2011年のアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ
2011年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは9月30日に開幕した。アメリカンリーグの第42回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 42nd American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、10月8日から15日にかけて計6試合が開催された。その結果、テキサス・レンジャーズ(西地区)がデトロイト・タイガース(中地区)を4勝2敗で下し、2年連続2回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのはこれが初めて。レンジャーズは、1998年から2001年にかけてのニューヨーク・ヤンキース以来10年ぶりのアメリカンリーグ連覇を成し遂げた[3]。また、ポストシーズンの7戦4勝制シリーズにおいて4勝全てで救援投手が勝利投手となったのは、1997年アメリカンリーグ優勝決定戦のクリーブランド・インディアンスに次いで14年ぶり2球団目である[4]。その4勝のうち第2戦ではネルソン・クルーズが、記録上はポストシーズン史上初となるサヨナラの満塁本塁打を放った[注 1][5]。クルーズはその一打を含め、6試合で打率.364・6本塁打・13打点・OPS 1.713を記録し、シリーズMVPに選出された。しかしレンジャーズは、ワールドシリーズではナショナルリーグ王者セントルイス・カージナルスに3勝4敗で敗れ、初優勝を逃した。
両チームの2011年
10月4日にまずレンジャーズ(西地区優勝)が、そして6日にはタイガース(中地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
レンジャーズは2010年、90勝72敗で地区を制してポストシーズンへ進み、リーグ優勝を果たしたがワールドシリーズで敗れた。オフにはエース左腕クリフ・リーがFAとなったため再契約を目指すも失敗し、補強計画を変更して野手のエイドリアン・ベルトレやマイク・ナポリを獲得した[6]。2011年は開幕6連勝と好調な出だしで、ロサンゼルス・エンゼルスとの地区首位争いを優位に進め、前半戦終了時には51勝41敗で1.0ゲーム差の首位につける。中軸のジョシュ・ハミルトンらが故障により戦線離脱した時期もあったが、マイケル・ヤングがチーム内打率1位・打点2位の活躍で打線を支え、守備でも内野の複数ポジションをこなして他選手の負担を軽減した[7]。救援失敗がかさむ投手陣には7月末のトレードで上原浩治とマイク・アダムスが加わり[8]、8月以降は不振の抑え投手ネフタリ・フェリスも復調した[9]。エンゼルスとのゲーム差は8月17日に7.0まで開き、そこから9月10日には1.5になるなど伸び縮みがあったものの、首位の座は譲らず。同月23日に地区連覇を決めた[10]。平均得点5.28はリーグ3位、防御率3.79はリーグ5位。ベルトレは優れた三塁守備を披露し、ナポリは捕手と一塁をこなしつつ、ともに打率.300前後・30本塁打以上と打撃でも好成績を収めた[6]。投手陣もリーを失いながら防御率が球団史上28年ぶりの高水準となり、特に先発ローテーションでは5人が2桁勝利を挙げた[11]。地区シリーズではタンパベイ・レイズを3勝1敗で下した[12]。
タイガースは、2010年は81勝81敗の地区3位でポストシーズンを逃した。オフの補強では、打線でミゲル・カブレラの後ろを担う5番打者候補にビクター・マルティネスを、救援投手陣で8回を担うセットアッパー候補にホアキン・ベノワを、それぞれ獲得した[13]。2011年は3・4月を12勝15敗と負け越して出遅れるが、その後は巻き返してクリーブランド・インディアンスと地区首位争いを展開し、前半戦終了時には49勝43敗で0.5ゲーム差ながら首位に立つ。ただ、打線ではOPS上位4人と下位4人の平均差がMLB史上最大級に開き[14]、投手陣でも防御率が4.50より良い先発はエースのジャスティン・バーランダー以外にいなかった[15]。そこでチームは、7月末にトレードで先発投手ダグ・フィスターや内野手ウィルソン・ベテミーを加え、8月中旬にもウェイバーを介して外野手デルモン・ヤングを補強した。フィスターは移籍後防御率1点台と好投し、ベテミーやD・ヤングも打線を下支えした[16]。インディアンスとのゲーム差は9月2日からの12連勝で13.5まで広がる。1敗を挟んで同月16日にも勝利し、5年ぶりのポストシーズン出場を地区優勝で決めた[17]。平均得点4.86はリーグ4位、防御率4.04はリーグ7位。バーランダーが投手三冠を総なめにする活躍でチームを牽引し、救援陣もベノワが序盤の不振を脱却してからは安定、最後はホセ・バルベルデがセーブ失敗なしと抑えの重責を果たした[16]。地区シリーズではニューヨーク・ヤンキースを3勝2敗で下した[18]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、レンジャーズがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は9試合対戦し、タイガースが6勝3敗と勝ち越していた[19]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
- ※ 第1戦終了後にオルドニェスが故障のためロースターを外れ、第2戦からはD・ヤングが代わりに登録された。
レンジャーズは地区シリーズのロースターから、捕手のマット・トレーナーを外して救援投手の建山義紀を加えた。主力捕手マイク・ナポリとヨービット・トレアルバはともに右打者であるため、地区シリーズの対戦相手タンパベイ・レイズが左投手を先発させた際に、レンジャーズはどちらかを他のポジションに入れてふたりを同時に起用することができた。しかしタイガースの場合は先発投手が右投手しかおらず、第3捕手のトレーナーをロースター入りさせてまでこうした布陣を組む必要性が薄くなったことから、代わりに投手の層を厚くすることにした[20]。
タイガースは地区シリーズのロースターから、外野手のデルモン・ヤングを外して内野手のダニー・ワースを加えた。D・ヤングは地区シリーズで全5試合に3番・左翼で先発出場し、3本塁打・OPS 1.171を記録したが、最終第5戦の第4打席で左脇腹を痛め、その裏の守備から交代した。彼は同じ箇所をこの年の春先にも痛めていて、そのときは19試合を欠場している[21]。負傷した試合から2日が経った今シリーズ初日の時点でも、打撃練習は行えるものの、記者会見などでしばらく同じ姿勢をとっていると筋肉が強張って腕も上げられなくなる状態だという[22]。
試合結果
2011年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月8日に開幕し、途中に移動日と雨天順延を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月08日(土) |
第1戦 |
デトロイト・タイガース |
2-3 |
テキサス・レンジャーズ |
レンジャーズ・ボールパーク |
|
10月09日(日) |
第2戦 |
雨天順延
|
10月10日(月) |
第2戦 |
デトロイト・タイガース |
3-7x |
テキサス・レンジャーズ
|
