サッカークロアチア代表 (サッカークロアチアだいひょう、クロアチア語 : Hrvatska nogometna reprezentacija )は、クロアチアサッカー連盟 (HNS)によって編成されるクロアチア のサッカー のナショナルチーム である。
愛称のヴァトレニ は、クロアチア語 で炎の男の意味。ユニフォームはクロアチアの国旗 ・国章 に使用されている紅白の市松模様 を基調とする。
歴史
前史
クロアチアはナチス・ドイツ の支援の下、1939年 から1945年 にかけてクロアチア独立国 としてユーゴスラビア王国 を解体し独立した政権を樹立していた。1940年4月2日にザグレブでスイス と対戦し、4-0で勝利したという記録が残っている。
クロアチアはこの後、ドイツ 、イタリア 、ハンガリー 、ルーマニア 、独立スロバキア などヨーロッパの枢軸国 若しくはその傀儡国家 と親善試合を行っており、1944年までその数は19を数える。また、ユーゴスラビア成立後の1956年にクロアチア選抜が結成された記録が残っている。
代表チームの結成
クロアチアは、1991年にユーゴスラビア 連邦から離脱する以前はユーゴスラビア連邦の一共和国であり、ナショナルチームはユーゴスラビア代表 に属していた。ただし、ユーゴスラビア代表は1980年代中頃からチームとして崩壊に向かっており、クロアチア出身の選手に対してユーゴスラビア代表に加わらないよう政治的圧力がかけられる事がしばしばあった。
こうした状況の中で1990年のワールドカップ 直後にクロアチア代表が編成され、首都ザグレブ にアメリカ合衆国代表 を招いてクロアチア代表初となる国際試合が開かれた。この時点でクロアチアは独立していなかったが、連邦からの離脱はほぼ既定路線であった。翌年6月にクロアチアはスロベニアと共にユーゴスラビアから独立するが、ワールドカップ終了後に始まったユーロ92予選にはクロアチア、スロベニア出身の選手は参加していなかった。独立して初のビッグトーナメント参加となったUEFA EURO '96 では予選でイタリア に1勝1分で凌ぐなど健闘し一位突破を果たすと、本大会でも8強入りを果たす。
特筆すべきは、1998年のフランス大会 での活躍である。欧州予選ではグループ最終戦の開始時点で自力でのプレーオフ進出すら不可能な状況に追い込まれたが、アウェイでスロベニア に勝利する。同時進行のアテネ でのギリシャ 対デンマーク はギリシャが勝利すれば予選を一位突破し、デンマークがプレーオフに回るという試合だったが0-0の引分でデンマークが一位突破を決め、ギリシャが三位で敗退しプレーオフ進出が転がり込んだ。そこでもウクライナ を2試合合計3-1で破り、ワールドカップ初出場を決めた。
本大会ではグループリーグでアルゼンチン 以外の日本 、ジャマイカ と共に3チームがワールドカップ初出場と言う特異なグループに入るが、アルゼンチンには敗れたものの、ジャマイカ、日本を破り2位でグループリーグを通過、決勝トーナメントに進出した。決勝トーナメントでは一回戦でルーマニア を破り、UEFA EURO '96 と同じくドイツ との対戦となった準々決勝でも3-0で勝利した。準決勝でこの大会の優勝国となるフランス と対戦。1-2で逆転負けしたものの、3位決定戦ではオランダ を2-1で破って3位入りを果たした[注釈 1] 。この大会で6点を挙げたダヴォール・シューケル が得点王に輝いた。
日韓W杯以降はチームの高齢化などによってしばらく停滞していた時期もあったが、ルカ・モドリッチ 、マリオ・マンジュキッチ 、イヴァン・ラキティッチ 、ニコ・クラニチャール 、エドゥアルド・ダ・シルバ ら次世代の若手選手が台頭した。EURO2008 予選ではホームとアウェーでイングランド に2連勝し、本戦ではドイツに勝ち決勝トーナメントに進出。準々決勝のトルコ 戦は延長終了間際に先制したが直後に追いつかれ、大会無敗のままPK戦で涙をのんだ。その後のFIFAランキングは急上昇し、最高で5位まで上がっている。
2010年FIFAワールドカップ予選は主力選手の怪我やイングランド、ウクライナ 等の強豪国と同グループになったことから予選3位で終わり、初の予選敗退を喫した。3大会連続出場となったUEFA EURO 2012 ではグループリーグで敗退した。
