ダニエル・ポール・バード(Daniel Paul Bard, 1985年6月25日 - )は、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン出身のプロ野球選手(投手)。右投右打。MLBのコロラド・ロッキーズ所属。
経歴
プロ入り前
5歳で野球を始め、少年時代は遊撃手を守っていた。高校では野球をするために転校して新しいチームでは投手として好記録を残し、打者としても3割を打ち5本塁打。翌年には4割を打って10本塁打を打った。2003年のMLBドラフト20巡目(全体604位)でニューヨーク・ヤンキースから指名を受けたが、学業に励みたいという自身の意思から、地元ノースカロライナ州のノースカロライナ大学チャペルヒル校に進学。2004年のベースボール・アメリカでアメリカの最も優れた新人であると評された。このシーズン16試合に登板し8勝4敗・防御率3.88を記録した。新人の8勝はノースカロライナ大学チャペルヒル校の新記録であった。
2005年は7勝5敗、防御率4.22、2006年も9勝4敗・防御率3.64を記録し、チームメイトのアンドリュー・ミラーと共にドラフト候補に挙がった。
プロ入りとレッドソックス時代
2006年のMLBドラフト1巡目(全体28位)でボストン・レッドソックスから指名され、プロ入り。
2007年は傘下のA級グリーンビル・ドライブとA+級ランカスター・ジェットホークスで先発投手として75イニングを投げ、防御率7.05・78四球の成績を残した。この成績から中継ぎに移された。シーズン終了後レベル的にAAA級のハワイ・ウィンターリーグで16試合に投げて防御率1.08と好投し、制球問題に関しても大幅に改善した。
2008年はA級グリーンビルとAA級ポートランド・シードッグスで中継ぎとして投げ、77イニングを投げ、防御率1.51・107奪三振の成績を残し、近年はジョン・レスターやクレイ・バックホルツが選出されていたマイナーリーグのピッチャー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
2009年はAAA級ポータケット・レッドソックスでシーズンをスタートし、16イニングで打者58人に対し29奪三振。6安打され、うち2本が本塁打であった。5月10日にハビアー・ロペスのマイナー降格に伴ってメジャー昇格し、13日のロサンゼルス・エンゼルス戦でメジャーデビューを果たした。5月20日のトロント・ブルージェイズ戦でフェンウェイ・パークで初登板したが、3安打を打たれ失点した。6月12日のフィラデルフィア・フィリーズ戦で延長13回に登板しメジャー初セーブを記録した。8月26日のシカゴ・ホワイトソックス戦でデビッド・オルティーズのサヨナラ本塁打でメジャー初勝利を記録した。
2010年はジョナサン・パペルボンに繋ぐセットアップマンとして定着し、73試合の登板で防御率は1.93だった。32ホールドはリーグ最多だった。
2011年は5月27日から7月31日にかけて、25登板連続無失点の球団新記録を樹立。しかし、9月以降に0勝4敗・防御率10.64と不振に陥り、レッドソックスは歴史的失速によってプレーオフ進出を逃した[2]。
2012年は自ら志願して先発に転向したが、深刻な制球難に陥り、6月5日には3シーズンぶりにマイナー降格の屈辱を味わった。降格後はリリーフに戻ったが、乱れた制球は改善されず、AAA級ポータケットで防御率7点台と苦しんだ。8月30日に再昇格したが、最後まで調子を取り戻すことはなかった。
2013年9月1日にDFAとなった[3]。
レッドソックス退団後
2013年9月4日にウェイバー公示を経てシカゴ・カブスへ移籍したが、12月2日にFAとなった。
2014年1月31日にテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結び[4]、2月3日に球団が発表した[5]。この年は傘下のA級ヒッコリー・クロウダッズで4試合に登板したが、防御率175.50と大炎上した。
2015年1月18日にカブスとマイナー契約を結ぶが、登板なしに終わった。オフに自由契約となった。
2016年1月14日にピッツバーグ・パイレーツとマイナー契約を結ぶが、5月13日に自由契約となった。その後、6月22日にセントルイス・カージナルスとマイナー契約を結んだ。
2017年もカージナルス傘下に在籍し、開幕からAA級スプリングフィールド・カージナルスでプレーしていたが、5月15日に自由契約となった[3]。その後、6月11日にニューヨーク・メッツとマイナー契約を結び、傘下のA+級セントルーシー・メッツへ配属された[6]。
2018年1月4日に現役引退を表明した。
引退後
2018年2月1日にアリゾナ・ダイヤモンドバックスのメンタルトレーニング部門のスタッフに就任した[7]。
現役復帰
