色 ― 男性 ■赤色 ― 女性
|
糸魚川市(に相当する地域)の人口の推移
1970年(昭和45年)
|
67,785人
|
|
1975年(昭和50年)
|
62,900人
|
|
1980年(昭和55年)
|
61,488人
|
|
1985年(昭和60年)
|
60,612人
|
|
1990年(平成2年)
|
56,803人
|
|
1995年(平成7年)
|
54,780人
|
|
2000年(平成12年)
|
53,021人
|
|
2005年(平成17年)
|
49,844人
|
|
2010年(平成22年)
|
47,702人
|
|
2015年(平成27年)
|
44,162人
|
|
2020年(令和2年)
|
40,765人
|
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総務省統計局 国勢調査より
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隣接自治体
- 新潟県
- 長野県
- 富山県
歴史
沿革
政治
行政
- 市長
施設
警察
- 新潟県糸魚川警察署
- 能生交番
- 青海交番
- 糸魚川駅前交番
- 梶屋敷交番
- 藤崎駐在所
- 槙駐在所
- 土塩駐在所
- 根小屋駐在所
- 市振駐在所
消防
- 本部
- 消防署
- 分署
- 能生分署(大字能生1941-2)
- 青海分署(大字青海4648-11)
- 分遣所
医療
- 主な病院
郵便
- 日本郵便の主な郵便局
スポーツ施設
文化施設
経済
第一次産業
- 漁業
市内には市または県管理の7つの漁港があり、東から順に以下のとおりである[28]。
- 筒石漁港(第2種漁港)
- 能生漁港(第3種漁港)
- 鬼舞漁港(第1種漁港)
- 浦本漁港(第2種漁港)
- 大和川漁港(第1種漁港)
- 親不知漁港(第1種漁港)
- 市振漁港(第2種漁港)
第二次産業
市内で良質な石灰岩が産出されることから、セメント製造を始めとした鉱工業が盛んである。
- 主な工場
第三次産業
- 主な商業施設
教育
高等学校
- 県立
中学校
- 市立
小学校
- 市立
特別支援学校
- 県立
- 市立
その他の教育施設
廃止
姉妹都市・提携都市
※この項は糸魚川市公式サイトを出典とする。
国内
- 姉妹都市
- 提携都市
交通
鉄道路線
市域内は西日本旅客鉄道(JR西日本)の北陸新幹線、大糸線、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいライン、あいの風とやま鉄道のあいの風とやま鉄道線、計4路線が経由している。新幹線開業以前は金沢駅方面、新潟駅方面、越後湯沢駅方面に特急列車(「北越」「はくたか」等)が設定されていたが、2019年時点では在来線は市内および隣接市町村を結ぶ列車のみが運行されている。
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)
- えちごトキめき鉄道
- あいの風とやま鉄道
- ■あいの風とやま鉄道線
- 市振駅
- ※市振駅及び糸魚川市内全域の線路管理はえちごトキめき鉄道が行うが、あいの風とやま鉄道との営業上の境界は市振駅となっている。
高速バス
路線バス
北陸新幹線の開業による影響
2015年(平成27年)3月14日に北陸新幹線が延伸開業したことにより、東京駅から長野駅や上越妙高駅を経由して糸魚川駅を発着し、富山駅や金沢駅へと運行するようになった。これにより糸魚川市に隣接する富山県および沿線の東京都、長野県、石川県との移動時間が短縮された。
糸魚川市から県庁所在地の新潟市までの移動には最短でも2時間以上を要する[注釈 2][30]一方で、隣接する富山県の県庁所在地である富山市までは新幹線で乗り換えなしに27分程度、長野県の長野市までは35分程度、また石川県の県庁所在地である金沢市までも50分程度、さらに東京都までも2時間20分程度で移動できる[31]ようになった。
道路
船舶
名所・旧跡・観光スポット
- 博物館・美術館・資料館[32]
- 旧跡・神社仏閣
- 温泉
- スキー場・ゴルフ場[33]
- 海水浴場[34]
- 親不知海水浴場
- 糸魚川海水浴場
- 大和川海水浴場
- 能生海水浴場
- 百川海水浴場
- キャンプ場[35]
- 森林公園高ノ峯プラトー
- 高浪の池キャンプ場
- ヒスイ峡キャンプ場
- 蓮華温泉キャンプ場
- 美山キャンプ場
- 不動滝キャンプ場
- 海谷三峡パーク
- 雨飾山麓しろ池の森
- 荒崎キャンプ場
- 須沢オートキャンプ場
文化・名物
祭事・催事
郷土料理・ご当地グルメ
名産・特産
-
糸魚川市で採取されたヒスイ輝石
-
糸魚川市で採取された軟玉
-
糸魚川石
著名な出身者
その他
当市は様々な面において東日本と西日本の境界に位置づけられることが多い[36]。
東北電力は電源周波数が原則50Hzだが、本市の青海地域の一部は60Hzとなっている。
脚注
注釈
- ^ それぞれ糸魚川市役所から県庁まで自動車で高速道路を用いて最短経路で移動した場合。所要時間では新潟県庁までが2時間10分程度、富山県庁までが1時間15分程度、長野県庁までが1時間45分程度である。
- ^ 糸魚川駅から北陸新幹線で上越妙高駅まで移動して特急に乗り換え、さらに長岡駅で上越新幹線に乗り換える場合が最短で2時間強。時刻によってはさらに長時間を要する。また、自動車では高速道路を用いても糸魚川市役所から新潟市役所まで最短で2時間20分程度、高速バスでは2時間44分程度である。
出典
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
糸魚川市に関連するカテゴリがあります。
外部リンク
- 行政
- 観光