三宅 由佳莉(みやけ ゆかり、1986年12月14日[3] - )は海上自衛官(2等海曹)で、自衛隊初の専業歌手として声楽採用されたヴォーカリスト(ソプラノ)[2][4][5][6]。クラシックからアニメのテーマソングまで、ジャンルにとらわれない歌声は多くの支持を集めている[7][8]。
現在は防衛大臣直轄部隊である海上自衛隊東京音楽隊に配属。
来歴
岡山県倉敷市出身[1][9]。岡山県立岡山城東高等学校普通科音楽系、日本大学芸術学部音楽学科声楽コースを卒業[10][映像 1]。声楽を渡邊馨・山田美保子に師事[10]。
2009年4月に海上自衛隊に入隊。約5か月間の自衛隊の基礎訓練の後、同年9月に東京音楽隊に海上自衛隊初のヴォーカリスト(ソプラノ)として配属され[注 1]、全自衛官でただ1人の専属の「歌手」となった[11][12][13]。[注 2]
2011年末頃、例年日本武道館で開催される自衛隊最大の音楽イベントである「自衛隊音楽まつり」の様子が「ニコニコ動画」にアップされると、「歌がうますぎる」「綺麗」「カッコイイ」などと話題になり、その後も東日本大震災の被災地や、高校の吹奏楽部などを訪ねる姿が、フジテレビ系列『FNNスーパーニュース』やNHK『おはよう日本』などの報道・情報番組、読売新聞「顔」のコラムコーナーなどに取り上げられ認知が広がった[14]。また、歌唱する動画がYouTubeにアップされるや再生回数30万回を突破するなど[15][16]、数々のメディアに“美しすぎる自衛官”“海上自衛隊初の歌姫”などと取り上げられ、2013年には自衛官としては異例のメジャー・レーベルからのソロ・デビューに至り[14][16]、同年8月発売のアルバム 『祈り~未来への歌声』が「第55回日本レコード大賞企画賞」、「第28回日本ゴールドディスク大賞クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」、「第6回CDショップ大賞クラシック賞」の3賞を受賞するなど、その評判が社会現象にまでなった[17][18][19]。[注 2]
これまでにパリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団(パリ共和国親衛隊音楽隊)、仙台フィルハーモニー管弦楽団、ニュージーランド出身の女性歌手ヘイリー(Hayley Westenra)と共演[10]、2度の国際軍楽祭に参加。[注 2]
入隊後の足跡
人物・エピソード
歌の好きな子どもだった。小さな体で祖母に寄り添いながら、歌集を開いて童謡を毎日のように一緒に歌った[69]。小学校5年のときに同級生に誘われて児童合唱団に通い始め、その後高校2年生まで在籍[70]。その他に中学生のときにはバスケットボール部、高校生のときにはダンス部にも入部(チアリーダーにも所属[27])していた[71]。中学の頃は宝塚歌劇団が好きで、姿月あさとのビデオをよく観ていた[13][15]。
ミュージカル俳優を志していたので日本大学入学後はミュージカル研究会に入ろうと思っていたが、これまでに経験のないことをしたいという思いもありいろいろな部活を見学。空手部で見た女性の“型”の姿が非常に格好良く映り空手部に入部した[71]。在学中の2007年に全国大会(平成19年度全日本空手道剛柔会全国大会 女子段外 型の部)で優勝した[72]。性格は「天真爛漫で負けず嫌い」[2]。
大学卒業前に大手百貨店への就職が内定していたが、恩師・渡辺馨から海上自衛隊が歌手(ヴォーカリスト)を募集しているので受けてみるよう勧められた[映像 1]。当初受ける気はなかったが断れず説明会に参加、東京音楽隊の具体的な活動を聞いてから意識が変わり[69]、自衛隊が初めて設けた声楽採用枠(1人)に合格して2009年4月、海上自衛隊に入隊した[4][13][15]。