2020年2月21日にコロラド・ロッキーズとマイナー契約を結び、現役復帰した。7月17日にメジャー契約を結んで40人枠入りした[8]。7月25日のレンジャーズ戦、1点をリードした5回途中から先発のジョン・グレイの後を受けて2番手で登板した。これがレッドソックスに在籍していた2013年4月27日のヒューストン・アストロズ戦以来、7年、2646日ぶりのメジャーのマウンドとなった。最速99mph(約159km/h)の速球を軸に、2安打を許したものの、1回1/3を無失点に封じてチームはそのまま勝利して白星を挙げた。メジャーでの勝利となると、2012年5月29日のデトロイト・タイガース戦まで遡ることになり、2979日ぶりの白星だった[9]。
2023年はシーズン開幕前の2月10日に第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のアメリカ合衆国代表に選出された[10]。
投球スタイル
6' 4"(約193cm)の長身を活かしたサイドスローから投げ込む速球を武器とし、毎年投球回数に迫るほどの奪三振を残す。球種は、平均97mph(約156.1km/h)を超えるフォーシームのほかスライダーやカーブ、たまにチェンジアップを組み合わせて投げる。最速は、2009年に計測した102mph(約164.2km/h)。
家族
5歳年下の弟のルーク・バードもプロ野球選手(投手)である[11]。2012年のMLBドラフト1巡目追補(全体42位)でミネソタ・ツインズから指名されてプロ入り後、2018年にエンゼルスでメジャーデビューを果たしている。
また、従兄弟にも同じくプロ野球選手(外野手)のジョン・アンドレオリがいる。
詳細情報
年度別投手成績
年
度 |
球
団 |
登
板 |
先
発 |
完
投 |
完
封 |
無 四 球 |
勝
利 |
敗
戦 |
セ 丨 ブ |
ホ 丨 ル ド |
勝
率 |
打
者 |
投 球 回 |
被 安 打 |
被 本 塁 打 |
与 四 球 |
敬
遠 |
与 死 球 |
奪 三 振 |
暴
投 |
ボ 丨 ク |
失
点 |
自 責 点 |
防 御 率 |
W H I P
|
2009
|
BOS
|
49 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
2 |
1 |
13 |
.500 |
212 |
49.1 |
41 |
5 |
22 |
3 |
3 |
63 |
1 |
1 |
24 |
20 |
3.65 |
1.28
|
2010
|
73 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
3 |
32 |
.333 |
295 |
74.2 |
45 |
6 |
30 |
3 |
2 |
76 |
2 |
0 |
18 |
16 |
1.93 |
1.00
|
2011
|
70 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
9 |
1 |
34 |
.182 |
288 |
73.0 |
46 |
5 |
24 |
3 |
2 |
74 |
2 |
1 |
29 |
27 |
3.33 |
0.96
|
2012
|
17 |
10 |
0 |
0 |
0 |
5 |
6 |
0 |
0 |
.455 |
277 |
59.1 |
60 |
1 |
43 |
1 |
8 |
38 |
1 |
2 |
42 |
41 |
6.22 |
1.74
|
2013
|
2 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
---- |
6 |
1.0 |
1 |
0 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
1 |
1 |
9.00 |
3.00
|
2020
|
COL
|
23 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
2 |
6 |
2 |
.667 |
106 |
24.2 |
22 |
2 |
10 |
2 |
3 |
27 |
1 |
0 |
10 |
10 |
3.65 |
1.30
|
2021
|
67 |
0 |
0 |
0 |
0 |
7 |
8 |
20 |
4 |
.467 |
304 |
65.2 |
69 |
8 |
36 |
1 |
7 |
80 |
4 |
0 |
41 |
38 |
5.21 |
1.60
|
2022
|
57 |
0 |
0 |
0 |
0 |
6 |
4 |
34 |
0 |
.600 |
245 |
60.1 |
35 |
3 |
25 |
1 |
3 |
69 |
3 |
0 |
15 |
12 |
1.79 |
0.99
|
2023
|
50 |
0 |
0 |
0 |
0 |
4 |
2 |
1 |
6 |
.667 |
232 |
49.1 |
35 |
5 |
49 |
3 |
8 |
47 |
2 |
1 |
30 |
25 |
4.56 |
1.70
|
MLB:9年
|
408 |
10 |
0 |
0 |
0 |
31 |
35 |
66 |
91 |
.470 |
1965 |
457.1 |
354 |
43 |
241 |
17 |
36 |
475 |
16 |
5 |
210 |
190 |
3.74 |
1.30
|
