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生物の分類 (せいぶつのぶんるい)では、生物 を統一的に分類する方法を説明する。分類学 、学名 、Category:分類学 、ウィキスピーシーズ も参照のこと。
概説
知られている生物 の種 にはそれぞれ学名 (属名+種小名または属名+種形容語)がつけられる。学名の前半は属名で、属とはごく類縁関係が近い種をまとめたものである。これらを分類してその分類グループにも学名をつけることが行われている。さらにこの分類を階層的に(小分類 >中分類 >大分類など)体系付けすることで、いろいろな生物グループ同士の類縁関係、ひいては進化の系譜を明らかにしようとする。
分類学は、それぞれの時代において、その当時までに判明した情報に基づいてできるだけ納得の出来るような分類の体系を模索し続けてきた。リンネ の時代には形態を中心に、顕微鏡が使われるようになればそこから得られる情報をも利用し、生化学が発達すれば色素なども利用し、常にできるだけ納得のいく体系が探し求められた。そのため、分類体系は時代と共に変化しつつ、次第に正しい姿に近づいているものと考えられる。20世紀 末には遺伝子 そのものを参照する分子遺伝学 の手法が取り入れられ、多くの分類群において大きな見直しが迫られている。したがって、このような体系は今後も変更を余儀なくされることがままあるはずである。
しかしながら、それぞれの時点において、どれかの体系を採用しなければ文章は作れない。そのため、Wikipediaはそれぞれの群で特定の体系を採用している。したがって、その記述が他の書籍等と異なる場合があること、どちらが正しいかの議論が困難な場合があることを記しておく。
現代的な系統分類について
生物に関する科学的知見が蓄積されるにつれ、生物の分類は何度も修正されたが、特に20世紀末の分子系統解析 の成果により、大きな修正が図られた。本節ではこの分子系統学の成果に基づいた現代的な系統分類について述べる。
ドメイン
[要説明 ]
エオサイト説
生物全体を細菌 の系統とアーキア(古細菌 )の系統に分け、そのうち古細菌から真核生物 が進化したとする説が有力になりつつある(広い意味でのエオサイト説 、2分岐説)[1] [2] [3] [4] 。古細菌の中でもアスガルド古細菌 から進化した事が分子系統解析 から示唆されている。アスガルド古細菌は膜輸送系など後天的な特徴に関しても真核生物と多くの類似性を有する[1] 。
従来の分類との関係
過去に提唱された生物の分類の枠組みと3ドメイン説の関係を簡略化して以下に示す。
[要説明 ]
なお、エオサイト説・2分岐説においても真核生物という分類群が解体されるわけではない。
上の表の「動物界」、「植物界」などに登場する「界 」という語は、生物の分類階級の一つで、かつては最上位の分類階級として位置づけられていた。それに対し3ドメイン説ではまず生物全体を3つのドメインに分け、これらドメインよりも下位の分類階級として「界」を扱う。なお、日本の初等教育では3ドメイン説以前の二界説(2011年まで)ないし五界説(2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している[7] 。
真核生物の大分類群
真核生物ドメイン内の大分類についても、
分子系統解析の成果に基づいた分類体系が提案・発表されている。
下に国際原生生物学会 による分類体系(Adl et al. 2019)の概観を示す[8] 。この分類体系では、入れ子状の分類群が定義され階層をなしているが、分類群に「界」や「門」といった階級 は付与されていない。
真核生物ドメイン内の大きい(系統的)分類群はスーパーグループ などと呼ばれている。詳細は 真核生物#下位分類 を参照。
分類階級
伝統的に生物の分類群には門 (phylum/division )・綱・目・科 といった「階級 」をつけて呼ばれることが多い。
これら伝統的な分類階級は、人が扱いやすくするための人為的なものである側面があることに注意する必要がある。ただし、さまざまな分野で伝統的な分類体系を系統学 の知見を反映させた体系に組替える動きが盛んである。
以下では現時点で生物分類でほぼ一般的に使われている分類体系の枠組みを記述する。
門は、動物学と細菌学ではphylum 、植物学、菌類学ではdivision /divisio と使い分ける。
中間的分類が必要なときの階級名は、その分類単位よりも上位の分類には、巨 (magn- )・上 (super- )・大 (grand- ) を、下位の分類には、亜 (sub- )・下 (infra- )・小 (Parv- ) などの接頭語を各階級の頭につけて生成させる。
subfamily (亜科 )とgenus (属)の間をさらに細分する必要があるときは、tribe (動物では族、植物では連)を使う。
subgenus (亜属 )とspecies (種)の間をさらに細分する必要があるときは、section (節)を使う。
階級別の学名の接尾辞
属より上位の階級の学名には、植物・藻類・菌類については国際藻類・菌類・植物命名規約 、動物・原生動物では国際動物命名規約 、細菌・古細菌では国際原核生物命名規約 で定められた規則的な接尾辞(語尾)が付けられている。
学名の接尾辞(語尾)
分類階級rank
接尾辞 suffix / 語尾 termination
植物 (ICN[注釈 2] )
藻類 (ICN[注釈 3] )
菌類 (ICN[注釈 4] )
動物 (ICZN[15] )
細菌 ・古細菌 (ICNP)
