『浮浪雲』(はぐれぐも)は、ジョージ秋山による日本の漫画。
概要
少年漫画が中心だった作者にとって、初めて青年漫画誌に発表した作品である。『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にて、1973年から2017年9月20日発売の同年19号まで長期連載された[1]。同誌において『あぶさん』(水島新司。2014年終了)、『三丁目の夕日』(西岸良平)、『釣りバカ日誌』(やまさき十三/北見けんいち)と並ぶ長寿作品の一つであった。第24回(昭和53年度)小学館漫画賞受賞。1978年と1990年の2回にわたりテレビドラマ化され、1982年には劇場アニメ映画として公開された。2016年1月時点でコミックス累計発行部数は750万部を突破している[2]。
あらすじ
幕末時代の江戸・東海道の宿場町『品川宿』で問屋を営む「夢屋」の主人・雲(くも)は妻・かめ、11歳の長男・新之助(しんのすけ)、8歳の長女・お花(おはな)の4人暮らし。雲は仕事そっちのけでいつも遊んでばかりで、無類の酒好き女好きである。動乱の世ではあるが、ささやかな庶民の家族や人間模様をコミカルかつシリアスに描いている。
また、勝海舟、沖田総司、近藤勇、土方歳三、清水次郎長、森の石松、坂本龍馬、楠本イネなど歴史上実在する人物も多数登場する。
登場人物
- 雲(くも)
- 主人公。元々は武士であったが、現在は品川宿の問屋「夢屋」の頭(かしら・現代で言う代表取締役社長)である。仕事は二の次で、作中では仕事をしている描写はほとんどないが、番頭の欲次郎が病気で寝込んだ際、誰も仕事をする者がいないため、その際には渋々仕事をしている。何を言われても暖簾に腕押しであり、女を見れば老若美醜にお構いなく「おねえちゃん、あちきと遊ばない?」と決め台詞をやることで有名。また、女だけでなく陰間とも関係を持った事があり、それが原因で騒動となり、この時は雲も逃げ回っている。見かけは髷をきちんと結わず、前に結って、女物の着物を身に着けたいわゆる遊び人の風体をしている。
- 風習や物事に一切囚われず飄々としているが、実は柔軟かつ強靭な精神力を持つ。また、老若男女を問わず、非常に人を惹きつける魅力を持ち、有事の際には「雲が一声掛ければ、東海道中の雲助が集まる」と噂されている。また、どのような形で知り合ったのかは不明だが、徳川慶喜に対して、寝転がりながらくだけた口調で話し、慶喜もそれを許すなどの交友関係を持っている。芹沢鴨との交流もあり「一緒に日本を変えないか?」という持ちかけに「あちきは浮浪雲なんでね、日本を変えようなんて気はありませんよ」と笑顔で返し、芹沢を黙らせた。
- 同時に居合い斬りの達人であり、滅多にその力を見せないものの、たまに両刃の仕込み杖を使った剣術を見せることがある。その実力は底が知れず中村半次郎(のちの桐野利秋)や沖田総司等をも負かしている。
- 空に浮かぶ雲のような掴みどころのない人物ではあるが、たまに夢屋へ様子を見にやってくる自分の母親には、強制的に身だしなみを整えさせられたり、その生活態度を厳しく注意されたりしているため、唯一苦手としている。
- かめ
- 雲の妻。美人ではないが、明るい性格で思い遣りがあり、家族や夢屋の雲助達から好かれている。因みにモデルは作者の妻であるとのこと[3]。
- 新之助(しんのすけ)
- 雲の息子。11歳。性格は雲とは正反対で真面目で子供とは思えないほどしっかり者であるが、世の不条理に惑わされ悩みやすい一面もある。父の飄々とした生き様には困惑しつつ苦言を呈する事も多いが、心の底では深く敬愛している。
- お花(おはな)
- 雲の娘。8歳。お転婆だが新之助と同様真面目な性格。父である雲が大好きで、新之助とは異なり、積極的にスキンシップを行っている。
- 雲の母
- 雲の実母で名前は不明。武家の女性らしく身だしなみや生活態度に厳しく、雲が夢屋の頭をしている事を快く思っていない。時折雲の様子を見に夢屋にやってくるが、来るたびに厳しい態度で接してくるため、雲やかめは苦手としているが、新之助とは性格が合うのか、孫として可愛がり、新之助も祖母として慕っている。
- 欲次郎
- 夢屋の番頭。夢屋と雲の一家、雲助達をこよなく愛している。全く仕事をしない雲をアテに出来ず、事実上1人で大所帯の夢屋を切り盛りしている。雲助達に口喧しく説教するも親心を持って接するため「とっつぁん」と呼ばれ親しまれている。
- 渋沢先生
- 博学多才な楽隠居。雲の豊かで奥深い人間性を、親愛を籠めて誰よりも高く評価している一番のシンパであり、かめや新之助らの良き相談相手でもある。だが、その一方で、雲と共に極悪人を表情ひとつ変えずに始末したことがあるなど、その過去には謎が多い。
- 青田先生
- 新之助が通う塾の先生。若く熱血であり、時にうわべだけで物事を判断しがちである。そんな時には渋沢先生に穏やかに窘められたり、雲の行動に真実を気づかされて世の中を理解していく。
書誌情報
テレビドラマ
渡哲也版
1978年4月2日から同年9月10日までテレビ朝日系で放送。製作は石原プロモーション。放送時間は毎週日曜20:00 - 20:54(JST)。主人公である雲を渡哲也が、妻かめを桃井かおりが演じた。ただし2人の娘であるお花は登場しない。