10月11日(火) |
第3戦 |
テキサス・レンジャーズ |
2-5 |
デトロイト・タイガース |
コメリカ・パーク
|
10月12日(水) |
第4戦 |
テキサス・レンジャーズ |
7-3 |
デトロイト・タイガース
|
10月13日(木) |
第5戦 |
テキサス・レンジャーズ |
5-7 |
デトロイト・タイガース
|
10月14日(金) |
|
移動日 |
|
10月15日(土) |
第6戦 |
デトロイト・タイガース |
5-15 |
テキサス・レンジャーズ |
レンジャーズ・ボールパーク
|
優勝:テキサス・レンジャーズ(4勝2敗 / 2年連続2度目)
|
第1戦 10月8日
第2戦 10月10日
第3戦 10月11日
第4戦 10月12日
第5戦 10月13日
第6戦 10月15日
脚注
注釈
出典
- ^ Associated Press, "MLB names crew chiefs for LCS," ESPN.com, October 8, 2011. 2021年7月17日閲覧。
- ^ David Waldstein, "Rangers Storm Back Into Another World Series," The New York Times, October 15, 2011. 2021年7月17日閲覧。
- ^ SportsDay Staff, "Columnist: For Rangers, deep bullpen makes Neftali Feliz an afterthought," Dallas News, October 18, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Anthony McCarron, "Nelson Cruz's walk-off grand slam powers Rangers to 7-3 win in ALCS Game 2 over Tigers," New York Daily News, October 11, 2011. 2021年7月17日閲覧。
- ^ a b Associated Press, "With Mike Napoli, Adrian Beltre, Rangers' pair tops loss of ace," Dallas News, October 6, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Richard Durrett, "Reviewing the Rangers at the break," ESPN.com, July 12, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ foxsports, "Rangers get reliever Adams from SD for 2 players," FOX Sports, July 31, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Jean-Jacques Taylor, ESPN Staff Writer, "Neftali Feliz breaks in finishing touch," ESPN.com, October 4, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Associated Press, "Josh Hamilton, Adrian Beltre power Rangers to AL West title," ESPN.com, September 24, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ 小林信行 「30球団の通信簿 テキサス・レンジャーズ 球団史上初めて先発投手5人が2ケタ勝利に到達」 『月刊スラッガー』2011年12月号、日本スポーツ企画出版社、2011年、雑誌15509-12、65頁。
- ^ Reuters Staff, "Big-swinging Beltre powers Rangers past Rays," Reuters, October 5, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Steve Kornacki, "Jim Leyland: Adding Joaquin Benoit, Victor Martinez makes Tigers better in 2011," mlive.com, February 19, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Dan Szymborski, Special to ESPN.com, "Detroit's remarkable top-heavy lineup," ESPN.com, July 5, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Matthew Pouliot, "Tackling the trade deadline: Detroit Tigers," NBC Sports, July 11, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ a b 谷口輝世子 「30球団の通信簿 デトロイト・タイガース 8月以降に38勝16敗の猛スパートで5年ぶりのプレーオフ進出」 『月刊スラッガー』2011年12月号、日本スポーツ企画出版社、2011年、雑誌15509-12、59頁。
- ^ Associated Press, "Tigers top A's, clinch first division title since '87," ESPN.com, September 17, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ Reuters Staff, "Tigers top Yankees, reach Championship Series," Reuters, October 7, 2011. 2023年9月9日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年7月17日閲覧。
- ^ Richard Durrett, "Yoshinori Tateyama in, Matt Treanor out," ESPN.com, October 8, 2011. 2023年8月16日閲覧。
- ^ Associated Press, "Delmon Young (oblique) out of ALCS," ESPN.com, October 8, 2011. 2023年8月16日閲覧。
- ^ Mike DiGiovanna, "Tigers to miss Delmon Young's hot bat," Los Angeles Times, October 8, 2011. 2023年8月16日閲覧。
外部リンク
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ワールドシリーズ優勝(04回) | |
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