豪雪地帯(ごうせつちたい)は、冬に大量の積雪がある地域のことで、日本の法制度上は特に豪雪地帯対策特別措置法に基づき指定された地域を指す。雪国ともよばれる。
日本列島の日本海側(北海道・東北地方日本海側〈東北地方太平洋側の青森県南部と岩手県も含む〉、長野県、北陸地方、近畿地方北部、中国地方日本海側)は世界有数の豪雪地帯である(日本海側気候も参照)。人口稠密地帯と豪雪地帯が重なっているのは、世界でも日本の日本海側だけである[1]。
日本の豪雪地帯対策特別措置法は、「積雪が特にはなはだしいため、産業の発展が停滞的で、かつ、住民の生活水準の向上が阻害されている地域」(第1条)のうち、「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣」が「前条に規定する地域について、積雪の度その他の事情を勘案して政令で定める基準に従い、かつ、国土審議会の意見を聴いて、道府県の区域の全部又は一部を豪雪地帯として指定する」(第2条第1項)と定義している。
さらに同法は、「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣」は、豪雪地帯のうち「積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域」について「国土審議会の議決を経て国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が定める基準に従つて、豪雪地帯として指定された道府県の区域の一部を特別豪雪地帯として指定する」(第2条第2項)としている。
これらの指定において、同法では「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣は、豪雪地帯又は特別豪雪地帯の指定をしたときは、これを公示しなければならない」(第2条第3項)としている。
本法により豪雪地帯(および特別豪雪地帯)の指定を受けた地域においては、道府県豪雪地帯対策基本計画が策定、適用され、交通通信、農林業、義務教育、医療などにおいて、積雪期のこれら機能の維持対策が施行される。
「豪雪地帯対策特別措置法」に基づく「豪雪地帯」あるいは「特別豪雪地帯」の地域指定については、それぞれ、同法の下位政令である「豪雪地帯の指定基準に関する政令」に定める基準(以上、豪雪地帯の指定)あるいは同法第2条第2項に基づき国土審議会の議決を受けた「特別豪雪地帯の指定基準」(以上、特別豪雪地帯の指定)に基づいて行われる。
2016年(平成28年)4月1日の時点において、日本の国土の約半分である約19.2万平方キロメートル、自治体数にして24道府県532市町村(198市、274町、60村、全国の約31%)、人口約1901万人(日本の全人口の約15%)が豪雪地帯の指定を受けており、その範囲は北海道・北東北・日本海沿岸部および本州を縦断する山地部に亘る。中国地方西部の島根県においては、山地部のみが豪雪地帯指定を受け日本海沿岸部はその指定地域外となっている[2]。
これら豪雪地帯のうち、特別豪雪地帯指定を受けている地域は、国土の約20%である約7.5万平方キロメートル、自治体数にして201市町村(68市、104町、29村、全国の約12%)、人口約301万人(日本の全人口の約2.4%)となっている[2]。
豪雪地帯・特別豪雪地帯に指定された地域には除雪や交通・通信の確保、地域の振興などのための豪雪地帯対策基本計画が定められ、行財政上の特別の配慮が行われる。
以下は2020年(令和2年)4月1日時点において特別豪雪地帯・豪雪地帯の指定地域である[3]。豪雪地帯が分布している都道府県はほとんど日本海側であり、太平洋に面する都道府県で全域が豪雪地帯に指定されているのは北海道、青森県、岩手県の3道県のみ。
特別豪雪地帯に指定されている地域が存在するのは、北海道・青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県・群馬県・新潟県・長野県・岐阜県・滋賀県となっている。豪雪地帯に指定されている地域が存在するのは上記の道県に加え、栃木県・山梨県・静岡県・京都府・兵庫県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県となっており、茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・三重県・奈良県・大阪府・和歌山県・山口県・四国地方・九州地方・沖縄県には豪雪地帯に指定されている地域が存在しない。
また、政令指定都市では、札幌市・新潟市が全行政区で、仙台市・静岡市・浜松市が一部の区で豪雪地帯に指定されている(特別豪雪地帯に指定されている政令指定都市はない)。
※ 太字は政令指定都市(特に記載のないものは全行政区)。
世界の豪雪地帯としては、カナダのブリティッシュコロンビア州・アラスカ州パンハンドル部からワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州にかけてのロッキー山脈西部、アメリカ合衆国のエリー湖南岸、ロシアのカムチャツカ半島、チリのアンデス山脈、ノルウェーの西海岸、トルコからジョージアにかけての黒海南東岸山岳地帯、イラン西部の高地、天山山脈西部などがあげられる。また、中東では突発的な豪雪になることがあり、イスラエルのエルサレム[4]でも1920年1月9 - 11日には1m以上の積雪記録が残っているほか、ヨルダンのアンマンやシリア北部、イラク北部なども積雪量が多くなる。
北アメリカ大陸の西部ではロッキー山脈から海岸部にかけての地域で雪が多い[5]。また、北米大陸の東部ではラプラドル高原から五大湖にかけての地域が多雪地帯となっている[5]。
カナダ西部には豪雪地帯があり、太平洋気団からもたらされる気流の山越えが豪雪の主たる要因になっている[5]。また、カナダ東部にも豪雪地帯があり、北極から南下してくる寒気と、太平洋の暖流とともに北上してくる湿潤な暖気が豪雪の要因になっている[5]。
ワシントン州のレーニア山、ベーカー山周辺などのカスケード山脈は世界屈指の豪雪地帯である。ベーカー山の1998 - 1999年の年間降雪量は1140インチ(2895.6cm)であり、これは世界一の記録である[6]。またカナダの大西洋側からニューイングランド山地部も豪雪地帯である[7]。
五大湖の南東岸の一帯はスノーベルトと呼ばれる豪雪地帯が広がるが、これはカナダの内陸部から吹く冷たい風が五大湖の上を通る際に大量の水蒸気を含み、湖の南側、特に山岳地帯に大雪を降らせるためである(湖水効果雪と呼ばれる)。山岳地帯で雪を降らせた後は、風下の中西部や東海岸ではそれほどの大雪が降ることはない。東海岸のボストン、ニューヨーク、ワシントンD.C.などにけかけての地域も低気圧(ノーイースター)による50 - 80センチ程度の局地的な大雪となることがあるが、普段は雪はそれほど多くはない。
1717年豪雪 - 1888年の大ブリザード - イギリスにおける1946-1947年の冬 - 2008年の中国雪害
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