セム諸語の分布
セム族 (セムぞく、英 : Semites )は、セム系の言語 を継承してきた民族の総称である[ 1] 。中東 、西アジア や北アフリカ 、アラビア半島 に分布する古代・現代のさまざまなセム語の民族を指し、アッカド 人、古代アッシリア 人、バビロニア 人、エブラ 人、ウガリット 人、カナン 人、フェニキア 人(カルタゴ人を含む)、ヘブライ人 、ユダヤ人 、サマリア人 、アラム人 、カルデア 人、アムル人 、モアブ 人、エドム 人、ヒクソス 、ナバタイ人 、サバ人 、マルタ 人、マンダ教徒 、サービア教徒 、シリア 人、アマレク人 、アラブ人 、アッシリア人 、パルミラ 人、ケダル人 (英語版 ) などを含む。
名称
セムという名称は当初、アウグスト・ルートヴィヒ・フォン・シュレーツァー がヨーハン・ゴットフリート・アイヒホルン (英語版 ) の "Repertorium"(1781年 )において、ヘブライ語に関連する語群を指す用語として提起したものであった[ 2] 。アイヒホルンを通じてこの名称は一般的に使用されるようになった[ * 1] 。以来、セム語の話者の集団のみならず、明らかにセム人にルーツがあるとみられる人々や、歴史の中で完全にセム化したと考えられる民族集団もいくぶん広い意味でセム人に含めることもあった[ 3] 。
形容詞 Semitic (セム語の-、セム人の-)[ 4] は、聖書 におけるノア の3人の息子の1人であるシェム [ 5] 、より正確には、その名のギリシア的 派生語すなわち Σημ (セーム)から来ており、人を指す名詞形が Semite すなわち「セム人」である。
セム語族
セムという名称は比較言語学 において語族 名に転用され、セム語族(英 : Semitic Language Family )という用語が生まれた。その上位にはセム・ハム語族 (Semito-Hamitic) ないしハム・セム語族 (Hamito-Semitic)、後にはアフロ・アジア語族 (Afro-Asiatic) が立てられ[ 6] 、セム諸語(英 : Semitic Languages )はその下位グループとされた。今日では Semitic をセム語派 と翻訳することもあるが、セム語族という呼称も用いられる[ 7] [ 8] [ * 2] 。
言語学 と民族学 において、「セム」語(「名」と翻訳される聖書 の「シェム」〔ヘブライ語 : שם 、アラビア語 では ساميّ 〕に由来)という言葉は、主として中東 に起源がある言語グループを指す用語であった。この語群には、アッカド語 (アッシリア語とバビロニア語)、アムハラ語 、アムル語 (英語版 ) 、アラビア語 、アラム語 /シリア語 、カナン語群 /フェニキア語 、カルデア現代アラム語 、エブラ語 、エドム語 (英語版 ) 、ゲエズ語 、ヘブライ語 、マルタ語 、マンダ語 、モアブ語 、ティグレ語 とティグリニャ語 、ウガリット語 などが挙げられる。
反セム主義
反セム主義 (anti-Semitism, antisemitism) という語は、その文字通りの意味ではなく、反ユダヤ主義 に限って使われる[ 9] 。例えば反アラブ主義 (英語版 ) がそう呼ばれることはないばかりか、「アラブ人の反セム主義」のようにセム族同士の関係に対し使われることすらある。
19世紀にエルネスト・ルナン やヴィルヘルム・マルなどによってセム族とアーリア族 が対比され、反ユダヤ主義 を「反セム主義」とする用語も定着した。
脚注
注釈
^ アイヒホルンの "Einleitung in das Alte Testament" (Leipzig, 1787), I, p. 45 を参照せよ。アイヒホルンの "Geschichte der neuen Sprachenkunde", pt. I (ゲッチンゲン、1807年)ではすでに定着した術語となっていた
^ 言語の親族関係における最も大きなまとまりを語族 (family) とし、その下位分類単位を語派 (branch) とする。
出典
関連項目