- 2023年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
WBCでの投手成績
年
度 |
代
表 |
登
板 |
先
発 |
勝
利 |
敗
戦 |
セ | ブ |
打
者 |
投 球 回 |
被 安 打 |
被 本 塁 打 |
与 四 球 |
敬
遠 |
奪 三 振 |
暴
投 |
ボ | ク |
失
点 |
自 責 点 |
防 御 率
|
2023[12]
|
アメリカ合衆国
|
3 |
0 |
0 |
0 |
0 |
15 |
1.2 |
5 |
0 |
4 |
0 |
2 |
3 |
0 |
8 |
8 |
43.20
|
年度別守備成績
年 度 |
球 団 |
投手(P)
|
試
合 |
刺
殺 |
補
殺 |
失
策 |
併
殺 |
守 備 率
|
2009
|
BOS
|
49 |
4 |
2 |
2 |
1 |
.750
|
2010
|
73 |
7 |
7 |
2 |
1 |
.875
|
2011
|
70 |
11 |
5 |
1 |
0 |
.941
|
2012
|
17 |
4 |
8 |
0 |
3 |
1.000
|
2013
|
2 |
0 |
1 |
0 |
0 |
1.000
|
2020
|
COL
|
23 |
1 |
0 |
1 |
0 |
.500
|
2021
|
67 |
1 |
2 |
1 |
0 |
.750
|
2022
|
57 |
2 |
6 |
0 |
0 |
1.000
|
2023
|
50 |
3 |
1 |
1 |
0 |
.800
|
MLB
|
408 |
33 |
32 |
8 |
5 |
.890
|
表彰
背番号
- 60(2009年)
- 51(2010年 - 2013年)
- 52(2020年 - )
代表歴
脚注
- ^ “Daniel Bard Contract Details, Salaries, & Earnings” (English). Spotrac. 2022年12月16日閲覧。
- ^ Boston Red Sox ugly September shows by the numbers
- ^ a b MLB公式プロフィール参照。2017年6月13日閲覧。
- ^ T.R. Sullivan (January 31, 2014). “Rangers sign Bard to Minor League deal”. MLB.com. February 1, 2014閲覧。
- ^ “Rangers sign RHP Daniel Bard to minor league contract with invitation to major league spring training”. MLB.com Rangers Press Release (February 3, 2014). February 4, 2014閲覧。
- ^ Anthony DiComo (2017年6月12日). “Mets ink Bard to Minors pact as 'pen option”. MLB.com. 2017年6月13日閲覧。
- ^ Christopher Smith (2018年2月2日). “Daniel Bard, ex-Boston Red Sox RHP, joins Diamondbacks as player mentor; Jonny Gomes to be rookie ball hitting coach” (英語). masslive.com. 2018年8月17日閲覧。
- ^ Thomas Harding (2020年7月17日). “5 takeaways from Rockies' roster moves” (英語). MLB.com. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “一度はイップスで引退も… ロ軍右腕が2646日ぶりメジャー登板で2979日ぶり白星”. Full-count (2020年7月26日). 2020年7月30日閲覧。
- ^ “USA Baseball Announces 2023 World Baseball Classic Roster” (英語). USA Baseball: Home (February 10, 2023). June 6, 2023閲覧。
- ^ Ken Sugiura (2012年6月5日). “Georgia Tech's Bard selected 42nd overall” (英語). ajc.com. 2018年8月17日閲覧。
- ^ 2023 WBC Player Pitching StatsMLB.com 2023年4月1日閲覧
関連項目
外部リンク
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1960年代 | |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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