| この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方) 出典検索?: "覆面作家" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL(2012年4月) |
覆面作家(ふくめんさっか)は、素性やプロフィールをほとんど明らかにしない作家のこと。
概要
ペンネーム(変名)で活動しており、本名や顔写真は公開されておらずプロフィールには謎の部分が多い。また本名で活動している場合であっても、それ以外のほとんどのプロフィールが公開されていない場合でも覆面作家と呼ばれることがある。
文学賞の授賞式などの公の場においても本人は登場せず、コメントを出す程度に留まり、詳細なプロフィールの公表や授賞式への出席が義務であれば主要文学賞であっても受賞を辞退する例もある。
プロフィールを明らかにする場合、公表されるプロフィールは真実である場合もあれば、真偽が入り混じったもの、あるいは性別などまで含めて全く架空のプロフィールと人格を設定し、作家側は事実上ゴーストライターと同様の形で振る舞う場合もある。プロフィールが真実の場合、生年または誕生日、出身地、あとはあっても学歴程度に留まり、具体的な人物像を掴みにくいよう出版社側でも配慮がされている。
それ以外の覆面作家の定義はやや曖昧で、作家にもよるが覆面作家を自称する場合もあれば自称しない場合もある。
すでに商業ベースで活動をし著名になっている人物が、他の名義で覆面作家になる場合もあれば、商業活動を開始した当初から素性などを全く明らかにしない覆面作家も存在する。
音楽界においてはバンドのGReeeeN(彼らの本業である歯科医師活動に支障をきたさないため)や、作詞家のSatomi、初期の小椋佳(本業は日本勧業銀行の銀行員、のちに退職し専業となる)、初期のClariSなどが挙げられる。
日本の漫画・ライトノベル・ネット小説・ゲームといったオタク業界、アダルト業界などにおいては非常に多い。
インターネットの普及以降、作家の宣伝には検索エンジンのアルゴリズムに対応する必要があるため、有名作家がいきなり覆面作家として活動するといった企画は、戦略上非合理と言える。
理由
作家が素性を隠し覆面作家として活動する理由としては、以下のようなケースが挙げられる。理由は一つだけではなく、複数ある例も珍しくない。
- 著名人・既存の作家と比較した場合、正体を明らかにしないことによって作品内容に先入観を持たれないようにする意味を持つ。
- 特に「男性名で女性が執筆する」例などは、作者の性別による執筆内容への読者や評論家らの先入観を払拭する意味で、有効である。SF作家のジェイムズ・ティプトリー・Jr.が典型。日本では漫画家が典型であるが、デビュー時に編集者の方針で作品の作風にふさわしい男性的・女性的な名を、作者の性別とは無関係に名乗る例が幾つかある。
- まったく違った分野向けの作品をそれぞれ別名義で上梓し、あとで同一人物であることを発表して、読者にインパクトを与える目的。
- 専属解放やそれに付随する現場の業務の負担や契約会社への配慮といった商業契約手続面の都合などから、本来のプロフィールが出せないため。
- 日本国外ではトラヴェリング・ウィルベリーズの例ように、本来であれば素性を隠すことができないほど顔の知れた著名人達が、所属会社が異なるというライバル関係を考慮し、一種の作法として覆面作家の体裁を取る場合がある。
- 本業で勤務している会社・機関からの、圧力や同僚らからのやっかみなどを避けるため。または勤務先が就業規則で副業禁止を定めており、作家活動が知られると創作の停止を命じられる・もしくは解雇されるため。
- 素性を明らかにすると、自らのプライバシーや名誉を荒らされる恐れがあり、それを避けるため。
- 自らの作品に関する内容(場合によりその他諸々な)への責任を回避・もしくは放棄しやすくするため。
- 反体制側に属する者で、顔出しで執筆活動を行なうと身柄を政府当局から迫害・逮捕される恐れがあるため、これを避ける目的。
- 性別・国籍・民族などの出自・身元を偽装し、出版時に社会へインパクトを与える目的(例:イザヤ・ベンダサンやポール・ボネなど)。
- 出版社の社員が自社雑誌に小説を掲載しても、会社の規定により社員の名義では原稿料が支払われないことから、原稿料を貰うためにペンネームを使ったせいで、正体が明かせなくなる例。
- メインの仕事がいわゆるゴーストライターであるため、素性を広く知られると出版業界内での活動にも支障を来たす例。
- 描いている作品の内容がセンシティブなものであるため、自分の家族や知人に作者であることを知られたくない(特に性描写を含む成人向け作品や、反社会的な作品の場合)。
- 家族との不和がある、あるいは家族の性格や経済面に問題がある(例えば異常な浪費癖)などの理由から、自身が作家活動をしていることや作家としての収入があることを近親者からも隠す目的。
また、作家自身に当初はそのつもりはなかったものの、以下のような都合から結果として、事実上の覆面作家になってしまうケースもある。
- デビュー当初はプロフィールを伏せていて、その後公表するタイミングを逸したまま知名度が上昇した。
- デビュー当初からプロフィールを隠すつもりはなかったが、その後も公表する機会がなかなか得られなかった。
- デビュー当初は出版社の意向でプロフィールを伏せたが、そのまま覆面作家として人気が沸騰してしまい、話題性などの商業的事情からプロフィールの公開が難しくなってしまった。
- デビュー当初は成人向けの専門であったなどの事情から、一般向け(少年誌、青年誌など)に転じて以降も出版社側からの配慮や要請があり、プロフィールの公開ができない、あるいは公開させてもらえない。
複数の作家が共有筆名で1人の覆面作家になることもある。
個人情報
先に述べた通り、覆面作家は基本的に本名を伏せペンネームを使用しており、その顔・素性・経歴なども明らかにしておらず、世間から見たその人物像は謎に包まれている。
なお、覆面作家の正体や個人情報については、覆面作家も確定申告や納税を行う都合、出版業界以外でも公認会計士・税理士や、自治体・国税関係の税務担当職員らに本名や住所を開示する必要があるため、同時に職員がそれらの個人情報を把握することになる。ただし、それらの情報は極めて重要な個人情報として、職員に厳しい守秘義務が課せられており、諸規則の手前からは2005年まで存在した高額納税者公示制度を除けば、脱税などの捜査や刑事告発で個人情報の開示を命じる場合、または情報漏洩でもない限りこれらから素性が明らかにされることは有り得ない。
覆面作家の例(元覆面作家を含む)
海外
日本
外国人風
- イザヤ・ベンダサン - 山本七平がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名。著書「日本人とユダヤ人」は当時のベストセラーになったが、マスコミに正体が暴かれ騒ぎとなった。
- トレヴェニアン - 大学教授、映画研究家ロドニー・ウィリアム・ウィテカーの変名
- 朴泰赫 - 加瀬英明が韓国人に擬態して著書を出版していたということで論争となった[6]。
- 白正男 - 『テコンダー朴』の著者。作画担当の山戸大輔と同一人物という説がある。
- パオロ・マッツァリーノ
- ポール・ボネ - 藤島泰輔がフランス人を装って評論を書くために使った変名
- モーゼス・ベン・ヨハイ - 飛鳥昭雄がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名
- モルデカイ・モーゼ - 久保田政男がユダヤ人を装って評論を書くために使った変名
- ヤン・デンマン - 齋藤十一と田島一昌がオランダ人を装ってコラムを書くために使った変名
脚注
関連項目