アマゾン熱帯雨林
NASA による衛星写真
アマゾン熱帯雨林 (アマゾンねったいうりん、英 : Amazon Rainforest 、西 : Selva Amazónica 、葡 : Floresta Amazônica )とは、南アメリカ大陸 アマゾン川 流域に大きく広がる、世界最大面積を誇る熱帯雨林 である。2019年の大火事 で11%の面積を焼失したとされる。[要出典 ] 森林破壊 が原因と見られる、木が大量に枯死 する等の現象が多発しており、焼き畑 と合わせて二酸化炭素 大量放出の原因になっており問題になっている。このまま減ってしまうと地球温暖化 が進行して海面上昇 等が発生する可能性が指摘されている[1] 。
概説
面積 は約550万km2 [要出典 ] とアマゾン盆地 (約700万km2 [要出典 ] )の大部分を占め、地球上の熱帯雨林の半分に相当する。省略してアマゾン とも呼ばれる。7カ国が含まれ、60%はブラジル にある。
生物多様性 に富み、ブラジル政府は専門の研究機関 である国立アマゾン研究所(ポルトガル語 : Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia 、略称:INPA)を設置している[2] [3] 。
植物 はエネルギーを得るために二酸化炭素 を利用して光合成 を行い、炭素を固定 するとともに酸素 を放出、あるいは呼吸 によって酸素 を消費しているが、アマゾンは二酸化炭素を吸い込んでいる(炭素固定している)量がとても多いため「地球の肺 (lungs of the Earth)」とも呼ばれる[4] 。「地球の酸素の1/3を供給 する」とする説もあるが、これは間違いであり、実際にはアマゾンの熱帯雨林は極相 状態にあり、若い樹木と比べて効率の悪い葉と酸素を大量に消費する巨大に育った幹の存在、有機物 を分解する過程で酸素を消費する土壌の微生物 によって、酸素や二酸化炭素の消費と放出が均衡 しているため、開発によって樹木や土壌に固定された炭素を大気 中に放出しない限りは、大気成分に影響を与えない。この説は、アマゾン研究の第一人者にインタビューを行ったジャーナリスト の勝手な誤解が広まったと言われる[5] 。オックスフォード大学 環境変動研究所のヤドビンダー・マルヒ 教授 の試算では、アマゾン熱帯雨林は陸上で生産される酸素の16%を生産し、同じ量の酸素を消費している[6] 。
ペルー 東部のマヌー国立公園 は1977年に[7] 、エクアドル 東部のヤスニ生物圏保護区 は1989年に[8] 、ベネズエラ 南部のオリノコ川 上流部とカシキアレ川 流域は1993年に[9] 、ブラジル北部のネグロ川 とソリモンエス川 (ポルトガル語版 ) (アマゾン川)流域を含むアマゾン盆地 とギアナ楯状地 の移行地域であるジャウー国立公園 一帯は2001年にそれぞれユネスコ の生物圏保護区 に指定された[10] 。また、ブラジル北西部のマミラウア持続可能な開発保護区 (ポルトガル語版 ) [11] 、ジュルア川 [12] 、ネグロ川 [13] 、アナヴィリャナス国立公園 (ポルトガル語版 ) [14] 、ヴィルアー国立公園 (ポルトガル語版 ) [15] および西部のグアポレ生物保護区 (ポルトガル語版 ) [16] 、コロンビア 南部のイニリダ川 (スペイン語版 ) 沿岸湿地[17] とタラポト湖沼群 (スペイン語版 ) [18] 、エクアドル東部のリモンコチャ生物保護区 (スペイン語版 ) [19] とヤスニ生物圏保護区[20] 、ペルー東部のパカヤ=サミリア国立保護区 (スペイン語版 ) [21] とパスタサ川 (スペイン語版 ) 流域湿地[22] 、ボリビア 北部のヤタ川 (スペイン語版 ) [23] 、マトス川[24] 、ブランコ川 (スペイン語版 ) [25] はラムサール条約 登録地である。
生物
ブラジル、マナウスの熱帯雨林
アマゾン川流域に住むコンゴウインコ
アマゾン熱帯雨林はまっすぐに伸びた豊富な樹種が林立しているにもかかわらず、林床 部が貧弱である特異な特色を持つ。地域により河畔林 、イガポー (ポルトガル語版 ) 、高地林、カンピナラナ (ポルトガル語版 ) 、カンピナ (ポルトガル語版 ) 、バイショやヴァルゼア林 (英語版 ) など様々な種類の森林が分布している[10] [11] 。植物種はトルーバルサムノキ (英語版 ) 、Platymiscium stipulare (スウェーデン語版 ) 、アイスクリームビーン 、Echinochloa polystachya (英語版 ) 、イネ 、ボタンウキクサ 、ホテイアオイ 、Acmanthera latifolia (スウェーデン語版 ) 、アコスミウム (英語版 ) 、アゴナンドラ (英語版 ) 、Aldina heterophylla (スウェーデン語版 ) 、Brosimum potabile (スウェーデン語版 ) 、Calophyllum angulare (スウェーデン語版 ) 、Cariniana micrantha (ポルトガル語版 ) 、Annona nitida (英語版 ) 、アンスリウム 、Spermacoce capitata (スウェーデン語版 ) 、Clusia columnaris (スウェーデン語版 ) 、オオミテングヤシ 、Mauritiella aculeata (英語版 ) 、アマゾンココヤシ (英語版 ) 、Socratea exorrhiza (英語版 ) 、ブラジルナッツ 、パンヤノキ 、Reldia multiflora (英語版 ) 、Nautilocalyx glandulifer (英語版 ) 、Phytelephas tenuicaulis (英語版 ) 、Aphandra natalia (英語版 ) 、アメリカアブラヤシ (英語版 ) などがある[8] [10] [13] [18] [20] [22] 。
