2012年の日本競馬(2012ねんのにほんけいば)では、2012年(平成24年)の日本競馬界についてまとめる。
2011年の日本競馬 - 2012年の日本競馬 - 2013年の日本競馬
日本中央競馬会(JRA)は、2011年10月17日に年間の重賞日程を[1]、11月21日に競馬番組の概要を発表[2]。
地方競馬で施行されるダートグレード競走は、2011年12月22日に格付けを発表[3]。
2012年は1862年に横浜レースクラブが組織され、10月1日に[4]現在日本国内で行われている競馬の原型となる西洋式近代競馬が横浜外国人居留地で初めて行われてから150周年となる。これを記念して、JRA・地方競馬全国協会ともに以下のような事業や企画を実施。
JRAでは年間を通じ、以下の『近代競馬150周年事業』を展開[5]。
また、10月2日を「近代競馬メモリアルデー」と位置づけ、当日競馬が開催された大井競馬場・門別競馬場・金沢競馬場、および10月5日に開催された園田競馬場の各メイン競走のほか、ホッカイドウ競馬の重賞競走「道営記念」で「近代競馬150周年記念」の副題を付けて施行された[4]ほか、一部の主催者では抽選会などの記念イベントも催された[8]。
上記の他、過去の中央競馬クラシック三冠を達成した牡馬7頭・牝馬3頭をデザインした「近代競馬150周年記念切手」を10月2日に発行[9][10]。
農林水産省は1月に、競馬法改正案を通常国会へ提出することを検討していると報じられ[11]、6月20日の参議院本会議で可決、成立した。
主な改正点は経営不振が相次いでいる地方競馬施行団体等の支援や活性化を目的として『払戻金割合』の規制を緩和し、地方競馬施行運営者が自己裁量によって自由に割合を決定出来ること等を柱とするもので、従来は概ね74 - 75%としていた払戻率が改正後は「70 - 80%を目安とした一定の範囲内」で、競馬主催者が柔軟に設定できるようになった[12]。
日本中央競馬会が運営するインターネット投票システム(IPAT)を利用して地方競馬の馬券を発売することになり、当初予定から1日延期し10月3日より発売を開始した。発売する競馬場は平地競走を行う地方競馬のみで、ばんえい競馬は対象外となった。また、発売する賭式も中央競馬が発売している8種類のみとされ、地方競馬のみで発売している枠番連勝単式(枠単)は発売されない。
当初は10月2日から発売開始だったが阪神競馬が順延されたため、1日延期となった[13]。
またこれにあわせ、対象となる地方競馬(枠単を発売する南関東と金沢は除く)でも発売する賭式の統一化が図られ、中央競馬と同様8種類に統一された[14]。
地方競馬にとっては大きな販路拡大の場となり、一部の主催者では早くも売得金が前年を上回るといった効果が表れている。
3頭が同着となる珍しい決着が、中央競馬と地方競馬でそれぞれ記録された。いずれも複勝式は5通り、ワイドは7通り、3連複・3連単は3通りの組み合わせがそれぞれ的中となっている。
東日本大震災のため前年の開催をすべて中止した福島競馬場では施設の復旧工事が進められ、4月7日から開催を再開[17][18]。福島競馬場での開催分を振り替えた競馬場のうち、小倉競馬場では前年度より開催日数を削減した一方で、新潟競馬場は前年度より増やされた。
関西地区の春季・夏季競馬開催は例年、中京→阪神→小倉の順になっていたが、本年は京都(春季12日間)→阪神(夏季8日間)→中京(8日間)→小倉(12日間)の順に変更した。1開催あたりの日数も法改正が行われ、12日を上限に柔軟に変更することが可能になったため、全国規模で開催日数が大幅に変更され、主要4場(東京・中山・阪神・京都)で日数が前年より増やされた。
北海道シリーズは前年度より1週繰り上げられた。また、札幌競馬場の施設改修工事が開始される[19]ことから北海道開催も9月第1週までで終了する。このため安田記念は夏季競馬開催に組み込まれ、競走条件に一部変更が生じている。
祝日や振替休日の月曜日を含む3日間開催は前年から拡大し、セントライト記念・京都大賞典・阪神カップが月曜日施行となった。これにより有馬記念の後にも競馬開催が行われ、1年の締めくくりとなる重賞競走も阪神カップとなった。
競馬場別の開催実績は以下の通り。
年間総売上は2兆3943億885万6700円(前年比:104.4%)、総入場者数は619万296人(前年比:100.6%)でともに前年を上回った[22]。
6月3日に行われた安田記念で優勝したストロングリターンを管理する調教師の堀宣行(美浦)が、JRA職員の再三にわたる説得にもかかわらず、優勝馬関係者に対するインタビューの出席を拒否[23][24]。
この件についてJRA広報部は遺憾のコメントを発表したほか、JRA理事長の土川健之も本人より事情を聴くことを明らかにした。さらに東京競馬記者クラブは今回の件でJRAに対し要望書を提出することを決議した[25][26]。