音楽隊ではクラシックだけでなく、オペラや演歌、J-POP、アニメソングなど幅広いジャンルの曲を歌っていく必要があり、各曲に相応しい歌い方をマスターできず悶々としていた。何度も失敗を重ね、その度に自分の無能さを思い知った。また、「自衛隊の歌姫」としての前例がないため、初めの頃は歌う機会自体も少なかった。同期の奏者が様々な場に参加している間、三宅は電話番や事務仕事をしていることが多く、「きょう一日何をやったんだろう」と虚無感が押し寄せてくる日も多々あった。隊員の一員として役立てない自分が悔しく、3年ほどは歯がゆさを感じ続けていた[73]。
ブレイク前の2011年11月27日・12月4日深夜放送のSMAPの番組『ベビスマ』に出演。SMAPのメンバーが女性出演者と合コンをして女性の職業を当てるという企画で、東京業務隊の隊員と補給本部の隊員と三宅の3人が私服で出演した。三宅は自己紹介で空手の板割りと童謡『赤とんぼ』を披露し、中居正広から「紅白出られる」と褒められ、草彅剛からは「アンジェラ・アキもびっくり」と言われた[74][75]。実際に、2013年大晦日のNHK紅白歌合戦に自衛官として初出場になるのではないかと話題になったがエントリーされなかった[76]。
2016年1月5日、出身地の岡山県から県の情報発信やイメージアップ、魅力ある岡山県づくりについてアドバイスを行う「おかやま晴れの国大使」に任命された[1][77][78]。
2018年5月31日に行われた全海上自衛隊空手道選手権大会、形個人戦女子有段の部で第1位。同年6月2日に日本武道館で開催された第55回全自衛隊空手道選手権大会、形試合女子個人戦では第2位の成績を収めた[79]。
2019年、空手三段に昇段(全日本空手道剛柔会)[80]。
2020年、おかやま晴れの国大使として岡山後楽園の閉園アナウンスを担当(録音放送)[81][82]。
自衛隊音楽隊における声楽歌手の拡充
三宅の好評を受けて2014年、海上自衛隊にさらに1名(横須賀音楽隊-中川麻梨子)、陸上自衛隊に2名(中央音楽隊-松永美智子[注 13]、中部方面音楽隊-鶫真衣)の専任歌手が配置され[17]、2017年には航空自衛隊も1名、ピアノ兼任の歌手(航空中央音楽隊-森田早貴)を配置した[83]。いずれも音楽大学で声楽を専攻した女性で、陸上自衛隊では“声楽要員”の表記が用いられ[84][85]、一般的にはそれぞれの隊の“歌姫”の呼称で親しまれるようになった。
2021年、海上自衛隊が男声(大学で声楽を専攻した男性 )の技術海曹を募集し[86]、12月に橋本晃作(テノール)が東京音楽隊に初の男性ヴォーカリストとして配属された[87][88]。
2022年、陸上自衛隊が7年ぶりに歌手を募集し、10月に西部方面音楽隊初のソプラノ歌手として東京芸術大学(声楽科)卒業の水上珠奈が配属された[89][映像 22]。
受賞
ディスコグラフィ
(discography)
シングル/フィーチャリング・アルバム
シングル及び‘’ヴォーカル(ソプラノ)三宅由佳莉‘’をフィーチャーしたアルバム。
ユニバーサルミュージック
- 2013年7月17日発売、配信シングル『祈り~A PRAYER(PIANO VERSION)』三宅由佳莉(海上自衛隊東京音楽隊所属)
[出典:[90]]
ブレーンミュージック
- 2016年7月15日発売、アルバムCD『われら海の子』海上自衛隊東京音楽隊[91]
参加(出演・コラボ)作品
三宅がレコーディングに参加、または出演したステージを収録した作品、及び他のアーティストとのコラボレーションによる歌唱を収録した作品(〇番号はトラック(track)番号)。
- 2013年5月17日発売、CD、DVD-R『21世紀の吹奏楽「響宴XVI」新作邦人作品集』(ブレーンミュージック)[92]
- DISC2 ‐⑨『嵯峨野〜ソプラノと吹奏楽のために〜[映像 24]』(演奏:航空自衛隊航空中央音楽隊、指揮:2等空佐 水科克夫)
- 2013年12月21日発売、海上自衛隊横須賀音楽隊のアルバムCD『海上自衛隊音楽隊委嘱作品集「ヨコスカの海と風」』(CAFUAレコード)[93]
- ⑬『嵯峨野 ~ソプラノと吹奏楽のために~より3楽章 川のほとり』
- 2014年3月26日発売、ヘイリーのベスト・アルバム『アメイジング・グレイス〜祈り ヘイリー・グレイテスト・ヒッツ』(デッカ / ユニバーサルミュージック合同会社)[94][95]