哺乳類 としてはミズオポッサム 、ノドチャミユビナマケモノ (英語版 ) 、オオアルマジロ 、ココノオビアルマジロ 、ホエザル 、ケナガクモザル (英語版 ) 、ペルークロクモザル (英語版 ) 、マーモセット 、エンペラータマリン 、フタイロタマリン (英語版 ) 、カピバラ 、パカ 、ハイイロアグーチ (英語版 ) 、キノボリネズミ (英語版 ) 、キンカジュー 、オリンゴ 、ナミチスイコウモリ 、ヒメアメリカフルーツコウモリ (英語版 ) 、ヨツバトゲネズミ (英語版 ) 、ヘンディートゲネズミ (英語版 ) 、アマゾンマナティー 、アマゾンカワイルカ 、コビトイルカ 、ボリビアカワイルカ (英語版 ) 、ジャガー 、オセロット 、アメリカバク 、クチジロペッカリー (英語版 ) 、マザマジカ 、オオカワウソ 、ピューマ 、オオアリクイ 、アカウアカリ (英語版 ) 、マーゲイ など変化に富んだ多数の種類が生息している[7] [8] [12] [13] [14] [16] [18] [23] [25] 。ただし、他地域に比べると大型哺乳類の種類も個体数も少ないという特色がある[26] 。
鳥類 はさらに多く、ミドリコンゴウインコ などのコンゴウインコ 、ユミハシハチドリ (英語版 ) 、エメラルドハチドリ (英語版 ) 、オオハシ 、ホウカンチョウ 、チャバラホウカンチョウ (英語版 ) 、シャクケイ (英語版 ) 、ラッパチョウ (英語版 ) 、ヒメシギダチョウ 、ハシボソシギダチョウ 、オナガヤシアマツバメ (英語版 ) 、タチヨタカ 、ナンベイレンカク 、クビワヤマセミ (英語版 ) 、ハチクイモドキ 、ツバメトビ 、オウギワシ 、ハイムネアリドリ (英語版 ) 、アマサギ 、シンジュトビ (英語版 ) 、ミサゴ 、マキバシギ 、アメリカムナグロ 、コシジロウズラシギ 、ナンベイヒメウ などを代表として、鮮やかな色彩の羽毛を持つ種が多数見られる[8] [13] [17] [23] [24] [25] [26] 。
爬虫類 はクロカイマン 、パラグアイカイマン 、コビトカイマン 、オリノコワニ やアナコンダ 、サンゴヘビモドキ (英語版 ) 、マイマイヘビ (英語版 ) 、キロニウスヘビ (英語版 ) 、アメリカツルヘビ (英語版 ) 、ムスラナ (英語版 ) 、マルガシラツルヘビ (英語版 ) 、ネコメヘビ (英語版 ) 、サンゴヘビ 、ボア・コンストリクター 、エメラルドツリーボア 、アマゾンツリーボア (英語版 ) 、ヤジリハブ 、ブッシュマスター 、サンゴパイプヘビ が一般に知られているが、個体数としてはオオヨコクビガメ (英語版 ) 、オオアタマヨコクビガメ 、ムツコブヨコクビガメ 、モンキヨコクビガメ などのナンベイヨコクビガメ類 が最も多い[8] [12] [18] [25] [26] 。
魚類 はピラニア 、デンキウナギ 、ピラルクー などが良く知られているほか、ショベルノーズキャットフィッシュ 、Pseudoplatystoma metaense (スペイン語版 ) 、Pseudoplatystoma orinocoense (スペイン語版 ) などの500種を超えるナマズ目 が生息している[17] [18] [26] 。
昆虫 は現在でも新種が次々と発見される状況にあるほど豊富である[27] 。しかし、森林伐採 によって生息種が年々減少していっている。
環境破壊
熱帯雨林は1967年 頃に比べて20%消失した[28] 。2006年の国際連合食糧農業機関 (FAO)の報告では、南アメリカ では毎年0.3〜0.4パーセントの森林が失われ[29] 、アマゾンの森林伐採された土地の70%が放牧地 や飼料作物 の生産などの畜産に利用される[30] 。また中国 での中流階級 の台頭と、ヨーロッパ で発生した狂牛病 への対策として畜産飼料が大豆 餌に切り替えられたことによる需要の増大によって、大豆畑も増加している[31] 。このため、2006年には環境保護 団体のグリーンピース(NGO) とマクドナルド などの食品業者が、カーギル社 などの穀物 の主要取引会社に対し、アマゾンの転換畑で生産された大豆を2年間買わないようにとの交渉を行い、合意された[32] 。
世界自然保護基金 (WWF)は、2030年までに、最大でアマゾン熱帯雨林の60%が破壊され、この影響で二酸化炭素の排出量が555億トンから969億トンに増える可能性があることを報告した[4] 。
森林破壊によって木が枯れる現象が多発
森林破壊によって引き起こされたと見られる、木々の枯死 が多発しており問題になっている。[1] また、焼き畑 や枯死が増えると二酸化炭素排出量が一気に増える為、二酸化炭素の排出量の方が多くなり問題である。
アマゾンの森林伐採