2014FIFAワールドカップ予選 ではグループ2位でプレーオフに進出し、アイスランド を1勝1分けで破り2大会ぶりの本大会出場を決めた。2014 FIFAワールドカップ 本大会ではカメルーンには勝利したものの、ブラジルとメキシコに敗れグループリーグ敗退となった。4大会連続出場となったUEFA EURO 2016 ではグループリーグでスペイン に勝利しグループリーグ首位通過でベスト16へと進出したが、ポルトガル と対戦して敗れた。
2018年ロシアW杯
2018年ロシアW杯 ・準決勝でのクロアチア代表とサポーター
2018 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 では予選敗退の危機に就任したズラトコ・ダリッチ 監督がチームを再生させ、プレーオフでギリシャ を破り本大会出場を決めた。本大会ではアルゼンチン に3-0で快勝するなど、3戦全勝でグループD を首位で通過した。決勝トーナメントは1回戦のデンマーク 、準々決勝のロシア 、準決勝のイングランド戦のいずれも先制されながら同点に追いつき、3戦連続延長戦(うち2戦がPK戦決着)を勝ち抜いて旧ユーゴスラビアから通しても初めての決勝進出を果たした。
決勝戦は20年前の準決勝で敗れたフランスと対戦し、再び2-4で敗れたもののワールドカップ準優勝という成績を残した。なお、この試合でフランスの先制点となったマリオ・マンジュキッチ のオウンゴール は、ワールドカップ・決勝戦史上初のオウンゴール、かつワールドカップ 史上初の双方シュート0本で得点が決まった事例であった[1] 。大会終了後、キャプテンとしてチームを牽引してきたモドリッチがゴールデンボール(最優秀選手)を獲得している。
2022年カタールW杯
2022 FIFAワールドカップ ではグループF に入り、モロッコ 、カナダ 、前回大会 3位のベルギー と同じ組に入った。初戦のモロッコ戦では前半こそビルドアップを活性化させ、チャンスも作りながらボールを支配して試合を進めるが、後半は相手の積極的なプレスに苦しみ、チャンスをほとんど作れないままスコアレスで初戦は勝点1を得るにとどまる。第2戦のカナダ戦は試合開始わずか2分でアルフォンソ・デイヴィス に先制ゴールを奪われたが、前半のうちに逆転し最終的に4-1で勝利した。第3戦は前回大会3位のベルギーと対戦。開始から試合の主導権を握り、サイド攻撃を中心にチャンスを創出。ボール非保持の際は前からの守備と自陣で中央を固めるディフェンスを使い分けてゲームを進め、スコアレスで前半を終える。だが後半に入るとベルギーのエース・ロメル・ルカク が後半の頭に投入されたことで攻め込まれ続ける展開に。それでも相手の猛攻を最後まで耐え凌ぎ1勝2分の2位でグループリーグを2位で通過した。
決勝トーナメント1回戦では初の8強入りを狙う日本 と対戦。開始からボールを保持し続け決定的なシーンを何度も作り続けるが、権田修一 を中心としたディフェンス陣に苦しみ得点を奪えない。前半終了間際にはCKの流れから前田大然 のゴールで先制点を奪われ1点ビハインドで前半を終える。後半は徐々に相手を押し込む時間を増やし、55分にイヴァン・ペリシッチ が同点ゴールを奪う。同点にした後も攻撃陣の勢いは止まらず、逆転弾を目指したものの、90分では逆転弾を奪えずに試合は延長戦へ。その延長戦でも決着はつかずにPK戦にもつれ込む。そのPK戦ではドミニク・リヴァコヴィッチ が3本のシュートを止め、最後は4人目のマリオ・パシャリッチ が決めたところで決着がつき、2大会連続の準々決勝進出を決めた。
準々決勝のブラジル 戦も90分戦ってスコアレスで延長戦に突入する。延長前半終了間際にネイマール のゴールで先制点を奪われるも、延長後半終了間際にブルーノ・ペトコヴィッチ のゴールで同点に追いつき、試合は2試合連続のPK戦へ。そのPK戦では4人全員がPKを成功させると、ブラジルの1人目ロドリゴ のPKをドミニク・リヴァコヴィッチが止め、最後は4人目のマルキーニョス のPKがゴール左ポストにはじかれたところで決着がつき、ベスト4入りを果たす[2] 。だが、2大会連続の決勝進出がかかった準決勝・アルゼンチン 戦ではリオネル・メッシ に先制ゴールを奪われるとフリアン・アルバレス にも2ゴールを決められて0-3で敗れ、2大会連続の決勝進出はならなかった。グループリーグ初戦の再戦となった3位決定戦のモロッコ戦では前半にヨシュコ・グヴァルディオル とミスラフ・オルシッチ のゴールで2点を奪って2-1で勝利し3位の成績を収めた[3] 。