JRAは6月15日に、堀に対し『競馬ファンの心情を蔑ろにする遺憾な行為』として厳重注意処分[27][28]。あわせて日本調教師会と日本騎手クラブに対しても取材への協力を要請したと発表。
6月10日に行われた東京競馬第8競走で、内田博幸(美浦)の騎乗馬が決勝線手前で急に外側へ大きく動いたことについて「危険な騎乗に該当する」と判断され開催日2日間の騎乗停止となった件に関して、被害馬を管理する調教師の小島茂之(美浦)が走行妨害を申し立てるも棄却されたため、小島はこれを不服として申立書を提出する意向を2日後の12日に明らかに[29]。
その後、小島が申立書を提出したため6月13日に行われた裁定委員会で審議した結果、「申し立てを棄却した裁決は相当である」として申立を棄却[30]。小島はなおも不服として、日本スポーツ仲裁機構や裁判で争う構えを見せた。
JRAは6月22日、一連の経緯について同馬の馬主が所属する中山馬主協会会長の西川賢ら幹部に対して事情説明を実施。この中でJRA側は裁決基準の不明確さ、審議時間の長さなどについて不手際を認め、今後は調教師や騎手、マスコミに改めて説明することを協会側に伝達。協会側が『裁決基準の公開及び見解の相違がないようにして戴きたい』と要請したことに対しても裁決基準の見直しを含めて新方針を打ち出す用意があると明らかにした[31]。
JRAは競走馬のより円滑な出走のため在籍頭数の適正化を図ることを目的とし、調教師1人あたりの預託可能頭数を変更した[32]。従来は20馬房まで一律に「貸付馬房数×3」、20馬房を超える場合は「超過馬房数×2」となっていたが、2012年10月1日以降は貸付馬房数×2.7(端数切り上げ)、2013年3月1日以降は貸付馬房数×2.5へ変更。背景には下級条件戦などにおける除外ラッシュを軽減させたい思惑や、定年前に廃業する厩舎が続出していることによる厩舎間格差の是正、さらに近年の売上減少傾向による経費削減策の一環といった側面もある。
地方競馬全国協会が公表した平成24年度の地方競馬開催成績によると、全国の売得金(売上)総額は3326億603万4800円(前年度比:100.4%)、1日平均売得金額は2億4119万3600円(前年度比:101.7%)で、ともに前年を上回った。一方、全国の総入場人員は343万6136人(前年度比:92.5%)で前年割れとなった[33]。
平地の地方競馬で行われたダートグレード競走は37競走で、前年と変わらず。
以下は「平成24年度」となる2012年4月 - 2013年3月をさす。
4月14日から2013年3月25日まで26回・153日開催(前年度比:1日減)。例年通り、全日程を帯広競馬場で開催。ナイター開催は5月12日-10月29日まで75日間実施(前年度比:24日増)。
売得金総額は104億7989万2500円(前年度比:101.1%)、総入場人員は25万4081人(前年度比:103.4%)で、ともに前年を上回った。
重賞競走は25競走を施行(前年度比:増減なし)。ばんえい記念の1着賞金を300万円に減額したが、帯広市に寄せられた寄付金の一部を「特別報償金」として充て、優勝賞金は実質前年度と同額を維持した[34]。
4月29日夜に帯広競馬場内の調整ルームで数名の騎手が飲酒していたところ口論となり、2名の騎手が23歳の男性騎手に暴行を加え、あごの骨を骨折させていたことが明らかになった。この件で、道警帯広署はばんえい競馬所属騎手の藤野俊一を5月24日に、6月4日には鈴木恵介をそれぞれ傷害容疑で逮捕[35][36]。
禁止されている調整ルーム内での飲酒を行っていたうえ暴行事件が発生し、その結果前年度の勝利数1位と2位の騎手が逮捕されるという異常な事態となり、ばんえい競馬を主催する帯広市は市長名で遺憾のコメントを発表したほか、5月25日と6月4日には開催執務委員長によるお詫びのコメントを公式サイト上で発表[37][38]。その後、被害者の男性騎手は8月3日付で地方競馬全国協会に騎手免許を返上した[39]。なお、鈴木は2012年度も年間勝利数1位を記録したが、この事件の当事者として逮捕されたことが信用失墜行為として帯広市の規定に抵触したため、表彰は行わなかった[40]。
関係者に対するばんえい競馬および開催執務委員長からの処分が、いずれも6月29日付で発表された。
事件を重く見た帯広市は7月3日に再発防止策をまとめ、7月14日には公式サイトでも発表した。
4月25日から11月15日まで15回・80日間開催(前年度比:増減なし)。本年も全日程門別競馬場でナイター開催。重賞競走(ダートグレード競走を含む)は22競走(前年度比:増減なし)を施行。スタリオンシリーズ競走は46競走を施行。
売得金総額は119億1820万8800円(前年度比:103.9%)で前年を上回ったが、総入場人員は4万9120人(前年度比:98.5%)で前年割れ。
通常開催は4月7日に水沢競馬場で開幕し、2013年1月14日まで開催。冬季休催期間をはさみ、2013年3月23日から3月31日まで水沢競馬場で特別開催を1開催行った。競馬場ごとの開催実績は以下の通り。
