蛇と梯子(へびとはしご)は、主に欧米で古くから親しまれている子供向けのボードゲーム。英語では Snakes and ladders または Chutes and ladders と呼ぶ("Chutes" はダスト・シュートなどの物を下に送る機構全般を指す言葉)[1]。2人以上で遊び、格子状に区切ってそれぞれのマスに番号を振ったゲーム盤を使う。ゲーム盤には、任意の2つのマスをつなぐ梯子や蛇がそれぞれいくつか描いてある。マスの数は特に決まっておらず(普通は8×8、10×10、12×12のいずれか)、蛇や梯子の数や配置も決まっていない。それらはプレイ時間に影響を与える要素である。全体としてこのゲームは吸収的マルコフ連鎖の状態で表すことができる[2]。
イングランドで以前から Snakes and ladders として売られていたが、Milton Bradley がアメリカ合衆国で「イングランドの有名な室内競技を……改良した新版」として Chutes and ladders として紹介した[2]。単純で抜きつ抜かれつの展開の面白さから幼い子供に人気がある。しかし、完全に運任せで熟練してもうまくなることはないため、大人向けではない。
アメリカで広く親しまれたのは Milton Bradley(ハズブロが買収)の Chutes and Ladders である。10×10マスの盤を使い、サイコロではなく付属のスピナー(ルーレットのようなもの)を回す。デザインのテーマは遊び場であり、そのために蛇ではなくシュートとし、梯子と組み合わせることですべり台を構成している。マスには道徳の勉強になるような絵が描かれている。梯子の下のマスには子供が良いことをしている絵が描かれ、梯子を上がったところのマスにはご褒美を楽しむ子供が描かれている。シュートの上のマスには子供がいたずらなどをしている様子が描かれ、シュートの下にはその結果叱られたなどの結果が描かれている。近年では様々なキャラクターを使ったバージョンがあり、「ドーラといっしょに大冒険」や「スポンジ・ボブ」などがある。
カナダでは Canada Games Company が Snakes and Ladders として販売していた。近年では蛇の代わりにトボガンぞりと呼ばれるソリが描かれたものもあった[5]。Canada Games Company が廃業したため、ハズブロ版の Chutes and Ladders がカナダでも人気を集めるようになってきている。
あるマスからそれぞれのマスに移動する確率は決まっており、そのマスまで到達した履歴は確率に影響しない。そのため蛇と梯子はまさにマルコフ連鎖そのものである。Milton Bradley 版の Chutes and Ladders には100マスあり、19個のシュートと梯子がある。出発点を1番のマスの枠外とすると、ゴールに到達するまでに平均で39.6回サイコロを振る必要がある。最小では7回サイコロを振るだけでゴールできる。
現代文化における蛇と梯子
日本語の「振り出しに戻る」と同じ意味を持つ「back to square one (英語版)」という英語のフレーズは、「蛇と梯子」ゲームに由来するか、少なくとも影響されたと考えられている。現在知られている出版物における最初の引用に1952年の英国の出版物Economic Journalがある。「彼は、蛇と梯子の一種の知的ゲームで常に1マス目に戻される読者の関心を維持する問題を抱えている」ただし、「蛇と梯子」ゲームにおいて1マス目に戻るように蛇がマス同士を繋げているのは少ない[6][7]。
^Hugh-Jones, E. M. (June 1952). “The American Economy, 1860–1940. by A. J. Youngson Brown”. The Economic Journal (Wiley) 62 (246): 411–414. doi:10.2307/2227038. JSTOR2227038.
^ Salman Rushdie. Midnight's Children. Random House Trade Paperback Edition, 2006. pg. 160