幕末が舞台であるにもかかわらず、アコースティックギターでの弾き語りシーンや、かめがピンク・レディーの「ウォンテッド (指名手配)」を口ずさみながら掃除をするシーン、グラタンを食べたり渡自身が鼻歌で石原裕次郎の「夜霧よ今夜も有難う」を歌ったり、宴会のシーンでは平野雅昭の「演歌チャンチャカチャン」を合唱する等の演出が随所に見られた。このこともあり、毎回オープニング前に「このドラマはフィクションであり、時代考証その他かなり大巾にでたらめです。」とのテロップが流れた。最終回には浮浪雲の義兄役として石原裕次郎が出演した。
それまで日本テレビを主なプラットフォームとして『大都会』シリーズなどのテレビ映画製作を続けていた石原プロが初めてテレビ朝日と提携し、テレビスタジオ収録形式によるドラマ製作に進出した作品であり、本作終了の1年後には同じ時間枠にて、同社の代表作となる『西部警察』がスタートした。
1979年に第16回ギャラクシー賞・選奨を受賞[4]。
キャスト
主題歌
スタッフ
放送リスト
DVD
2012年8月15日、ポニーキャニオンからDVD-BOXが発売された[7]。
ビートたけし版
1990年10月11日から1991年3月28日まで、TBS系[※ 1]で半年間放送。キャッチコピーは『ニューウェーブ時代劇』。主人公である雲をビートたけしが、妻かめを大原麗子がそれぞれ演じる実写ドラマとなり、話題となった。たけしにとっては時代劇初主演であった。神奈川県横浜市青葉区(放送当時は緑区)にある緑山スタジオのオープンセットに、約2億円かけて作られた江戸時代の街並みを再現して撮影が行われた。放送時間は木曜日の22:00 - 22:54。飄々とした独特の存在感をビートたけしが演じた[8]。しかし、話題とは裏腹に視聴率は伸び悩み、たけし自らが出演番組で「ハズレ雲」と自虐的ギャグにしていたほどであった。本放送終了以降、地上波での再放送やソフト化はされず、ある意味秘蔵な作品だったが、CS放送のTBSチャンネルでは再放送された。
キャスト
サブタイトル
- ニューウェーブ時代劇
- お情けちょうだい
- 春画でポン!
- 真心です。ハイ!
- 品川マラソンGO!
- 妻の屈辱
- 人生、種ナシ梅干
- 妻の健康診断
- 極道おんな
- ダンナ様の隠し子
- 男と女・夢の続き
- いゃーな初夢
- 雪の日の約束
- 生きるってこと
- 置去りにされた娘
- 雪の品川宿・二十人斬り!
- 雪やど・犯された女
- 愛されて、捨てられて、私恋愛論
- うまいワイロの渡し方
- 男は心・女は顔?
- 雪に惚れた女
- 春の風景
主題歌
スタッフ
- 原作:ジョージ秋山
- 制作:桂邦彦
- 脚本:宮川一郎、吉本昌弘
- 音楽:ボブ佐久間
- 技術:梅津義文
- カメラ:近江正彦
- 照明:梅田賢二
- 調整:山本豊
- 音声:山田紀夫、柳沢任広
- 音響効果:杉田毅
- 選曲:山内直樹
- 編集:佐藤敦成
- 美術デスク→美術プロデューサー:石本富雄
- 美術制作:島田孝之
- デザイン:竹内誠二
- 装飾:川田進、辻和彦
- 化粧:森崎須磨子
- 衣裳:檜谷芳夫(芳男)
- 床山:水口誠也、坂本静春
- 記録:石田真理、堀恵麻
- 制作補:桐ヶ谷嘉久
- 演出補:橋本孝、井上順次
- 雲の衣裳デザイン:辻村ジュサブロー
- 殺陣:國井正廣
- 協力:高橋レーシング、緑山スタジオシティ、東通、アックス
- プロデューサー:近藤邦勝、三角英一
- 演出:鴨下信一、山泉脩、橋本孝 ほか
- 製作著作:TBS[※ 1]
劇場アニメ
上記の渡哲也主演ドラマ版の好評を受け[9]、1982年に東映動画が制作した劇場用アニメ作品。同年4月24日に公開された。同時上映は『戦国魔神ゴーショーグン』。
声の出演
主題歌
スタッフ
テレビ放送
- 1984年1月5日(木曜)、テレビ朝日系列の20:00 - 21:48(JST)で『新春特別ロードショー』として放送された[11]。
その他
関連文献
- 「あちきの浮浪雲」小沢一郎・選 小沢一郎 /ジョージ秋山 2008/06 小学館
注釈
出典
テレビ朝日系 日曜20時台ドラマ枠(1978年4月 - 1978年9月) |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
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浮浪雲 (テレビ朝日版)
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TBS系 木曜22時台(1990年10月 - 1991年3月) |
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浮浪雲 (TBS版)
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旧所属俳優・歌手 | |
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石原プロ制作 映画・ドラマほか |
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