門
Division/Phylum
-phyta
-ota
亜門
Subdivision/Subphylum
-phytina
綱
Class
-opsida
-phyceae
-ia
-ia
亜綱
Subclass
-idae [注釈 5]
-phycidae
-idae
目
Order
-ales
-ales
亜目
Suborder
-ineae
-ineae
上科
Superfamily
-oidea
科
Family
-aceae
-idae
-aceae
亜科
Subfamily
-oideae
-inae
-oideae
族
Tribe
-eae
-ini
-eae
亜族
Subtribe
-inae
-ina
-inae
分類群によっては慣習的に、よく使われる語尾がある。たとえば、動物門の -zoa、綱の -morpha、目の -iformes、-ida、古細菌門の -archaeota などである。しかしこれらはルールではなく、例外が多い。原核生物では門の語尾を-aeotaに統一する提案が出されており、2018年以降に提唱された門はこの語尾を持つことが多い。さらに、2021年に原核生物では門の語尾を-otaに統一することがICSPで決定された[18] 。
一般的分類例
原核生物
細菌(ドメイン:バクテリア)
古細菌(ドメイン:アーキア)
真核生物
原生生物界
植物界
菌界
動物界
分子系統学的分類例
全生物を対象にした系統樹の1例。色は生物分類表に従っている
20世紀後半から勃興した、タンパク質 のアミノ酸 配列や核酸 の塩基配列 決定法の技術、そしてそのデータを用いて系統の類縁関係を推定する解析手法の進展に伴って、従来の生物系統分類法は大きな変革を迫られている。特に、これまで他のグループに所属させることができないために一括りに分類されていた、原生生物や藻類、一部の菌類につき系統が大幅に見直されつつある。学問上は二界説ないし五界説は既に瓦解したと言っても過言ではない。ここではキャヴァリエ=スミス (Thomas Cavalier-Smith) らが中心となって提唱している分子系統学的分類の一例を示す[要出典 ] (ただし現生生物のみ)。従来の界、門、綱との整合性は今後の課題である。この分野は現在さらに進展しつつあるため、今後も大小の変更があり得る。
細菌 (Bacteria) エステル型脂質を持つ原核生物、ムレイン 細胞壁
古細菌 (Archaea) (他生物に対して対掌体の)エーテル型脂質を持つ原核生物。
ユーリ古細菌 (Euryarchaeota) Zリング による細胞分裂
DPANN群 (DPANN group) 未培養系統
プロテオ古細菌 (Proteoarchaeota) / ESCRT 複合体による細胞分裂
TACK群 (TACK gropu)
アスガルド古細菌 (Asgardarchaeota)未培養系統
ロキ古細菌 (Lokiarchaeota)
ヘイムダル古細菌 (Heimdallarchaeota)
トール古細菌 (Thorarchaeota)
オーディン古細菌 (Odinarchaeota)
真核生物本体
真核生物 (Eukaryote) 核膜有り、線状染色体、細胞骨格・原形質流動有り、80Sリボソーム、有糸分裂有り
バイコンタ (Bikonta) 2本鞭毛 を持つ真核生物(退化により持たないものも有り)
植物 (狭義、一次植物)(Plantae, Archaeplastida ) 一次共生により葉緑体 を獲得した真核生物の直系の子孫、板状ミトコンドリア クリステ、葉緑体包膜が2重
盤状クリステ類 (Discicristatae) 盤状ミトコンドリアクリステ、エクスカヴェートに含める意見有り
エクスカヴェート (Excavates) 細胞腹側に深くえぐれた捕食装置を有する真核生物の一群
マラウイモナス (Malawimonas ) 盤状クリステ類の可能性あり
トリコゾア類 (Trichozoa):ディプロモナス類、レトルタモナス類、パラバサリア類
アネロモナス類 (Anaeromonada):オキシモナス類
ストラメノパイル (Stramenopiles) 中空の鞭毛小毛を有する真核生物の一群、アルベオラータ を含めてクロマルヴェオラータ (Chromalveolata) とする意見有り
無殻太陽虫類 (Actinophryida)
オパリナ 類 (Opalozoa)
ラビリンチュラ 類 (Labyrinthista)
ビコソエカ(ビコエカ)類 (Bicosoecales, Bicoecales)
プラシディア類 (Placididea)
デヴェロパエラ (Developayella )
卵菌類 (Oomycetes):ツユカビ類、ミズカビ類
サカゲツボカビ 類 (Hyphochytriomycetes)
不等毛植物 類(黄色植物 類)(Heterokontophyta, Chromophyta):褐藻 類、珪藻 類
アルベオラータ (Alveolata) 細胞膜直下に扁平な小胞を有する真核生物の一群
リザリア (Rhizaria) 分子情報による類縁、アメーバ状生物が多いが全てに共通する形態的特性は無い
所属不明
クリプト植物 (Cryptophyta) 独立の界とする研究例有り
ハプト植物 (Haptophyta) 植物に近縁とする研究例有り
アプソゾア類 (Apusozoa)
有中心粒類 (Centrohelida) バイコンタとアメーボゾアの間に位置するという研究例有り
ユニコンタ (Unikonta ) 1本鞭毛を持つ真核生物(真菌類は退化 して鞭毛を持たない)