1996年に、1992年時と比較して森林伐採が34%増加していることが報告された[33] 。2000年から2005年にかけての5年間(毎年22,392 km²)でそれまでの5年間(毎年19,018 km²)と比較して18%以上伐採量が増えた[34] 。ブラジルではInstituto Nacional de Pesquisas Espaciais (INPE、国立宇宙研究所)によって伐採が調査された。伐採された土地は乾季 に撮影されたランドサット の100〜200枚の画像から調べられた。自然の平原やサバンナ は雨季 の森の損失には含まれない。INPEによると、元々、ブラジルに於けるアマゾンの熱帯雨林は4,100,000 km²だったが2005年には3,403,000 km²まで減少した。17.1%が失われた[35] 。
ブラジル国内のアマゾンの森林面積の推移[36]
年
森林面積(km2 )
年あたりの 減少面積(km2 )
1970年に対する 面積比率
1970年からの 累積減少面積(km2 )
~1970
4,100,000
1970
4,001,600
1977
3,955,870
1985
3,864,945
21,050
1986
3,841,932
21,050
93.7%
258,068
1987
3,817,544
21,050
93.1%
282,456
1988
3,799,476
21,050
92.7%
300,524
1989
3,783,229
17,770
92.3%
316,771
1990
3,796,288
13,730
92.6%
303,712
1991
3,782,368
11,030
92.3%
317,632
1992
3,760,720
13,786
91.7%
339,280
1993
3,746,141
14,896
91.4%
353,859
1994
3,735,463
14,896
91.1%
364,537
1995
3,708,168
29,059
90.4%
391,832
1996
3,678,495
18,161
89.7%
421,505
1997
3,656,208
13,227
89.2%
443,792
1998
3,648,260
17,383
89.0%
451,740
1999
3,618,508
17,259
88.3%
481,492
2000
3,602,205
18,226
87.9%
497,795
2001
3,592,681
18,165
87.6%
507,319
2002
3,574,446
21,651
87.2%
525,554
2003
3,538,765
25,396
86.3%
561,235
2004
3,519,981
27,772
85.9%
580,019
2005
3,501,506
19,014
85.4%
598,494
2006
3,481,143
14,285
84.9%
618,857
2007
3,448,153
11,651
84.1%
651,847
2008
3,451,565
12,911
84.2%
648,435
2009
3,426,846
7,464
83.6%
673,154
2010
3,433,519
7,000
83.7%
666,481
2011
3,432,446
6,418
83.7%
667,554
2012
3,432,170
4,571
83.7%
667,830
2013
3,430,131
5,891
83.7%
669,869
2014
3,420,221
5,012
83.4%
679,779
2015
3,413,662
6,207
83.3%
686,338
2016
3,406,796
7,893
83.1%
693,204
2017
3,399,308
6,947
82.9%
700,692
2018
3,390,835
7,900
82.7%
709,165
2019
9,762
718,927
気候変動に対する反応
Anthropogenic emission of greenhouse gases broken down by sector for the year 2000.
最終氷期最盛期 (英:Last Glacial Maximum、略称:LGM)以降の21000年間の気候変動 による証拠がある。LGMでは現在よりも降雨量 が少なかった事がわかっている。それにより森林も少なかった[37] 。この事には議論の余地がある。降雨量の減少は少なかった森と草原に分かれていたと主張している科学者も存在する[38] 。他の科学者はもっと北よりにあり、今日の様に南と東には広がっていなかったと主張する[39] 。この議論に決着をつけることは困難である。
森林破壊・枯死による二酸化炭素放出源の可能性
2010年2月3日、イギリス リーズ大学 、シェフィールド大学 、ブラジル国立アマゾン環境研究所は、共同研究 を通じて、ブラジル 一帯に及んだ旱魃 がアマゾン一帯の熱帯雨林を二酸化炭素排出源に変えている可能性に言及した。これは2005年に発生した100年に一度とされた旱魃の結果、約190万平方kmの森林がダメージを受け、膨大な量の枯死木が二酸化炭素の吸収量を相殺 してしまう量を排出するという内容である。旱魃は2010年にも2005年を上回る規模で発生しており、今後の気候変動 により旱魃が増加すれば更なる影響が生じることを示唆 している[40] 。
アマゾン熱帯雨林に住む生き物の画像
脚注
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参考文献
関連項目
原因
影響 各地の森林破壊 対策
森林の種類 その他
カテゴリ