1848年7月、ヨークシャーウィットビー近郊のケトルネスにあるアラム採石場で大きな首長竜の化石が発見された。そこはウィットビー泥岩層の A. bifrons アンモナイトゾーンであり、1億8300万~1億8000万年前のトアルシアンの地層と見積もられている[1]。頭骨を保存した完全な骨格、NMING F8785 は5年間マルグレイブ城に保管されノーマンビー侯爵の所有となっていた。1853年、侯爵はアイルランド人の著名な外科医兼解剖学者のフィリップ・クランプトンにこの興味深い発見物を紹介した。同年、クランプトンは化石を英国学術教会の年次会の目玉展示とするためにダブリンに移送した。アイルランド動物学会はその巨大な爬虫類を収めるために特別な建屋を建築した。10年後、その標本は未だに記載論文が書かれておらず、ダブリン王立協会博物館へ移送され、アレキサンダー・カートとウィリアム・ベイリーによってプレシオサウルスの新種として正式に記載された。 彼らはアイルランドの科学者、フィリップ・クランプトンに敬意を表しその種をプレシオサウルス・クランプトニ(Plesiosaurus cramptoni)と名付けた。1874年、イギリスの地質学者ハリー・ゴヴィアー・シーリーは現在ロマレオサウルス科の模式属とされているこの標本に基づき、新属ロマレオサウルスを設立した。2006年にようやく頭骨の補修が行われ、本属の再研究が始められた[2]。
R. propinquus
R. propinquus はホロタイプ WM 852.S として知られる頭骨を保存し関節が繋がって背面をさらしたほぼ完全な骨格に基づく。ヨークシャーのウィットビー泥岩層の A. serpentines アンモナイトゾーンで採集された。年代は1億8000万~1億7700万年前のトアルシアン中期。R. propinquus は1876年にテイトとブレイクによってプレシオサウルスの新種として記載された。ワトソンが1910年にロマレオサウルスの種の一つとして再記載した。2007年にアダム・S・スミスは、ロマレオサウルスの解剖と分類に関する博士論文の中で、本種は Rhomaleosaurus zetlandicus のジュニアシノニムであることが示唆されると指摘した[1]。しかしその後の2008年にスミスはギャレス・J・ダイクと共にやはりこの種は有効であると見なした[2]。
R. thorntoni
R. thorntoni は BMNH R4853 のホロタイプによって知られる。それは頭骨と下顎骨のほとんどを含んだ部分的に完全な、三次元的に保存された骨格である。ノーザンプトンシャーのキングスソープのトアルシアン階から発見された。現在までの所、ヨークシャー以外で発見されたイギリスのトアルシアンのロマレオサウルス類では唯一よく知られたものである。R. thorntoni は1922年にアンドリュースによって記載され、後に1996年にクルックシャンクによって R. zetlandicus と共に R. cramptoni のジュニアシノニムとされた。 アダム・S・スミスとギャレス・J・ダイクは2007年と2008年の論文で本種は独自の種であると主張している[1][2]。
R. zetlandicus
R. zetlandicus は YORYM G503 (写真)というホロタイプで知られる。この標本はほぼ完全な頭骨と肋骨の一部と繋がった脊椎から成る。ヨークシャーのウィットビー泥岩層のアラム頁岩から採取され、年代はトアルシアンである。1854年にフィリップスによって命名され、その頭骨は1992年にテイラーによって詳細に記載された。上記のように1996年にクルックシャンクによって R. thorntoni と共に R. cramptoni のジュニアシノニムとされ、同じく上記のようにアダム・S・スミスとギャレス・J・ダイクが2007年と2008年の論文で本種は独自の種であると主張している[1][2]。
別属とされた種
数年を経て様々な種がロマレオサウルスであるとされてきた。しかしながら、ロマレオサウルス科の分類と解剖学に関するスミスの博士論文(2007年)によると、ロマレオサウルス属において有効な種は R. cramptoni、R. thorntoni、R. zetlandicus の3種のみである[1]。2008年にスミスとダイクは R. propinquus も有効な種であるとした[2]。かつてこの属であるとされた種には R. megacephalus と R. victor がある。スミスとダイクは2007年と2008年にこれらの種はロマレオサウルス属ではないと指摘し、R. megacephalus は Eurycleidus 属(さらに2008年の論文では新属)であるとされ、R. victor は2010年のスミスとヴィンセントの論文では新たに設定された属である Meyerasaurus 属の模式種とされた。2010年のケッチャムとベンソン、2011年のベンソン等、2011年のケッチャムとベンソンによる分岐分析では、R. megacephalus はロマレオサウルスと Eurycleidus を含むクレードの基盤的位置にあり[4][5]、このことから2008年スミスとダイクにより独自の属に属すべきであるとされた。これを受けて2015年スミスにより新属 Atychodracon に移された[6]。
2008年スミスとダイクは最終的な保存作業を終えた R. cramptoni 頭骨を再記載した。ロマレオサウルス科、プリオサウルス類の両方ともが単系統であることが判明し、ロマレオサウルス属内の種間関係も調査された。以下の分岐図は2008年のスミスとダイクの論文に従う(アステリスクが付いている種は後の研究でロマレオサウルスから別の属へ移されたもの)[2]。
^Hilary F. Ketchum; Roger B. J. Benson (2011). “A new pliosaurid (Sauropterygia, Plesiosauria) from the Oxford Clay Formation (Middle Jurassic, Callovian) of England: evidence for a gracile, longirostrine grade of Early-Middle Jurassic pliosaurids”. Special Papers in Palaeontology86: 109–129.