- CD - ⑯(ボーナストラック)、限定盤付属DVD(ミュージック・ビデオ) - ①『祈り~a prayer(duet version)』ヘイリー&三宅由佳莉(海上自衛隊東京音楽隊)
V.A.アルバム
Various Artistsアルバム(〇番号はトラック(track)番号)。
- 2013年12月25日発売、『クラシカル・ナウ2014』(EMI CLASSIC / ユニバーサルミュージック合同会社)[101]
- CD1 ‐ ①『祈り~a prayer (edit version)』
- 2014年2月5日発売、『祈り~心を癒す優しい歌ベスト』(UNIVERSAL CLASSICS & JAZZ / Universal Music LLC)[注 19]
- ①『祈り~a prayer (piano version)』
- 2014年5月14日発売、『麗しの歌 クラシック編』(UNIVERSAL CLASSICS & JAZZ / ユニバーサルミュージック合同会社)[102]
- 2014年12月10日発売、『癒しの歌姫』(ユニバーサル・ミュージック)[103]
- 2014年12月17日発売、『決定盤! フィギュアスケート・ベスト 2014 - 2015』(ユニバーサル・ミュージック)[104]
- ⑧『夢やぶれて(ミュージカル『レ・ミゼラブル』から)』
- 2015年1月7日発売、『決定盤!ベスト・オブ・ミュージカル』(ユニバーサル・ミュージック)[105]
- 2019年5月1日発売、『GREATEST DIVA -CLASSIC-』(Universal Music)[54]
- DISC1 ‐ ⑪『祈り~a prayer (full version)』
- DISC2 ‐ ⑪『希望』[注 10]
- 2020年4月より順次発売、『昭和の名曲カバー集「SONGS FOREVER 歌い継ぎたい日本の名曲」』(ユニバーサルミュージック / 燈音舎(音楽のある風景))[106]
脚注
注)自衛官の姓名・階級・所属部隊はすべて当時のもの。
注釈
出典
映像
- ^ a b (日本語) 三宅由佳莉(海上自衛隊音楽隊・歌手/音楽学科)【100周年記念Interview(卒業生)】, https://www.youtube.com/watch?v=huHyHbNt0HY 2022年12月20日閲覧。
- ^ “H21 自衛隊音楽まつり [11/21 ◆ 童神 (独唱) - YouTube]”. www.youtube.com. 2021年1月15日閲覧。
- ^ 河邊一彦 (2015-04-14), 【フォスターミュージック レンタル譜】嵯峨野 〜ソプラノと吹奏楽のために〜, https://www.youtube.com/watch?v=Z4hE1yxj1Kg 2024年7月5日閲覧。
- ^ “【音楽】海上自衛隊 東京音楽隊ノルウェー ミリタリー・タトゥー2014参加記録 - YouTube”. www.youtube.com. 2021年1月15日閲覧。
- ^ 防衛省・自衛隊60周年記念航空観閲式 - youtube(航空自衛隊チャンネル) - 1:30’45”~1:32’50”
- ^ (日本語) 【自衛隊観艦式】 平成27年度 自衛隊観艦式 体験航海応募PR映像 ~海上自衛隊~, https://www.youtube.com/watch?v=5-O3UKKVZe0 2021年2月12日閲覧。
- ^ (日本語) 【自衛隊観艦式】 平成27年度 自衛隊観艦式 フォトコンテスト応募PR映像 ~海上自衛隊~, https://www.youtube.com/watch?v=ycfKNp0JGtM 2021年2月12日閲覧。
- ^ “【自衛隊観艦式】「教えて観艦式」~海上自衛隊~ - YouTube”. www.youtube.com. 2021年2月12日閲覧。
- ^ “海上自衛隊「観艦式」を三宅由佳莉3等海曹が解説 - 動画 Dailymotion”. Dailymotion (2015年9月9日). 2022年2月2日閲覧。