アメーボゾア (Amoebozoa) 分子情報による類縁、アメーバ状生物が多い (アメーボゾアとバイコンタを統合してアンテロコンタ (Anterokonta) とする説有り)
葉状仮足類(ロボサ)(Lobosa):アメーバ 類
コノサ (Conosa):変形菌 、タマホコリカビ類 、アカントアメーバ類、エントアメーバ類、ペロビオンタ類
オピストコンタ (Opisthokonta) 鞭毛を後方にして運動する真核生物
菌類 (Fungi):子嚢菌 類、担子菌 類、微胞子虫 類
メソミセトゾア (Mesomycetozoa):イクチオスポラ類
コアノゾア (Choanozoa) 例:襟鞭毛虫 類
後生動物 (Metazoa) 例:海綿動物、刺胞動物、脱皮動物(線形動物、節足動物)、冠輪動物(扁形動物、環形動物、軟体動物)、後口(新口)動物(棘皮動物、半索動物、脊索動物)
歴史
アリストテレスの分類
どのような分類体系が合理的かは、アリストテレス 以来さまざまな工夫がされ、案が出されてきた。彼の『動物誌 』では動物分類は次のようになる。
有血動物
胎生
人類
胎生四足類
鯨類
卵胎生
軟骨魚類
卵生
鳥類
卵生四足類
無足類
不完全卵生
魚類
無血動物
不完全卵生
軟体類
軟殻類
蛆生あるいは自然発生
有節類
無性生殖または自然発生
殻は類
その他
アリストテレスの権威が絶対とされた中世は、この動物分類が支配的であった。
リンネの分類
近代的な分類法の刷新はリンネ から始まった。
リンネは種の学名に二名法(属名と種小名の2語で表す)を採用し、分類を体系づけた。また、属・種の上位分類として、綱・目を設けて、階層的な分類体系とした。
現在の生物分類でもこのルールは変わっていないが、リンネの時代に比べると階層構造はより多段階となっている(後述)。
しかしリンネの分類自体が現在もそのまま生きているわけではない。例えば、リンネはクジラ を魚類 に分類していたがこれは誤りであった。また植物 をおしべ の本数を元に分類したことは有名だが、現在の植物分類ではこの分類手法は捨てられている。
また、リンネの時代には「進化 」の概念がなかったため、リンネの分類はあくまでも形態の類似異同の差異による操作に限られる限界があった。
五界説
五界説は、生物の分類体系のひとつで、生物 全体を五つの界 に分けるものである。特にロバート・ホイッタカー のものが有名。
ドメインの提唱
1937年 、シャットン (E. Chatton ) は、生物全体を原核生物 Prokaryota と真核生物 Eukaryota の2つの empire に分類した。
1990年、ウーズ は、原核生物を細菌 (バクテリア)と古細菌 (アーキア)に分割し、また階級名をドメイン とした。ウーズによれば、生物全体は、細菌、アーキア、真核生物に分かれる。
脚注
注釈
^ 古細菌の界分類については安定していない。ここではユーリ古細菌界とプロテオ古細菌界に2分する方式を採用した
^ 門から亜綱までは第16条第3項[9] 、目及び亜目は第17条第1項[10] 、科は第18条第1項[11] 、亜科は第19条第1項[12] 、連および亜連は第19条第3項[13] に記載されている。また、日本語版の命名法用語集(規約中の用語解説 Glossaryとは異なる)にまとめられている。
^ 植物と同様にICN中に記載。
^ 植物と同様にICN中に記載。
^ ただし-viridaeではない[9]
出典
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^ ここに載せた具体例は下記より引用:藤田敏彦 (2010/4/28). 動物の系統分類と進化 . 新・生命科学シリーズ. 裳華房. ISBN 978-4785358426 p91
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^ ICN 2018 , Article 17.1.
^ ICN 2018 , Article 18.1.
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^ ICZN 2000 , Article 29.2.
^ 原核生物のphylumの名前が変わりました 、独立行政法人製品評価技術基盤機構
参考文献
命名規約
Turland, N. J., Wiersema, J. H., Barrie, F. R., Greuter, W., Hawksworth, D. L., Herendeen, P. S., Knapp, S., Kusber, W.-H., Li, D.-Z., Marhold, K., May, T. W., McNeill, J., Monro, A. M., Prado, J., Price, M. J. & Smith, G. F., ed (2018). International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Shenzhen Code) adopted by the Nineteenth International Botanical Congress Shenzhen, China, July 2017 . Regnum Vegetabile 159. Glashütten: Koeltz Botanical Books. doi :10.12705/Code.2018 . ISBN 978-3-946583-16-5
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関連項目