UEFA EURO 2024
UEFA EURO 2024 ではグループB に入り、初戦でスペイン 、第2戦でアルバニア 、最終戦でイタリア と同居する「死の組」に組み分けされた。初戦でスペインに0-3で敗れると、第2戦のアルバニア戦でも前半11分に先制点を献上し、後半に2点を奪って一時は逆転するも、終了間際にクラウス・ギャスラ のゴールで追いつかれて目前で勝点3をとりこぼすこととなった。勝利しなければグループステージ敗退が濃厚となる第3戦のイタリア戦では、55分にルカ・モドリッチ のゴールで先制したが、終了間際にマッティア・ザッカーニ のゴールで追いつかれ、2試合続けて終了目前で同点にされて3位に転落した。この時点では突破の可能性が僅かに残っていたが、翌日スロベニアがイングランドと引き分けたことで各組3位チームの成績5位以下が確定。正式にグループリーグ敗退が決定した[4] 。
ユニフォームの変遷
成績
FIFAワールドカップ
FIFAワールドカップ
FIFAワールドカップ・予選
開催国 / 年
成績
試
勝
分
負
得
失
試
勝
分
負
得
失
1994
FIFA未加盟
FIFA未加盟
1998
3位
7
5
0
2
11
5
10
5
4
1
20
13
2002
グループリーグ敗退
3
1
0
2
2
3
8
5
3
0
15
2
2006
3
0
2
1
2
3
10
7
3
0
21
5
2010
予選敗退
10
6
2
2
19
13
2014
グループリーグ敗退
3
1
0
2
6
6
12
6
3
3
14
9
2018
準優勝
7
4
2
1
14
9
12
7
3
2
19
5
2022
3位
7
2
4
1
8
7
10
7
2
1
21
4
通算
最高成績 : 準優勝 22大会中/6回出場
30
13
8
9
43
33
72
43
20
9
129
51
UEFA欧州選手権
UEFA欧州選手権
UEFA欧州選手権 予選
開催国 / 年
成績
試
勝
分
負
得
失
試
勝
分
負
得
失
1996
ベスト8
4
2
0
2
5
5
10
7
2
1
22
5
2000
予選敗退
8
4
3
1
13
9
2004
グループリーグ敗退
3
0
2
1
4
6
10
6
2
2
14
5
2008
ベスト8
4
3
1
0
5
2
12
9
2
1
28
8
2012
グループリーグ敗退
3
1
1
1
4
3
12
8
2
2
21
7
2016
ベスト16
4
2
1
1
5
4
10
6
3
1
20
5
2021
4
1
1
2
7
8
8
5
2
1
17
7
2024
グループリーグ敗退
3
0
2
1
3
6
8
5
1
2
13
4
通算
最高成績 : ベスト8 (2回) 17大会中/7回出場
25
9
8
8
33
34
78
50
17
11
148
50
歴代監督
現招集メンバー
2022年11月9日、2022 FIFAワールドカップ に臨むクロアチア代表のメンバー26人が発表された[5] [6] 。
歴代選手
主要大会のメンバー
主な代表選手
歴代記録
出場数ランキング
最多出場者であるルカ・モドリッチ
2024年 7月10日 時点
水色は現役代表選手
得点数ランキング
最多得点者であるダヴォール・シューケル
2024年 7月10日 時点
水色は現役代表選手
脚注
注釈
^ フランスはこの大会で通算2失点(ワールドカップ記録)で、そのうちの1点がクロアチアから失点したものである。また、その1分後にフランスが同点ゴールを挙げるが、この大会でフランスが相手にリードを許したのはこの1分間だけである。
出典
関連項目
外部リンク
各列内は五十音順。* UEFA加盟およびFIFA 未加盟 現存 廃止