桜田門外ノ変『桜田門外ノ変』(さくらだもんがいのへん)は、吉村昭の歴史小説。また、これを原作とした2010年10月16日公開の日本映画。江戸幕府大老・井伊直弼が暗殺された桜田門外の変とその前後の顛末を、襲撃を指揮した水戸藩士・関鉄之介の視点から描いている。 小説『秋田魁新報』(1988年10月11日から1989年8月15日)など地方紙各誌に連載された後、加筆改稿を経て1990年に新潮社から単行本が刊行された。 「桜田門外ノ変」の表記は、当時の資料の一部で用いられていたものである。 概要単行本あとがきによれば、桜田門外の変に関心を持った吉村は、1982年または1983年頃から資料集めを始めていた。執筆に当たって吉村は、まず東京大学史料編纂所の教授も務めた吉田常吉を訪ね、その勧めによって関鉄之介を主人公とした。関が暗殺の現場指揮者で事件の全てに立ち会っており、また多くの日記を残していることから、吉村も関以外に主人公とすべき人物はないと判断したのである。 吉村は単行本あとがきでまた、江戸幕府崩壊の過程と「大東亜戦争」の敗戦の類似を感じるとし、桜田門外の変と二・二六事件とを重ね合わせている。 物語は安政4年(1857年)正月、水戸藩の門閥派の要人結城朝道の手足となって改革派と争っていた谷田部籐七郎が弟とともに捕縛され、水戸領内を護送されるところから始まり、遡って水戸斉昭の藩主就任と藩政改革が描かれる。大老井伊直弼による水戸藩への弾圧、それに対し水戸藩士が井伊暗殺を企て、暗殺を成就するまで、その暗殺の次第が克明に描かれるが、井伊の死までで全体の2/3である。その後は暗殺後の彦根藩と幕閣、水戸藩の対応、井伊暗殺に呼応して薩摩藩が兵を挙げて京都へ上る計画が成らず、暗殺を企てた水戸藩士たちが失意のうちに捕縛、自刃、潜伏逃亡する様が描かれる。物語は文久2年(1862年)5月11日の鉄之介の斬首で終わり、その後のことが簡潔に記されて締めくくられる。
刊行書誌
関連書籍
映画
「水戸藩開藩四百年記念」と銘打ち、茨城県の地域振興と郷土愛を目的に時代劇として実現した「県民創世映画」。監督は佐藤純彌、主演は大沢たかお。企画・製作・撮影においては茨城県内の自治体・企業・市民団体の全面協力体制がとられ、見せ場である桜田門外襲撃シーンのために約2億5000万円の巨大オープンセットも組まれた。撮影地は茨城県内(水戸市、日立市、常総市、高萩市、常陸大宮市、かすみがうら市、行方市、那珂市、つくばみらい市、茨城町、城里町、大子町[2])で行われたほか、滋賀県大津市の日吉大社でも撮影された[3]。 キャッチコピーは、「幕末リアリズム。日本の未来を変えた、史上最大の事件。」 本作では、冒頭から全体の1/3ほどで桜田門外の襲撃が発生し、あとの2/3で襲撃に至るまでの経緯と水戸浪士たちの逃避行を交互に描き、関鉄之介の捕縛と斬首、桜田門を通って江戸城に入る新政府軍の行進で幕を下ろす。変後の水戸浪士たちに焦点をあてて描いているところは同じながら、ほぼ時系列通りに物語が進行する原作とは異なった構成となっている。また、襲撃シーンは史実にほぼ忠実であるとされるが、彦根藩士側の個人名などは特に挙げられておらず、事件後の井伊家の対応も伝聞で語られるのみとなっている。 公式サイトでスペシャル動画『幕末通信 立川談春の3分でわかる『桜田門外ノ変』』が配信された。10月4日以降各局でテレビ特番『公開直前!映画「桜田門外ノ変」徹底解剖スペシャル』が放送された。また『サムライ・シネマキャンペーン』と題し、『十三人の刺客』『雷桜』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』と併せて、2010年公開の時代劇映画5作共同のキャンペーンも行われた。 2010年10月16・17日初日2日間で興収9172万6200円、動員は8万390人になり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第6位となった[4]。また、「ぴあ」初日満足度ランキング(ぴあ映画生活調べ)では第4位になるなど好評価されている。 本編のDVDは2011年4月21日に発売された。 キャスト
スタッフ
主題歌サウンドトラック
オープンロケセット関連書籍
スピンオフ作品本作の製作過程を題材にしたスピンオフ作品『桜田門内の変!?』が2012年6月に公開された。監督・主演は本編にも出演している渡辺裕之。 脚注
外部リンク
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