- ^ “【音楽】海上自衛隊 東京音楽隊 バーゼル・タトゥー2016 参加記録 - YouTube”. www.youtube.com. 2021年1月15日閲覧。
- ^ “平成30年版防衛白書概要説明動画 - YouTube”. www.youtube.com. 2021年2月12日閲覧。
- ^ 三宅由佳莉「南風が吹いたら」海上自衛隊横須賀音楽隊(ピアノバージョン)
- ^ 三宅由佳莉「南風が吹いたら」海上自衛隊横須賀音楽隊(吹奏楽バージョン)
- ^ 三宅由佳莉「南風が吹いたら」海上自衛隊横須賀音楽隊(制作:ジェイワークス)
- ^ (日本語) 【音楽】横須賀音楽隊 演奏動画 日本応援メッセージ第2弾「南風が吹いたら」, https://www.youtube.com/watch?v=6KVYny5tckA 2022年3月8日閲覧。
- ^ (日本語) 【海上自衛隊の本気】「竈門炭治郎のうた」椎名豪 featuring 中川奈美 (cover) 三宅由佳莉&中川麻梨子│「鬼滅の刃」挿入歌, https://www.youtube.com/watch?v=Xp16xkc_Nmc 2022年1月20日閲覧。
- ^ (日本語) 【自衛隊×鬼滅の刃】海上自衛隊の歌姫がガチ熱唱!, https://www.youtube.com/watch?v=smiLY_K0HsM&list=RDsmiLY_K0HsM&index=1 2022年1月20日閲覧。
- ^ (日本語) 【自衛隊×エヴァンゲリオン】海自2人の歌姫が奇跡のコラボ!, https://www.youtube.com/watch?v=Ms6wchVjBsg&list=RDsmiLY_K0HsM&index=2 2022年1月20日閲覧。
- ^ 防衛省統合幕僚監部 (2022-06-21), 【パシフィック・パートナーシップ2022】6月20日 オープニングセレモニー 三宅2曹, https://www.youtube.com/watch?v=HkiW6xLShK4 2024年7月2日閲覧。
- ^ (日本語) 『令和4年度自衛隊音楽まつり』Live DVD/Blu-ray風, https://www.youtube.com/watch?v=cfSoBgNiD0A 2022年12月19日閲覧。
- ^ 防衛省統合幕僚監部 (2024-03-31), 【パシフィック・パートナーシップ2024】自衛隊の活動内容まとめ~パプアニューギニア編~, https://www.youtube.com/watch?v=yju1BWLDxaU 2024年7月2日閲覧。
- ^ (日本語) 陸自西部方面音楽隊初のソプラノ歌手, https://www.youtube.com/watch?v=wtQ7-ehUshs 2022年12月19日閲覧。
- ^ 2014年10月8日、SS-507じんりゅうの命名・進水式で右胸に第3級防衛功労章を装着して国歌独唱を行う三宅由佳莉3等海曹。左胸には第7号防衛記念章が確認できる。【命名・進水式】海上自衛隊潜水艦「じんりゅう」
- ^ “嵯峨野 〜ソプラノと吹奏楽のために〜 - YouTube”. www.youtube.com. 河邊一彦. 2021年2月9日閲覧。
- ^ 三宅由佳莉「希望」(comp:清水大輔) Official Music Video
- ^ (日本語) 三宅由佳莉「愛のキセキ」(comp:清水大輔) Official Music Video, https://www.youtube.com/watch?v=RKnElFIJRjM 2022年1月4日閲覧。
- ^ (日本語) 海上自衛隊 東京音楽隊, 植田哲生, 三宅由佳莉(海上自衛隊東京音楽隊所属), 岡本知高 - 祈り~a prayer 2023, https://www.youtube.com/watch?v=2XjdMkvL7J0 2023年9月20日閲覧。
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
三宅由佳莉に関連するカテゴリがあります。
公式Webサイト
SNS