2場をあわせた売得金総額は181億4770万8900円(前年度比:124.3%)、総入場人員は29万9908人(前年度比:124.1%)で、ともに前年を上回った。
重賞競走は32競走を施行。JRAの在宅投票システムで勝馬投票券の発売を開始することを踏まえ、古馬の競走では栗駒賞・白嶺賞を特別競走から重賞に昇格させたほか、従来ホッカイドウ競馬との交流競走として隔年で施行していた「知床賞」も重賞に格上げし、毎年施行とした。また、出走手当と騎乗手当が前年度より増額された一方、騎手手当(日当)は廃止された。
競馬場ごとの開催実績は以下の通り。
4場をあわせた売得金総額は2006億3033万8000円(前年度比:100.8%)で前年を上回ったが、総入場人員は129万8717人(前年度比:91.1%)で前年割れ。
重賞競走は埼玉栄冠賞が「埼玉新聞栄冠賞」に名称変更したほか、サンタアニタトロフィーの施行距離が1800mから1600mに戻された。賞金面では船橋競馬場で施行された重賞競走で、かしわ記念を除き賞金が一律に減額された(SIIIの1着賞金が1200万→1000万になるなど[41])。祝日や中央競馬の日程などとの兼ね合いからかしわ記念とジャパンブリーディングファームズカップが2007年以来、日本テレビ盃が2006年以来の平日施行となった。
従来、すべての地方競馬では騎手が必ずいずれかの厩舎に属することが定められていたが、南関東公営競馬では4月1日より、中央競馬の「フリー騎手」に相当する「騎手会所属騎手」制度を導入した。騎手会所属騎手は特定の厩舎に所属せず、同じレースに騎乗依頼が重複した場合でも自分の裁量で騎乗馬を選択できるようになった。
原則として、以下の通り所属する競馬場が所在する都県の騎手会に所属することとなる。
競馬場ごとの開催実績と発売成績は以下のとおり。
HITスタリオンシリーズ競走は、各競馬場ごとにそれぞれ6競走ずつ実施。
本年度は園田競馬場でナイター設備設置工事を行ったため、姫路競馬場でも2年ぶりに開催された。競馬場ごとの開催実績は以下の通り。
2場をあわせた売得金総額は298億1836万7700円(前年度比:94.9%)、総入場人員は48万2021人(前年度比:84.6%)で、ともに前年割れ。
HITスタリオンシリーズ競走に初参加し、6競走を実施。
22回・96日開催(前年度比:増減なし)。
売得金総額は78億7537万1400円(前年度比:94.1%)で前年割れだったが、総入場人員は15万9943人(前年度比:103.6%)で前年を上回った。
売上の不振による累積赤字が深刻化している市営福山競馬は、2010年に有識者からなる検討委員会より「実質単年度黒字の確保が事業継続の要件」とする答申を受けており、2011年度こそ4年ぶりに単年度黒字を計上[42]したものの、累積赤字額はなお18億6900万円となっていた。
主催者の福山市は2012年度の開催を行うと1月20日に発表、7月12日に所属馬のモナクカバキチが通算最多勝記録を更新(55勝)[43]するなど話題を提供したほか、地方競馬IPATの開始に向け賭式の追加も行ったが、それでも売上不振は改善できず、再び単年度赤字に転落することが確実な見込みとなり、福山市幹部が「累積赤字解消の見込みがなく、2013年度の競馬事業を継続することは困難で、関連予算が組めない」旨を広島県福山競馬振興協議会側に伝達[44]。これを受け、福山市長の羽田皓は「経営環境が厳しく、収支均衡の予算を編成できない」として、福山競馬を2013年3月末で廃止すると表明した[45]。
19回・96日開催(前年度比:2日増)。
売得金総額は82億7502万1000円(前年度比:115.8%)で前年を上回ったが、総入場人員は5万5815人(前年度比:97.4%)で前年割れ。
21回・101日開催(前年度比:増減なし)。
売得金総額は105億393万7100円(前年度比:102.3%)で前年を上回ったが、総入場人員は32万5489人(前年度比:97.8%)で前年割れ。
地方競馬(平地・ばんえい)は3月まで2011年度、4月以降は2012年度。
2013年1月8日発表[268][269]。
※いずれもJRA+地方指定交流競走+海外指定競走を加算したもの
2013年1月15日発表[270]。
騎手・調教師のみ記載。 地方競馬からJRAへ移籍した者、引退(または免許返上)後に再取得した者は除く。 地方競馬は年度単位(4月 - 翌年3月)となっているが、免許日を基準に記載する。 記載は氏名(所属地、免許日)の順。
地方競馬(ばんえいを除く)は「地方通算」のものと「中央・地方通算」があるが、それぞれ出典に拠った。 同一人物が複数の記録を達成した場合、最後に記録されたもののみ記載する。 記載は氏名(達成地、達成日)の順。
この年に生まれた競走馬は2015年のクラシック世代となる。