ヨハネス・ゲンスフライシュ・ツア・ラーデン・ツム・グーテンベルク(ドイツ語: Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg、1398年[1]頃 - 1468年2月3日)は、ドイツ出身の金細工師、印刷業者である。印刷に改良を加えた活版印刷技術の発明者といわれ、広く知られている。
ヴァラウはさらに「彼の姓は父や先祖が住んでいた家 'zu Laden'、'zu Gutenberg' に由来する。ゲンスフライシュの家系を遡れば、13世紀にはマインツの貴族だった」と記している[10]。マインツの貴族はしばしば所有する家にちなんで名付けられた。1427年頃、一家の住む家 zu Gutenberg にちなんだ姓「ツム・グーテンベルク」が初めて記録されている[8]。13世紀以降、グーテンベルク一族は冶金業と商業に従事していた。父母の間には長男フリーレ(後に市参事会員)、長女エルゼが生まれ、次男として生まれたのがヨハネスであった(グーテンベルクの人生についてはほとんど知られていなかったが、19世紀にアロイス・キュッペル(Aloys Küppel)博士が初めて本格的な研究を行い、以降、教会や市の記録をもとにしてグーテンベルク一族の研究が進められた。)。
当時のマインツでは市民と貴族の間で争いが繰り返されていた。その煽りでグーテンベルク一家は1411年以降、他の貴族たちと同じように、何度もマインツを離れて母が相続した地所を持っていたエルトヴィレ・アム・ラインへ逃れることを余儀なくされた。ヴァラウは「彼の若い頃について判っていることは、彼が1430年にはマインツにいなかったということだけである。彼の一家と何らかの繋がりがあったと思われるシュトラースブルクに政治的理由から移住していたと推定される」と記している[10]。その頃、ヨハネスがエルフルト大学に学んだ可能性もあり、1418年の在籍者として Johannes de Altavilla という名前が記録にあり、Altavilla とはラテン語でエルトヴィレ・アム・ライン(de:Eltville am Rhein)を意味する[11][12]。
1444年まではシュトラースブルクに住んでいた。1440年、シュトラースブルクで自身の研究に基づく印刷術を完成させ、 Kunst und Aventur(アートと事業)と題してその秘密を公開したと言われている。彼がどういうことをやっていたのか、既に活字を使った印刷を試していたのかは定かではない。その後、記録には4年間の空白がある。1448年、マインツに戻ると義理の兄から借金しており、印刷機などの機器をそろえる資金にしたと見られる。そのころまでに凹版印刷に精通していた可能性がある。トランプ・カードの画家(英語版)と呼ばれる銅版画家と仕事をしていたという説もある[18]。
1499年に印刷された『ケルン年代記』(Cronica van der hilliger Stat Coellen)は「印刷術はマインツで発明され、1444年頃ケルンに伝えられた。印刷術の発明者はヨハン・グーテンベルクと呼ばれた」と書いているが、同時に「印刷技術の原型はオランダからドイツに伝えられた」とも書いていることから、一時期印刷技術はオランダから始まったという説がさかんに唱えられた(ただし、この本では後述するコスターの名は出てこない[24][32])。グーテンベルクは印刷事業では成功しなかったことから彼の名前が忘れられ、ヨハン・フストとペーター・シェッファーが印刷術の創始者と考えられたこともあったが、シェッファーの息子ヨハンは自ら印刷したリウィウスの『ローマ史』に献呈の辞として印刷術の発明者はシェッファーではなくグーテンベルクであることを明記している。
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^広く重視されていることの概要は People of the Millenium を参照。1999年、A&Eネットワークが選定した「紀元1000年代の人」ランキングで1位に選ばれている。1997年、Time-Life誌は「紀元1000年代で最も重要な発明」にグーテンベルクの発明を選んだ“アーカイブされたコピー”. 2010年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年3月14日閲覧。。1998年、アメリカの著名なジャーナリスト4人がこの1000年間を形作った人々1000人を選び、同様にグーテンベルクを1位としている[1]。カトリック百科事典の Johann Gutenberg の項目では、彼の発明がキリスト教世界に比類ない文化的衝撃を与えたとしている。
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